第91話 準備期間と風邪
修学旅行の準備期間に入り、俺は旅行バッグに荷物を詰めていた。
前日に張り切って突っ込むのも、それはそれでロマンあるけど俺がそれをやると絶対忘れ物をしてしまう。
まずは簡易歯ブラシ、旅のしおり、上下の着替えは2泊3日だし3枚くらいでいいか。あとはトランクスも同じく3枚──あ、トランクス持ってきてなかったわ。
自分の部屋にトランクスを取りに戻り、旅行バッグにトランクスを入れると、背後で物音がした。振り返ると、夏凛が立っていた。
壁に寄り掛かるようにして、こちらに向かって歩いていた。
「兄さん、修学旅行ですか?」
「ああ、今準備してるんだ。てか、夏凛大丈夫か?」
「え? 何がですか?」
「いや、なんかフラフラしてるように見える。ちょっと良いか?」
「に、兄さん!? そんな、いきなり……」
夏凛に近付いて額と額を引っ付けると、明らかに夏凛の方が体温が高かった。
「熱いぞ夏凛、顔も赤いし」
「た、確かに少しキツイかもですが、顔の赤さは違います!」
「何が違うんだよ。ほら、耳まで赤いぞ……じっとしてろよ? よっこらせ!」
夏凛の膝裏に腕を差し込み、持ち上げる。そして身体の傾く夏凛の肩を抱いたら──ほら、お姫様抱っこの出来上がりだ。
「ちょちょちょちょ、兄さん! これはさすがに恥ずかし過ぎるのですが!?」
「良いから良いから」
「そ、それ! お風呂の時の真似ですね!」
「バレたか、あの時の気持ち……少しは思い知れ!」
お姫様抱っこのまま夏凛を部屋に連れていき、ベッドに寝かせる。
毛布から顔をちょこんと出した夏凛が抗議の眼差しを向けてきた。
「むー、兄さんに主導権を握られちゃいました」
「はっはっはー。俺は兄だからな、たまには頼られないと威厳が無くなるんだよ」
「そんなことしなくても、兄さんに頼まれればきちんと言うこと聞きますよ?」
「まぁ、良いじゃないか。じゃあ、そうだな……何でも言うこと聞いてやるから、今日くらいは存分に頼れよな!」
その言葉を聞くと、夏凛はしばし考え込んだ。そして指をパチンと鳴らして、無地のタオルを手渡してきた。
「じゃあ、早速お願い良いですか?」
「ああ、良いけど……これは?」
「もう、決まってるじゃないですか。か・ら・だを拭くんですよ。まだ帰ってきてから着替えてもないですし──それもセットでお願いします」
俺の手は震え始めた。ようやくだ、ようやく夏凛の肢体を忘れかけていたのに、なんで、こんな!
夏凛へ視線を向けると、確かに少し汗ばんでいた。もしかしたら、いたって真面目なのかもしれない。
「じゃあ、お願いしますね。兄さん」
「お、おう」
洗面器とお湯を用意してベッドに上がり、夏凛の背後に座る。まずはブレザーからだ、ボタンを1つずつ外して地面に置く。
白いブラウスとチェックのリボンが姿を現した。
ブラウスのお腹の部分を掴んで上に引き上げると、スカートから裾の部分が綺麗に抜けた。
下から順にボタンを外し始める。お腹から胸、そしてリボンを引き抜いてブラウスを脱がした。
火照った淡いピンク色の肌、きゅっと引き締まる括れ、肩口から見えるほどの乳房を水色のブラが支えていた。
タオルをお湯に浸けてスタンバイ。
「じゃあ、行くぞ?」
コクリと夏凛が頷き、俺は柔肌にタオルを滑らせていく。腕、首、背中、腰、夏凛から見えにくい部分を先に終わらせて後はお腹だけだ。
タオルを前に滑らせてお腹周りを拭いていく。
「兄さん、もうちょっと……上も」
「は? いやいや、これ以上はさすがに──」
「サポートしますから」
そう言って夏凛は俺の手を掴んで上に持っていき、タオルを持ったままブラの内側へと迎えられた。
や、ヤバい! 筋肉が無いからどこまでが胸かわからん!
やがて、柔らかい中に小さく硬い部分に辿り着いた。そこを通過する度に、夏凛は何かを我慢するかのような声をあげていた。
「ん、んんんんっ!! あ、はぁ……兄さん、暖かぁい……はぁはぁ……」
そう言って夏凛はビクビクっと震えたあと、力が抜けたようにグッタリして俺に身体を預けてきた。
ボーッとした表情の夏凛は俺の顔を見た途端、目を見開いてバッと離れた。
「あ、あ、わ、私……また、兄さんにご迷惑を……?」
「え? いや、迷惑……ではないけど、なんかちょっと、いつもと様子が違ったと言うか」
夏凛はシーツで身体を隠しつつ、頭を何度も下げた。
「ご、ごめんなさい! 私、ちょっと夢見心地だったと言いますか、頭がボーッとしてて、つい幻想と思い込んでて……」
夏凛の本能が思いの外強くて俺も驚いたが、別にそこまで謝られる程ではない。むしろ、少しだけ役得だったと思う。
「夏凛、熱があるのは本当みたいだし、身体も拭いたから次は着替えた方がいい。着替えられるか?」
「き、着替えられます! あれは本当にボーッとしてて。~~~~~~ッ!!!」
うっすらと記憶があるみたいで、夏凛は頭を抱えて悶え始める。その隙にパジャマを1階から持ってきて夏凛の傍らに置いた。
「夏凛、キツかったら言えよ? 俺は部屋に戻ってるから」
「はい、本当にありがとうございました」
俺は夏凛の頭をポンポンと撫でて自室に戻った。旅行の準備は明日にするか。そう考えて待機していると、"かりんとう"こと夏凛からメッセージが届いた。
かりんとう:兄さん、身体がダルくて寒くてとても辛いです。着替えは終わったので、私の部屋に来ませんか?
夏凛から部屋へ誘われてしまった。俺も何度か熱を出したとき、"もしかしたらこのまま死ぬんじゃないだろうか?"と思ったことがあった。
でも当時の俺達は互いに不干渉状態だったから、そういった心細さは気合いで何とかしてきた。
今の俺達は手を取り合って生きている、それに何より可愛い妹が呼んでるなら、どんな死地でも駆けつけるのが兄ではないだろうか?
と、言うことで、俺は夏凛の部屋に来た。
パジャマに着替えた夏凛は、先程の妖艶さが嘘のように弱々しくベッドで横になっていた。
「兄さん、私、たまに暴走することがあります。それでも見捨てないでくれて、とても嬉しいです」
「今は気にすんなって、男にとっては役得的な側面もあるしさ」
夏凛の前髪をそっとかき分けて、濡れたタオルを額に乗せる。夏凛は気持ち良さそうに頬を緩めて目を瞑った。
「私……兄さんの妹で……良かった……」
徐々に声が小さくなっていく。もう眠いのだろう。
「俺もお前の兄で良かった」
寝入った夏凛にそう告げて、もう起きないことを確認すると俺は自分の部屋へと帰っていった。
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