後の領主、初心者冒険者の育成を請け負う
ラネットさんはコットンさんに受付嬢の仕事の指導をしている。
「なんで仕事の仕方がわからなかったらわからないで、先輩たちに聞かなかったのよ?」
「だって私にとって先輩はラネットさんだけですし」
そこまで言われると悪い気がしないラネットさん。
後輩に懐かれていると怒る気力も失せてしまう。
「それに私が他の先輩に聞いたらラネット先輩の指導がちゃんと出来てないと思われたら嫌ですし」
ふーっとため息をつくラネットさん。
ミスを連発される方が指導者としての資質を疑われてしまうのに。
ラネットはコットンの思考に頭を抱える。
諭すように説明をした。
「あのね、そんな意地とかプライドみたいなのは仕事の邪魔にしかならないから捨てなさいよ。前にも教えたでしょ」
「確かにそうですけど」
「まあいいわ。一から受付嬢の仕事を教え直すわ」
「先輩、ありがとうございます!」
この好意が少しでも仕事の方に向いてくれればとラネットはため息をついた。
*
俺がコロシアムから戻ると、ラネットさんがコットンさんに指導を行っていた。
本当の基礎の基礎からの再指導なのでかなり大変そう。
ラネットさんは俺たちが戻って来たのを見つけると手招きし会議室へと
「なにかわかった?」
「5連続未帰還が原因でした」
「やっぱりね……。あの子と話していてなんとなくそんな気がしたのよ」
「どうします?」
「そうね……未帰還のレッテルが貼られた以上、そう簡単には評判が
「大凱旋てなんですか?」
聞いたことのない言葉が出て来たのでメイミーはすぐさま質問をする。
わからないことをすぐに確認するのはメイミーのいいところ。
少しでもわからないことを無くして俺の役に立ちたいという意思が見える。
俺がメイミーを好きなポイントの一つでもある。
「大凱旋とは難易度の高いBランク以上の依頼を連続で成功させることね」
「大変なんです?」
「Bランク依頼ともなると難易度が急激に上がって成功率が大幅に下がるから大変なのよ」
Bランク辺りから同じランクの冒険者でも実力差が大きくなる。
Bランク依頼の敵をソロで余裕で倒せるほどの実力を持つほぼAランクと言っても差し支えのない実力を持つBランク冒険者がいる。
一方Bランクではあるものの単にランクが上がっただけでBランクの依頼の敵に6人パーティーで挑んでも全滅する実力しかない者もいる。
それぐらいの実力差が出てくるのだ。
同じBランクだからと言って実力を見ずに依頼票を発行をしてしまうと大変なことになる一例だ。
「確実に依頼達成をしたいのなら、Aランクの冒険者に5回連続で依頼達成をしてもらうのが手っ取り早いけど、今のコットンに手を貸してくれるAランク冒険者は誰もいないわね」
そもそも、サテラの冒険者ギルドには数えるほどしかAランク冒険者はいないし、担当受付嬢も決まっている。
メイミーはラネットさんの意図を汲み取った。
「それって……私たちがAランク冒険者となって依頼達成しなさいってこと?」
「そうだわ。それしかないと思う」
俺もメイミーの案に全面的に賛成だ。
ラネットさんはこうも言った。
「あとコットンの発行した依頼票がなんで失敗したのかも調べないとね」
「それもありますね」
「私はしばらく調べ物をしたいので、その間コットンの面倒を見ておいて欲しいのよ」
「ごめん。俺は事務仕事はわからないです」
帳簿とか付けたことがないのに事務仕事とか無理。
ましてや受付嬢の仕事なんて出来るわけもない。
それを聞いたラネットさんはクスリと笑う。
「誰もラーゼルさんに女装させて受付嬢なんてやらさせはしないわよ」
「じょ、女装って? 俺、そんな趣味ないし!」
「ご、ごじゅしんさまの受付嬢姿を見てみたいです。興味があります、凄く、じゅるり」
「ちょっ!」
メイミー、なにを言い出すんだよ!
やめれ!
女装して受付嬢なんてした日には新たな二つ名が付いてしまう。
「ふふふ、逆よ。コットンに冒険者をやらせるの」
そういう事か。
それなら協力できそうだ。
「コットンに不足してるのは冒険者としての経験なのよ。冒険者としての経験が多少でもあればランク不相応の依頼を発行することも無くなると思うの」
「わかりました。『初心者育成請負人』のラーゼルにお任せを」
「ごしゅじんさまの二つ名、かっこいいです! すばらしいです!」
相変わらず俺をもち上げまくるメイミー。
かわいい。
ラネットさんはというと、完全にスルーしてコットンさんの育成期間を決めた。
「そうね……5日でFランクからDランクまで上げてね。それぐらい余裕よね?」
「5日?」
えっ?
マジ?
5日で2ランクも冒険者ランクを上げるのってキツくないですか?
しれっと無茶な期限を設定してくるラネットさんであった。
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