第132話 恋人イベントのやり直し・ドキドキお風呂体験

 27日の夜、夏凛が一緒にお風呂に入ろうと俺に提案してきた。


 少しだけ期待した。だって、いよいよ恋人として将来的に避けては通れないあのイベントをするのか! そう思っていたからだ。


 いや、早いとは思うよ? イブの夜に恋人になって、今日でまだ3日目だし、ネットで調べた限りだとそういうのは1~3か月の間に行われるのが理想だって書いてあった。


 期待したとはいっても、脳裏にほんの少しだけよぎった程度だけどね。まぁ、あんまりがっついたら身体が目当てだって思われかねない、俺は夏凛の優しいところとか、意外に不器用なところとか、そう言った内面も含めて好きになったんだ。


 水着ありってのは仕方ないよな、うん。


 ──ガラガラ。


 夏凛が風呂場の扉を開けて入ってくる。その姿を見た俺は絶句した……。


 スク水だとばかり思っていたけど、白ビキニだった。黒髪ロング、少し桃色に色付いた白い肌、大事な部分を隠す白いビキニは夏凛の清楚さを上手く引き立てていた。


「ヤバい……綺麗だ」


 思わず口から零れた。当然夏凛の耳にもそれが聞こえてしまい、彼女は顔を真っ赤にして風呂から出ようとし始めた。


「私から言い出しといてあれですけど、やっぱり恥ずかしすぎます!」


 いや、ファミレスでポッキーゲームする方が恥ずかしい気がするけど、夏凛の中の羞恥心の基準は俺とは違うみたいだ。


 散々ダメだとか言ってきたけど、俺だって適度にイチャイチャしたいんだ。人目を気にする必要のない今だからこそ、絶好の機会ではないだろうか? そう考えた俺は、夏凛の腕を掴んだ。


「夏凛、せっかくビキニ着てくれたんだ。一緒に入ろうよ」


 夏凛は口をあうあうさせた後、静かに頷いた。


「じゃあ、私が背中を流すのでバスチェアに座ってください」


 その言葉の通りにバスチェアに座る。まずはお湯で身体を流し、バスタオルを泡立ててゆっくりゴシゴシと擦り始める。鏡に映る夏凛は真剣な眼差しで俺の背中を洗っていた。


 夏凛を観察していると、やはり一番目を引くのは胸だった。水着で支えられているとはいっても、大きすぎる胸はほんの僅かな動きでも揺れてしまう。


 あの肩紐でよく支えられてると俺は感心する。それに加え、その面積の狭いボトムはショーツよりも露出度の高い形状をしている。そのせいか、夏凛は先程から何度もボトムに指をかけて、ピチッと音を立てながら食い込みを直している。


 そんな鑑賞会も唐突に終わりを迎えた。夏凛が胸を隠すようにして搔き抱いて、抗議の言葉を口にしたからだ。


「あ、あの! そんなに見られると非常にやりづらいといいますか……とにかく洗うのに集中させてください!」


 顔を朱色に染めている。相変わらず、される側は苦手のようだ。


 背中だけ洗ってもらい、前と頭を自分で洗ったところで夏凛と交代した。目の前には夏凛の綺麗な背中があって、思ったより小さいんだなって思った。


 夏凛の背中を丁寧に洗っていくとやはり背中にあるブラの紐が邪魔になってきた。それを察した彼女は、肩口で振りかえって言った。


「兄さん、少しだけ浮かせて洗ってもらえますか?」


「お、おう……わかった」


 どもってしまった。女の子の背中を触る機会なんてそうそう訪れなかったわけで、しかも背中の紐を浮かせてその下に手を差し込まないといけないとか、緊張感がヤバい。


 言われた通りに紐を浮かせてその下へ手を滑り込ませた。すると、ムニュウっと前面にある胸が締め付けられて、後ろからでもわかるほどに横へ溢れてしまった。


 心頭滅却、心頭滅却、心の中で呟きながらなんとか夏凛の背中を洗い終えた。


「じゃあ、次はそっち……ですか?」


「そう、だよな」


 恵さんの話しによると、我が家の浴槽は少しだけ広いのだという。よそ様の浴槽を知らないけど、2人くらいなら難なくは入れる広さだ。


 ──ザバーンッ!


 俺と夏凛が入ったことでお湯が一気に溢れていく。目の前でちょこんとお姉さん座りをする夏凛は小ぢんまりしていて、少し可愛いと思える。


「兄さん、その……男性はいつもそうなっちゃうんですか?」


 夏凛の目線は俺のヘソより少し下に向いていて、まるで新種の生き物を発見したかのような表情で見ている。


 俺は頬を掻きながら答えた。


「そりゃあ、恋人のビキニ姿見たらこうなるだろ。むしろ何の反応も示さない方が男として変というか……」


「そう、なんですね……」


 夏凛は短くそう言ったけど……どこか嬉しそうな顔をしていた。


「私たち、恋人なんですよね?」


「ああ、俺は夏凛が好きだ。夏凛もそうだろ?」


「はい、私はあなたが大好きです。こうやって一緒にお風呂に入ると恥ずかしさでドキドキしちゃうけど、それとは別に、愛おしさでドキドキしています。どちらかというと……そっちのが大きいです」


 夏凛は俺の脚と脚の間に移動し、背中を預けてくる。お団子に纏めた髪と、うなじがとても綺麗で、思わずお腹に腕を回してしまった。

 何も言わずに身を任せてくるので、それが更に愛おしく感じて腕の力を少しだけ強くした。


「ふふ、何故か心地いいです。……んっ」


 肩口に振り返った夏凛と触れ合うだけのキスをして、俺達はお風呂デートを楽しんだ。

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