54
せめて最初の山ノ民の村までは同行しよう、と云ってくれたオルジシュカの親切を、エリシュカはきっぱりと退けた。地図をくださっただけで十分です、と彼女は云った。これから先はわたしの旅です。わたしだけの旅なのです。
出立する日の朝のことだった。
あのときのオルジシュカは、エリシュカの髪を丁寧に整えてくれながら、ひどく驚いたような顔をしていた。
王城を出るときに切り落として濃鼠色に染めたエリシュカの髪は、はじめのうちこそ伸びたぶんだけ染め直すようにしていたが、頭全体を布で覆う格好に慣れてからはすっかり放ったらかしにしてしまっていた。
肩を越えるあたりまで伸び、根本が銀色に変わってしまった髪に、女の子があんまりみっともない
濃鼠色に変色した部分を丁寧に切り落とし、多少見栄えがするように整える。オルジシュカは器用な性質なのか、鏡に映る自分の顔が格段に明るくなっていくのを、エリシュカはまるで魔法でも眺めるような気分で見つめ続けていた。
「わたしだけの旅だなんて」
そんな寂しいことを云うもんじゃないよ、とオルジシュカは云った。違うんです、とエリシュカは慌てた。
「そういう意味で云ったんじゃありません。ただ、最近街の衛士たちがずいぶんと物々しい警備をするようになった、とシルヴェリオが云っていましたし」
もしかしたら国境を越えたことが露見してしまったのかもしれません、とエリシュカは云った。
「いまここでわたしと一緒に捕らえられるようなことがあれば、海猫旅団のみなさんまで大変なことになってしまうので」
「そんな危険は、みな承知のうえじゃないか」
そうだとしても、とエリシュカは首を横に振った。以前のわたしなら、オルジシュカの厚意に素直に甘えていたかもしれない。与えられるものは、すべて受け取ることを当然――痛みを拒むことは許されないし、次にいつ与えられるかわからない恵みを拒むことはできない――と思っていた頃のわたしなら。
「わたしはみなさんからすでに多くのものをいただきました。ここから山道へ入るまでの道はさほど複雑でもなく、遠いものでもありません。ここをひとりで歩めないようであれば、神ノ峰を越えることなど、とてもできないでしょう」
オルジシュカはどこか寂しそうに紅い瞳を細めた。四人の子を産みながら、そのすべてを失った彼女は、あるいはエリシュカのことをわが子のように思いはじめていたのかもしれない。いささか過保護にも思える物云いは、旅立つ娘に母が寄せる気遣いに似ていた。
オルジシュカの手が丁寧にエリシュカの髪を梳る。ひさしぶりに陽の光に晒された銀糸の髪は、不恰好に染められていた部分をすべて切り落とされ、美しく輝いていた。
かろうじて耳にかかるほどの長さにまで髪を切られてしまったエリシュカの姿は、その華奢な体躯と相俟ってまるで少年のようである。
「なんだか男の子みたいになっちゃったな」
「人の目も誤魔化せますから、ちょうどいいかもしれませんね」
エリシュカはそう云いながら、整えてもらった頭を灰色の麻布でしっかりと包み、うなじのあたりで縛る。濃い灰色の外套を羽織り、
エリシュカ、とオルジシュカが呼んだ。自分よりも幾分背の低いエリシュカの身体をしっかりと抱き寄せて、彼女はその腕に力をこめた。――気をつけて。
「気をつけて行くんだよ、エリシュカ。つらいことがあっても諦めないで。あたしを忘れないで。みんなを忘れないで」
幸せになっておくれ、とオルジシュカはエリシュカに囁きかける。
エリシュカも腕を延ばしてオルジシュカの身体をしっかりと抱いた。逞しく、あたたかなオルジシュカ。心に深い傷を抱え、己の弱さと狡さに悩み、それでも他者にやさしくあれることを教えてくれた、とてもとても強い人。
ありがとうございます、とエリシュカは云った。心の底からの言葉だった。
