後の英雄、仲間の冒険者登録をする
翌朝。
医務室で朝チュンを迎えた俺たち。
ラネットさんとは一つとなれたが、ちゃんとした式を挙げたいとの彼女の要望で婚約に留めることにした。
俺は宿に戻り、ラネットさんは実家のご両親に婚約の事後報告で戻ることになった。
俺もついに嫁さんをもらって家庭を持つんだな。
いつまでも宿屋暮らしというわけにもいかないので賃貸でもいいので家を持たないといけない。
これからは一人じゃないのでいろいろと大変だ。
宿屋に戻ると、女将さんのマーリーさんが嬉しそう。
「今度はちゃんとできたんだね」
「ええ。バッチリですし、結婚することになりました」
「そうかいそうかい。じゃあ今夜はお祝いの料理を出さないとね!」
女将さんも完全に母親モードである。
結婚できそうもない息子の婚約を聞いて大喜びだった。
部屋に戻ると誰かに飛びつかれた。
「おかえりなさい、ごしゅじんさま!」
えええ?
「なんでメイミーが残って居るの?」
「自由にしていいと言われたのですが行くところが無いので……。ごしゅじんさまの元にいたらダメですか?」
ウルウルとした目で見つめられる。
しおらし過ぎる!
そんな目で見つめられたら断れるわけないじゃん!
「全然ダメじゃない。大歓迎さ」
「やったー!」
俺にぶら下がる勢いで抱き着いてきたメイミー。
女の子に好かれるのは嬉しいんだけど、今のメイミーってサビアじゃなく一般市民だよな?
そんな女の子が俺と同居することになった。
でも、これってラネットさんと婚約したのにマズくない?
早くひとり立ち出来るように手を貸してやらないといけない。
*
朝飯を済ましギルドへと向かう。
メイミーのギルドへの再登録がまだとのことなので俺が手伝ってやることになった。
ギルドの中に入ると俺の背後から冒険者が話しかけてきた。
「あら? かわいい子連れてるじゃないの? どうしたの?」
「これは俺の友達で、恋人じゃなくて……えっ?ラネットさん?」
声を掛けてきたのはラネットさん。
ラネットさんのこめかみが引きつった。
「女友達で恋人ですって!」
「違います違います」
メイミーが俺に助け舟を出してくれた。
「元性的サビアとごしゅじんさまです」
「なっ!」
「ち、違うから!」
いや合ってるか。
でもメイミー、それ弁解になってないんですけど!
本人は悪気は全くないんだと思うんだけど、なんで火に油を注ぐ?
「って、メイミーちゃんじゃないの? どうしたの?」
どうやら二人は知り合いだったみたい。
ラネットさんの怒りが少しだけ収まった。
ほんの少しだけどね。
「ごしゅじんさまにサビアから解放してもらった上にレベル上限も上げてもらったので、冒険者の再登録をしに来ました」
満面の笑みでラネットさんに話すメイミー。
ラネットさんも笑顔だ。
ただし、恐ろしく寒気がする笑顔です。
「レベル上限を上げたってことは……まさか?」
「はい、そのまさかです」
エイミーは素晴らしいひと時だったとうっとりとする。
俺はラネットさんに首根っこを捕まれて、ギルドの会議室へ連れていかれた。
机を挟んでラネットさんと反対側に俺とメイミー。
その真ん中には審判の宝珠。
完全に尋問室である。
俺はメイミーとのいきさつを根掘り葉掘り聞かれた。
「私と素晴らしい初めての夜を過ごすために、メイミーちゃんで練習したということなのね」
「はい」
青く光る宝珠。
審判の宝珠が目の前にあるので嘘は言えない。
「サビアから解放されて自由になれたけど、ラーゼルさんと離れたくないから一緒にいるのね」
「はい。ごしゅじんさまは私の救世主です。こんな私を3500万ゴルダで買ってくれました」
「3500万て、あんた……」
ラネットさんは頭を抱えた。
「はー、なんで私こんな人を好きになっちゃったんだろ……」
「めんぼくない」
「メイミーちゃんはこれからどうするつもり?」
「できればこれからもごしゅじんさまと一緒にいたいです」
えっ?
メイミーは俺のことをそんなに好いていてくれていたの?
めちゃくちゃうれしい。
「ラーゼルさんはそれでいいの?」
「ラネットさんが許してくれるなら」
「まあいいわ。メイミーちゃんは身寄りがないし、私のかわいい妹みたいなもんだし。今までサビアだったから行き場もないのもわかる。しょうがないわね、このままでいいわよ」
「いいんですか?」
「仕方ないでしょ」
「ありがとうございます」
「でもこれだけは約束よ。正妻は私ですからね。メイミーちゃんは
メイミーの立場は第二夫人ということで落ち着いた。
理解ある婚約者のお陰でどうにか丸く収まって助かったよ。
そこにやってきたアリエスさん。
とてもうれしそうだ。
「ラネット! ずいぶん探したわよ! 今日は報告があるの!」
「どうしたの? ずいぶんとうれしそうね」
「私、結婚しました」
「えっ? うそ? 誰と?」
「貴族のバルトさんとよ!」
「おめでとう」
ラネットさんはバルトさんをあれほど紹介して欲しがってたのに寝取られても怒らないんだな。
やっぱりバルトさんを寝取ったのが親友だから許せるのかな?
「急に式が決まったから、結婚式に呼べなくてごめんね」
「私の式には来てよね」
「えっ? ラネットも、もしかして結婚するの?」
「うん」
「誰と?」
俺を指さすラネットさん。
それを見たアリエスさんは嫌悪感たっぷり。
「ええ~! なんでこんなのと結婚するのよー?」
ぐほっ!
『こんなの』言うなや。
たしかにへっぽこだったけど。
今はだいぶマシなんだぞ。
「今のラーゼルさんはバルトさんから英雄を継承したから強いのよ」
アリエスさんは悲しそうな顔をしながらお腹をさする。
「英雄を継承? うちの旦那さんからそんな話を聞いてないけど英雄を辞めたのかな?」
これはマズいかも!
勝手に英雄を継承したと名乗っていたら、その英雄のお嫁さんが現れた。
これはヤバい、ヤバすぎる。
いきなり嘘がバレて婚約解消なんてことも!
婚約までこぎつけたラネットさんを失いたくない!
どうする?
どうすればいいんだ、俺!
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