第11話 同級生とのただの買い物
校門に行くと少し茶色でセミロングの同級生、城ヶ崎さんが待っていた。
「あ、黒谷遅~い、すっぽかしたかと思ったし」
「下駄箱のところで夏凛に会ってな、少し話し込んでたんだ。さて、買い物だっけ?駅前でいいのか?」
「そそ、ちょっと服買いたくてさ。黒谷の家とは反対方向なのは悪いけど、ね!」
城ヶ崎さんがウインクを送る。俺と違ってコミュ力高いのに何故教室では話し相手がいないのだろう、と疑問に思う。そんな城ヶ崎さんが俺の横を歩いている。すでに腐れ縁で3年も学校生活を共にしている。俺がこんな時に気の利いた話しができないことも知ってるし、無理に話さなくてもいいので気が楽だ。
俺と城ヶ崎さんは駅前のデパートに着き、2階のアパレルショップへ向かう。
「これとかどう?」
城ヶ崎さんが手にしたのは茶色のジャケットにデニムパンツだった。
女子は普通2着持ってきてどっちが良い?って聞きそうなのに、すでに試着して見せてくるからどうしたものかと悩むところだ。
ここは真面目に言うべきか?はっきり言って茶髪に茶色のジャケットはあり得ないし、よく見つけたなと逆に褒めたいレベルだ。
俺はスマホでアバターを作るアプリをやり込んでるからその知識を活かすべきなのかもしれない。
「ちょっと、黒谷。何とか言ってよ!」
「あ、悪い悪い。……その、言いづらいんだけど、これとこれの方が良くないか?」
俺は白のノースリーブにベージュのフレアスカートを持ってきた。
「え?」
「いや、城ヶ崎さんの綺麗な茶髪を映えさせる色は白だと思うんだ。これから暑くなってくるからそれも予てノースリーブって感じ。そして下はベージュのフレアスカートにすることで清楚感が出て良い気がする──ってどうしたの?」
城ヶ崎さんは唖然とした表情で、しかもここなしか頬が紅潮してる気がする。
「ききき綺麗って!?そんなっ!…………うん、これにする」
城ヶ崎さんは借りてきた猫のように大人しくなり、元の制服に着替えて精算を済ませた。
「俺が選んで良かったの?」
「うん、これでいい」
「そっか、他に行きたいところある?」
「夕飯まだでしょ?ワック奢らせて?」
「え?それじゃあ城ヶ崎さんが払ってばっかじゃん!う~ん、じゃあ間を取って俺が6割払うよ」
「えぇ~!それじゃあ買い物に付き合ってもらったお礼にならないじゃん!」
「良いから良いから!相手が城ヶ崎さんってのもあれだけど、女子と買い物する練習にもなったしさ。俺にとっても勉強になったんだよ」
「アタシだからって、何よそれぇ~!ま、そこまで言うんなら仕方ないわね。黒谷の提案に乗ってあげる」
城ヶ崎さんには席の確保をお願いして注文を取る。俺がフィッシュバーガーセットで城ヶ崎さんは剣士バーガーと言うパティが2倍のセットを頼んだ。
席に着いてお互いにハンバーガーにかぶり付く。
「ん~、これ名前から想像つかなかったけど、味が濃いいわね!うぅ、あとで太るかも……」
「城ヶ崎さん、そんなに気にしなくて良いと思うけど」
「あ、言ったわね!この体型維持するのかなり地獄なんだから!今食べた分は帰って腹筋ローラーよっ!」
そこで俺は夏凛の肢体を思い出す。
「夏凛もそんなに努力してるのかなぁ?隣の部屋だけど筋トレしてるような音とか聞こえないし、だけどあの綺麗なSラインとくびれはやっぱ努力してんだろうな~」
「……」
「ん?城ヶ崎さん、どうかした?」
「……なんで黒谷が妹ちゃんの身体の隅々まで知ってるのよ!」
しまった!完全に失念していた!マズイな、普通の兄は"見た揉んだ"とかありえないだろうし。
「い、いや。もう梅雨明けただろ?薄着だし、なんとなくわかるじゃん!」
ジトーっとした視線を向けられながら俺はコーラをガラガラと音を立てながら飲む。
「あ、やば!もう20時だっ!アンタも食べ終わったし、帰ろ?」
「ん?ああ、そうだな。送ろうか?」
「駅に乗ってすぐのところだから、別にいいよ!」
ワックを出て、駅で城ヶ崎さんを見送ったあと帰宅の途についた。電柱の灯りがスポットライトのように照す中、俺は何か忘れてるような気がした。
そして家の鍵を開けた時、夏凛が玄関で体操座りをして寝ていたのだった。
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