そして、心の中だけで強く願った。――どうかあなたもお幸せに。
それからすぐ、エリシュカはテネブラエとともに南国の都を発ち、翌日には山道へと入ることができた。
だが、なんの標もない草原をひたすら進み、やがて現れた森の中の道なき道を歩むというのは、想像以上に不安な旅となった。山ノ民が暮らすという最初の村に辿り着くまでは、身体を休めるために立ち止まっているあいだも、ふとしたことで鼓動が乱れ、呼吸が苦しくなった。それほどの緊張を感じていた、ということだ。
それでも最初に辿り着いた村で、雨露を凌ぐことのできる軒を借り、きちんと火を通したあたたかな食事で腹を満たすことができてからは、その緊張もすっかり解れた。
山ノ民らは余所者を嫌った。しかし、不親切ではなかった。
神ノ峰を越えるつもりだと云えば、役立つ知恵を貸してくれたし、一晩の宿と食事を求めれば応えてくれた。南国の都でできる限りの装備を整えてきたつもりではいたが、やはりいざ旅をはじめてみると足りないものがあったり、反対に余計なものがあったりしたのだが、そうした不都合を解消する手助けもしてくれた。
本格的に山に分け入る前の最後の村を出るときには、だから、これからはじまる厳しい旅への覚悟はすっかり決まっていた。
旅立ちの朝、エリシュカはいくらも歩かないうちに、木々のあいだに消えてしまった村を振り返った。もう二度と通ることもないはずの村々が、なんだかとても懐かしい場所であるような気がした。
テネブラエの鼻面をやさしく撫で、エリシュカは視線を前へと戻す。眼前に聳える神ノ峰は朝陽に照らされ、白く輝いている。これから厳しい旅路がはじまるとはとても思えない光景だわ、と彼女はそんなことを考えた。
鐙に足をかけ、テネブラエの背に跨る。
「行こう、テネブラエ」
小さいながらも張りのある声で愛馬をうながし、いよいよエリシュカは故郷へ向かう旅へと出立したのである。
山道は思ったほどに急なものではなかった。
いずれを行くべきか迷わせるような分かれ道があったり、暗い森の中を岩や大樹の形を道標にして進まねばならないようなところもあったが、おおむねは明るく乾いた林の中を静かに歩んでいけるような場所が多かった。
様子が変わってきたのは、最後の村を出て四、五日が過ぎた頃からである。
両側に断崖が続く尾根を長く進み、ようやく人心地つけるかと思うと、両側に聳え立つ絶壁の狭間を落石に怯えながら通り抜けなければならなかったりと、道は徐々に厳しいものへと変わっていった。
同時に、天候が変わりやすくなった。ひどい雷雨に襲われたかと思うと冷たい風に晒され、反対に幾日も乾いた陽射しに照らされることもあった。まさに神の気まぐれにふさわしい天候の変わりように、半日も同じ場所から動けずにいたこともある。
焦っては駄目、とエリシュカは幾度となく自分に云い聞かせた。わたしにもテネブラエにも身はひとつしかないのだから。
けがをしたり病を得たりすれば、この先ますます厳しくなるであろう道を歩むことはできなくなる。――だから、焦っては駄目。
朝は日の出とともに起き出し、身支度を念入りに整えたあと食事を摂って出立する。途中の休憩では幾度か水分と糖分を補給し、日没の数刻前にはその晩の
一日に歩む距離を決めるのではなく、暮らしを整えることで旅の歩みを調整した。標高が上がるにつれて下がっていく気温に合わせて装備を整え、可能な限り身も清めた。少しずつ心もとなくなっていく食料や水は、そのために半日の労力を割くことになろうともきちんと入手するようにした。
旅はゆっくりとしたものでありながらも、すこぶる順調だった。
薄暗い林を抜けたところで、エリシュカはテネブラエの足を止めさせた。
