後の領主、ダンジョンの位置を確認する
竜のモニカに乗ってクローブに戻って来た俺たち。
行きと違いダンジョンの位置を知ってるベテラン冒険者のベランさんも一緒だ。
「ドラゴンは速いな。馬車なんて比べ物にならない」
乗っている竜の事を依然探していた卵から
『もっと褒めていいぞ』といった顔で、嬉しいのか竜姿のモニカがニマニマしている。
ルナータも一緒に来るような気もしたが、たぶん気のせい。
気にしない。
時刻は既に夜。
屋敷に着くと明日の打ち合わせを始めた。
広間の机の上に地図を広げベランさんにダンジョンの位置を聞く。
「どこにダンジョンがあるのかわかりますか?」
「いくつもあるので全部を正確に覚えていないけど50は判るな」
50もか……。
思ったよりもダンジョンを知ってるようだ。
さすが一人で魔の森に入り浸っているベテラン冒険者だけはある。
ベランさんは既にレベル上限に到達してしまい、パーティー活動を辞めてソロで冒険者を続けているらしい。
俺も殆どはソロで冒険者をしていたけど、あのまま続けていてもベランさんのような優秀な熟練冒険者になれた気はしない。
あの頃はレベル15でカンストしてたからな。
魔の森なんて一人で入ったら即魔物に狩られて5分も持たなかったろう。
「ダンジョンの中に潜ったことはないけど、この辺りのダンジョンなら全部覚えているぞ。場所はここだな」
ベランさんは地図の上に次々とマーカーを置く。
クローブの町を中心に10を超えるマーカーが置かれた。
どれもこの屋敷から2時間以内に行ける距離だ。
この村の近くにこんなにダンジョンがあったとは。
かなりのダンジョン密集地帯だ。
ベランさんは馬車で来れるクローブを起点にダンジョンを探索していたのでこの辺りに詳しかったが、他の場所にも同じぐらいのダンジョンが有るだろうとのこと。
ギルドで300のダンジョンが有ると聞いていたけど嘘ではないようだ。
魔の森ににダンジョンが多いのには理由があるそうだ。
「ある程度モンスターが増えて魔素の濃度が高まると凝集されて自然とダンジョンが発生するんだ」
ラネットさんのお爺さんである先代の領主が亡くなってから、魔の森にはクローブの住民は誰も入ってなかったらしいからな。
魔物だらけだった魔の森にダンジョンが多いのもなんとなくわかる。
「階層の深い中規模ダンジョンが3つと、階層の浅い小規模ダンジョンが9つだな」
ダンジョンの深さ10層以内のダンジョンが小規模ダンジョン。
それ以上の深さのものが中規模ダンジョン。
それに対してラネットさんが疑問を
「ダンジョンに潜ったことがないあなたが、なぜダンジョンの深さを知っているんですか?」
「潜らなくても入り口を見ればわかる」
ダンジョンの深さに応じてダンジョンの入り口が大きくなる。
確かにそんな話を聞いたことがある。
大規模ダンジョンの探索をするために発展した迷宮都市。
迷宮都市にあるダンジョンの入り口はまるで神殿のように荘厳で巨大だと聞いたことがある。
ちなみに迷宮都市にある大規模ダンジョンは底なしの深さと都市レベルの広さで、めったなことでは最下層に到達できない。
大抵の冒険者は一つ目めか二つ目の階層ボスを倒して帰るのが殆どだ。
本気で潜るのならば月単位いや年単位の攻略時間が必要。
幸いなことにクローブの近くには大規模ダンジョンはない。
すぐいけるダンジョンがこの近くに12もあるというのならば、まずは簡単なダンジョンの攻略からだな。
いきなり中規模ダンジョンの攻略に手を出すのは無謀過ぎる。
「まずは小規模ダンジョンの攻略をするぞ」
それを聞いてモニカはかなり不満なようだ。
「小規模って敵の弱いダンジョンだろ? やりがいが無いな」
「時間が余れば3つは攻略したい」
「ならゆるす」
すごく上から目線だが、満足げな顔がかわいいので許す。
「きみらは1日に3つのダンジョンを攻略出来るのか?」
ベランさんは『普通は小規模ダンジョンでも三日ぐらい掛けるのが普通なんだが』とあきれ顔。
「うちの嫁たちは強いですから、余裕ですよ」
それを聞いてベランさんは完全にあきれていた。
たぶんいけるはず……いけるかな?
いや、やらねばならない!
俺たちに残された期限は1か月。
のんびりダンジョンを攻略している暇はない。
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