4章 山
4章 山
気分がいいので、小高い山まで出向くことにした。
公園の裏手には、山が続いている。
森の一角のように木々に囲まれている。
小さな子供では迷子になってもおかしくない。
ここに来るのはいつ以来だろう。
幼かった頃は友達とよく遊んだものだ。
ただ、何かを思い出しそうで思い出せない、もどかしい感じがする。
少し感傷的になっているのかもしれない。
ふと記憶の片隅に何かが断片的に蘇る。
「そういえば……」
山頂へと続く階段を見つけた。
ここはそんなに大きな山ではないが、
山頂へ続く階段が公園から伸びており誰でも自由に出入り出来る。
十分ほど階段を昇ると小さな社があり、お参り出来る様になっている。
何を祭っているのかは分からないが久しぶりに見てみたくなった。
階段を昇っていく。
昔の記憶ではもっと近くにあったような気がしたが、歩いてもあるいても辿りつかない。
どうやら子供の時に比べ体力が落ちているのだろう。
やっぱり来なければ良かったかな?
などと思いながら歩いていると社が見えた。
記憶よりも随分小さく感じる。
いや、小さく感じるのは大人になった自分の身体が大きくなったせいだろう。
何が祭ってあるのかはやはり分からないが、
かろうじて石碑のところに「鎮魂」の文字が見られた。
「あれは?……なんだろう」
社の御神体を祭っている場所だろうか、錠前がかかっている扉がある。
古くて朽ちかけているがその役割は十分に果たしているため、ちょっと素手で開けることは出来ないだろう。
そういえば、さっきタイムカプセルから鍵を入手したのを思い出した。
それをねじ込んで鍵を壊すことを思いついた。
早速、鍵をねじ込んでみる。
……ガチャリ。
まさか、だったが鍵が合った。
予想外の展開に汗がにじむ。
いや、鍵本来の使い方としては合っている。
だが、拾った鍵がここの鍵だなんて想像もつくはずがない。
逆かも知れない。
昔、ここで拾った鍵をタイムカプセルに入れたのが、当時の自分たちの誰かが入れた可能性は十分にある。
ギギギ……。
扉が開いてしまった。
子供の頃も入ったことはないはずだ。
強烈な興味にかられた。
御神体とは一体どのようなものなのか。
社といっても畳6畳程度の大きさしかない小さなものだ。
数歩も歩けば端についてしまう。
見るだけと思いつつ奥へと侵入するとそこにはお札が祭られているだけだった。
あまりにも拍子抜けしまう光景にしばし棒立ちになっていたが、思わずお札を手に取ってしまった。
その時、背後から物音がした気がした。
こんなところを見られるのはまずい!
弾かれる様に外に出る。
道などないのに。いや道がないからこそ、山の裏手の道無き道を走ってしまう。
お札をその手に握りしめたまま……。
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