鞍から降り、地図を広げる。もともと古びていた地図は、幾度も広げられたり畳まれたりしているうちにすっかり手に馴染んでしまった。
「もうじき、東国からの道と合流することになるのね」
地形が変わるところでオルジシュカからもらった地図を確認し、方向を確かめながら進んでいくうちにわかってきたことがある。
東国と西国から神ツ国へと続くそれぞれの道は、山中で交わり、やがて一本になる。このふたつの道は高低差が激しい代わりに距離が短い。南国からの道は、このふたつの道とときどき交差しながらも、高低差の少ない、非常にゆったりとした経路になっているのだ。
山ノ民が日ごろの暮らしに使用していた、負担の少ない道なのだろう。足元の悪い岩場を幾日も幾日も続けて登らなければならないような難所はなく、その代わりに危険な場所を大きく迂回するような道となっているために、踏破するのには長い時間がかかる。
「でも、これからはそうはいかないのね」
いま、エリシュカの前にはところどころに雪渓の残る岩肌が広がっていた。ここから先は、この岩肌を右へ左へとジグザグに歩んで沢まで降り、その後、沢伝いに尾根を目指すことになるようだった。
いよいよ高低差が堪えるようになってきたわね、とエリシュカは身が引き締まるような思いがした。
神ノ峰の厳しさは、厳しい気候もさることながら、この尾根と谷とが入り組んだ地形によるところが大きい。上るべき尾根、降るべき谷、辿るべき沢を誤れば、目的とする場所には辿り着けず、あっというまに氷に巻かれ、死へと突き落とされるのだ。
エリシュカはテネブラエの蹄鉄と自分の足許を確かめ、問題がないことを確認してから、愛馬の手綱を取った。
「ここを降りたら、今日の塒を探しましょう」
エリシュカは一歩一歩足場を確かめるようにしながら、岩肌を伝い下りはじめた。テネブラエもまた黒曜石の瞳を瞬かせ、主に従う。
ふたりきりの旅はとても静かだわ、とエリシュカはかすかに笑った。おまえとの旅はもう長いけれど、本当にふたりきりになるのははじめてね、テネブラエ。
姫さまに従っての旅は、多くの侍女や護衛や案内役が傍にいて、とても賑やかだった。こまねずみのようにこき使われながらではあったけれど、それでもあの旅路は多くの人に守られながらの、とても快適なものだったのだ、といまのエリシュカは思う。
東国王城を飛び出した直後の旅は、旅とは呼べぬ逃避行だった。備えもなく、知恵もなく、ただ恐怖に駆られて追い立てられるばかりだった
シルヴェリオやジーノと出会ってからの旅では、わたしは騙されながらも守られてばかりで、自分ではなにも考えていなかった。次に訪れる街がどんな場所なのか、歩むべき道はどれなのか、知ろうともしなかった。
オルジシュカに助けられたあと、海猫旅団との旅はとても愉快だった。自分からとどまることを求め、役目を望んで、受け入れられた。大勢の人と話して、他愛のないことで笑って、つらいときには泣いてもいいのだと知った。あの愛すべき日常で、わたしは、わたしにもできることがある、ということに気づいたのだ。
「おまえはずっと一緒にいてくれたのにね、テネブラエ」
わたしはこの子にとっていい主だったかしら、とエリシュカは思った。無条件に寄せられる思慕に、いつでも甘えて頼り切って、それでも許してもらえると思っていた。過酷な旅に出るときも、それが当然だと云わんばかりに彼の力をあてにした。
「ごめんね、テネブラエ。でも、おまえを頼るしかできないの」
エリシュカの迷いを感じ取ったかのように、不意にテネブラエが足を止めた。手綱の攣れる感触にエリシュカが愛馬を振り返る。
「どうしたの、テネブラエ?」
山肌の途中で立ち止まるのは危険だ。足場が悪いし、急な突風や驟雨を遮るものもない。
