2章 散歩
2章 散歩
良く晴れたいい日だ。
家にいるよりも正解だったようだ。
普段の休日なら家でゴロゴロしているだけで十分だ。
なのに、何故か今日は家にいると気分が沈む。疲労が蓄積しているのだろうか?
あまり外に出なれていないせいか、太陽の光が強烈に目に差し込んでくる。
思わず目がくらみ、足元に目がいく。
何気なく側溝が見えた。
錆びた蓋が側溝の上に置かれ、人が落ちないように配慮されている。
ここの通りは小さい時から何度も通ってきたのでよく知っている。
そう言えばあの蓋の下にタイムカプセルを隠した事を思い出した。
何を入れたかは覚えていないが、あの箱は覚えている。
みんなでいつか取り出そうと誓い合ったが、
いつの間にか疎遠になりタイムカプセルを隠した面々と会うことはなくなってしまった。
今思い出せたことが奇跡に近く、30年以上も前のことを思い出せた自分が少し誇らしかった。
「まさか今でも置いているわけないよな」
おそらく誰かが取り出しているだろうとは思う。
ほんの些細な興味から錆びた側溝の蓋を持ち上げてみる。
「うっ」
意外と重く持ち上がらなかった。
よく子供が持ち上げられたと感心する。
まあ喜んでばかりもいられない。
下手をすれば腰を痛めて病院送りだ。
まさか休み明けに、興味本位で側溝の蓋を持ち上げて病院送りになりましたと
会社に報告する事は出来ないだろう。
さて、どうするか。
「バールを使ってこじ開けてみようか」
さっき見つけたバールをわざわざ、取ってきた。
隙間にバールを差し込んで体重をかけてみる。
意外なほど蓋は動かなかった。
これは普通ではない。
もしかすると何かで固定されているのかもしれない。
しかし、外から見た限りでは何か特別な溶接などはされていないようにみえる。
さらに力を込めてバールを押す。
バキィィィィィィ!!!!!
バールの先が折れてしまった。
……が蓋も外れていた。
「やっぱりないか」
あったのはゴミの山だった。
長年放置されていたのだから当たり前だ。
期待していたわけではないがため息交じりにひとりごとが漏れた。
ん、いやよく見るとゴミの下に何か見える。
泥とゴミが一体化している山をよく見ると箱の形をしている気がする。
あわててゴミの山を蹴り飛ばす。
薄汚れているが、中からはあの日の記憶通りの箱が出てきた。
箱に鍵などはかかっておらず、アルミ缶を利用したものなので
蓋が開くか心配したが杞憂だったようだ。
簡単に蓋が開き中を覗き込む。
ほとんどのものは長年の湿気でダメになりただのゴミとなっていたが、一番底に鈍く光るものがある。
「鍵……」
それは間違いなく鍵だったが全くどこの鍵かは思い出すことができない。
シリンダー錠の鍵のようなものではなく、装飾が施された立派な鍵だった。
もしかすると誰かが拾って綺麗だったのでタイムカプセルに入れたのかもしれない。
なんとなくその鍵をポケットにしまい込み再び歩きだした。
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