後の領主、嫁がとんでもないことをやらかしているのを知らず
翌朝、俺が起きてリビングで朝食を摂っているいるとモニカと一緒にベランさんが戻ってきていた。
深々と俺たちに頭を下げて礼をする。
「無事に娘が元気になりました」
「それは良かったですね」
「本当にありがとうございます」
満面の笑みのベランさん。
この笑顔を見ていると俺たちの苦労も報われる。
「このご恩はラーゼル様の元で一生掛けても返していくつもりです!」
それは俺の仲間になるという事と取っていいんだよな?
ベテラン冒険者を仲間に出来るならこれほど心強いものはない。
でもアレンさんは渋い顔をする。
「仲間になってくれるのは心強いが、その前に借金を完済して身綺麗になって貰わないとな。仲間になるのはそれからだ」
確かにそうなんだが。
2000万ゴルダ超えの借金をすぐに返せるとは思えない。
仲間になるのは数年先か。
でも俺としては魔の森の開拓で是非とも活躍して欲しい。
しかたない。
「借金は俺が肩代わりします」
「でもラーゼル君はそんな大金を持ってないだろ?」
「なんとかしますよ」
「ラーゼル様……一生ついていきます」
こうしてベランさんが仲間となった。
*
その頃、モニカはとんでもないことを始めていた。
ビアンカが泣き顔でモニカを必死に止めている。
「モーちゃん、こんな危ないことは止めようよう」
「いや、止めない!」
「絶対これ、危ないから! やっちゃいけない事だから!」
「大丈夫だ、この周りには頑丈な柵を作った。誰も来ないから安心していい」
モニカはマンイーターのダンジョンの入り口にいた。
今までとは違い、辺りの木は切り倒されそれで頑丈な柵代わりの木が積み上げられていた。
その高さ10メトル。
普通の人なら乗り越える気も起きないだろう。
万一入り込んだら、無理やり入ってきたそいつが悪い。
「よし、餌をやるぞ」
捕まえて来たばかりの生きのいいモンスターをマンイーターの口の中に放り込む。
オークにトレント、フォレストクローラーなど、そこら辺をうろついていたモンスターを片っ端から捕まえてきたのを構わず押し込んだ。
モンスターはマンイーターの好物じゃないらしく、吐き出そうとする。
モンスターたちも逃げようと必死だ。
逃げ出そうとするモンスターを殴りつけてマンイーターの腹の中に投げ込んでいた。
「すごい嫌がってるよ? モンスターなんて食べないよ」
「好き嫌いするんじゃない!」
無理やり口を閉じたモニカ。
マンイーターがじたばたと暴れて地震みたいに辺りが揺れてる。
「ちょっ! なにしてるの? ものすごく嫌がってるよ!」
「じゃあ、大好物の人間のビアンカが餌になるか?」
「え、え? 嘘でしょ? 私を餌にするの? モーちゃん、私たち親友だよね?」
もちろんモニカは親友のビアンカを餌にするつもりなんて全くなくて冗談のつもり。
でもビアンカには冗談とは聞こえなくて目が真剣に見えた。
それぐらいモニカはマンイーターにのめり込んでいる。
「餌はモンスターでお願いします」
「あははは、冗談だ!」
マンイーターはモンスターが嫌いらしくすごい暴れっぷりだ。
「モンスターも食べりゃ経験値たっぷりでおいしいんだから好き嫌いするなよ。おいしい調味料を掛けてやるぞ」
「なにそれ?」
「ベランのおっさんの家にあった薬だ。要らなくなったので貰って来た」
マナゲイン。
長時間MPを徐々に回復する薬だ。
マナエーテルのような強烈なMP回復効果はないけど、これでも十分にMPを回復できる。
モニカがマンイーターの口の中に注ぎ込む。
すぐに効果が現れた。
『ドカドカ!』
『バコン!』
「なんか戦ってるね」
MPを回復したことでスケルトンが沸き、モンスターと戦っているみたいだ。
しばらくすると戦いが終わったらしく静かになった。
口を開けてもモンスターは出てこない。
「倒したみたいだね」
「ようし! 餌やり成功! じゃんじゃん食べさせてスケルトンだけじゃなくドラゴンを召喚できるぐらいのすごいマンイーターに育てるぞ!」
「そんな危険なのに育てちゃダメ!」
モニカはマンイーターを育て始めたのであった。
後に『ゴッドイーター』と呼ばれる歴代の災厄獣と肩を並べるぐらいのとんでもなく強い怪物に育つのを知らずに……。
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