テネブラエは珍しくエリシュカを見ていなかった。どこか遠くを眺めるような彼の眼差しの先を追い、エリシュカはふと妙なものに気がついた。
この険しい岩場を折りきったその先に、なにかが落ちている。
――なにか。
茶と灰の斑は獣だろうか、――否。
人だ。
エリシュカの首筋がぞっと鳥肌だった。
ここを降りきった谷底に、人が倒れている。
「テネブラエ!」
エリシュカは咄嗟にテネブラエを振り返った。青毛が鋭く嘶いたのを合図に、エリシュカは彼の背にひらりと跨った。
大きく息を吸い込み、行くよッ、と鋭い声を上げる。
テネブラエが跳躍した。
足場になりそうな大岩や、しっかりとした岩肌を選び、右に左に馬体を揺らしながら、テネブラエは凄まじい勢いで急な斜面を駆け下りた。手綱を引き締め、両脚で鞍を挟み込み、エリシュカは必死になって青毛の背にしがみついていた。
どうにかこうにか谷底まで降りきったときには、テネブラエだけではなくエリシュカも全身にびっしょりと汗をかき、激しく息を弾ませていた。
谷底には冷たい空気が流れていた。風が徐々に湿り気を帯びてくる。厭な気配だ、とエリシュカは思った。このままだと雪になるかもしれない。
テネブラエは地面に頽れたままの人に向かって歩みを進めた。息を整えながらの歩みとはいえ、エリシュカに手綱を引かれて進むよりはよほど速い。
テネブラエが足を止めるやいなや、エリシュカは鞍から飛び降りて、倒れている人のもとへと駆け寄った。
倒れていたのは男だった。薄汚れた焦茶色の髪が風に煽られている。濃灰色の長套に覆われた身体はピクリとも動かない。
とにかく、生死を確かめなければ、とエリシュカは意を決して男の傍に膝をついた。追われる身である以上、あまり人とかかわりたくはないのだが、もしもこの人が生きていた場合のことを考えると、見捨ててはおけない。
エリシュカは俯せたままの男の身体を揺すった。男の顔を覗き込み、口もとに頬を寄せた。風が強く、呼吸があるかどうかがわからない。長套の襟をかきわけるようにして首筋に手を突っ込み、ひんやりとした首許に触れた。
脈はなかった。
エリシュカは深い息をつく。
――亡くなっているわ。
エリシュカは目を伏せた。道にでも迷ったのだろうか。あるいはどこかから足を滑らせたのだろうか。
葬ってやりたいが、それは難しそうだ。そのための道具も体力も時間もない。
せめて彼の縁になるものはないかとエリシュカはあたりを見回し、そして男の傍に短銃が落ちていることに気づいた。思わずぎょっとして目を見開き、触れることさえ躊躇う。
彼の、ものなのだろうか。
こんなところに銃を持ってくるなんて――。
愚かだわ、とエリシュカは思った。神ノ峰の中に、命を奪うための道具を持って足を踏み入れるなんて。ここは、人のための領域ではないというのに。
エリシュカは立ち上がった。
死を悼むために深く頭を下げ、しかし、それ以上のことはしようとしなかった。
ここは神の領域。彼の命は山へと還り、肉体は大地に還るだろう。――あの、穢れた凶器さえも、いずれは大地の一部となる。
やりきれない思いを抱えたまま、エリシュカはテネブラエのもとに戻った。風が強くなってきている。
「先を急ごうか、テネブラエ」
気落ちした主を慰めるように、賢い青毛は鼻面を押し当ててくる。かすかに濡れた感触を頬に受け、エリシュカは小さく微笑んだ。
「大丈夫よ」
テネブラエの手綱を取り、切り立った絶壁に挟まれた細い道へと目を遣った。あそこを抜けて行かなくちゃならないのね。
傾きかけてきてしまった日を遮る天然の擁壁は、むしろ空へとせり出すように伸びている。洞窟でもあったなら、そこを塒にするのだけど、と彼女はあたりに目を遣りながら慎重に歩みを進めた。
標高が上がったせいなのか、植生も変わってきている。視界を遮る下草が少なくなってきたことはありがたかったが、身を寄せられるような大きな樹木がなくなってしまったことがつらい。
上から眺め下ろしたとき、近くに沢が流れているのが見て取れた。水に困らないことはありがたいが、危険な大型獣も潜んでいる可能性がある。幸いにしてこれまでに出くわしたことはなかったが、このように深い山の中に一頭の獣もいないなどということは考えられない。これからはそうしたことにも気をつけなくては、とエリシュカは思う。
沢へと通じる道は比較的すぐに見つかった。この時期にしては少ないながら、沢の流れと出会ったところでテネブラエに水を飲ませ、自分も喉を潤した。一息ついてからあたりを見回し、ここならば道に迷う心配はないわね、とエリシュカは思った。沢の両側は高い崖になっており、この先へ進もうとすれば緩やかな傾斜の続く沢を登っていくしかないのである。
「ここを登りきると、尾根道に出るのかな……」
エリシュカは腰袋から地図を取り出す。長く続く沢の位置からして、この次に出る尾根が、神ノ峰でもっとも高い山へと続く道だろう。ここから尾根伝いに縦走していけば、いくらもしないうちに東国からの道と西国からの道がぶつかる地点へ出るはずだ。
そこからはもう一本道のはず、とエリシュカは考えた。あと何日かかるかはわからないが、少なくとも冬が本格化する前には故郷へ辿り着けるはずだ。
けれど、今朝の降雪を見てもわかるように、山の冬はもうはじまりかけている。下界ではまだ晩夏を迎えてもいない頃だろうというのに、気の早いことだ。
あまり悠長に構えているゆとりはない、とエリシュカは地図を腰袋へしまった。
ここを出ると水場はないかもしれないし、とエリシュカはひとりごちた。
「居心地のいい塒を探して、少し休んでから先に進みましょう」
冷たく清らかな水を堪能し終えたらしいテネブラエにそう話しかけると、彼はぱたぱたと耳を動かしてみせた。エリシュカは微笑み、彼の手綱を取って歩きはじめた。
岩場の続く沢は、道に迷う不安はないが、決して歩きやすくはない。
エリシュカは塒になりそうな洞窟や大岩の陰を探しながら、ゆっくりと進んでいった。緩やかな上りもずっと続くとなかなかに苦しい。標高が高く空気も薄いためか、エリシュカの息はわずかに弾んでいた。
テネブラエがぶるりと鼻を鳴らす。そろそろ休むか、と尋ねてでもいるかのようだった。
そうね、とエリシュカは答えた。
「今日はここまでにしましょうか」
あまり無理をしないほうがいいだろう、とエリシュカは思った。身体の疲れも溜まっているが、今日は人の骸を見てしまった。きっと心も疲れている。
すぐ傍の洞に目を止めたエリシュカは、どう思う、とばかりにテネブラエの様子を伺った。獣の警戒心は聡く、人のそれよりもずっとあてになるものだ、ということを彼女は知っている。
大丈夫そうだ、とテネブラエは尾を振った。
エリシュカは洞窟とも呼べないほどの深さの洞へと足を踏み入れる。内部は入口よりもわずかに上っており、思ったよりも広かった。おまけに奥のほうが右方へと湾曲していて、雪や風を凌ぐのにも具合がよさそうだった。
ここならテネブラエのこともしっかり休ませてあげられそうだわ、とそう思いながら、外からは見えなくなっている奥を覗き込んだときのことだ。
ひどく荒い呼吸の音が聞こえた。はっはっはっ、と苦しそうに響くそれは、人のものなのか獣のものなのか、咄嗟には判断がつかなかった。
エリシュカは低く喉を鳴らし、身を竦める。
緊張のあまりがちがちと鳴り出しそうな歯の根を食いしばり、薄暗がりの中へと目を凝らした。そっと覗きこんだその先に倒れていたのは、――またしても、人だった。
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