後の英雄、ゴミアイテムに悩まされる

 バルトさんに勧められたままに指輪を嵌める。

 すると今まで素材以外出なかった宝箱から新たなアイテムから出始めた。


 ポーションだ。


 素材アイテムに代わり出始めたポーション。

 ポーションは体力を少しだけ回復する初級ポーションが主なドロップで、売却価格は銀貨5枚のおよそ5000ゴルダ。

 最低価格が金貨以上の素材アイテムと比べるとゴミレベルの価値で金策効率はかなり落ちた。

 たぶん幸運の指輪を嵌めたせいで幸運度のステータスの影響を受けて宝箱の中身が変わり始めたんだと思う。

 ただ、それはいい方向にではなく悪い方向に。

 今まで出ていた素材アイテムの半分以上が銀貨5枚の価値しかないゴミアイテムのポーションに置き換わってしまった。

 金策効率は半減じゃすまない。

 この指輪は絶対に不幸の指輪だ。


「この指輪は嵌めない方がいいんじゃないですか?」

「ふふふ、ラーゼル君。君が目指しているのは金策では無いはずですよ」


 そうだった!

 俺が目指しているのはあくまでもレベル限界の上昇。

 でも、ポーションがレベル限界の上昇と何の関係があるんだろう?

 バルトさんの考えがよくわからない。

 でも、すぐにその理由がわかった。


「レアポーションの『ラックポーション』が出ましたね」


・『ラックポーション』

 使用者のステータスの幸運度(LUK)を上げる。

 効果は永続。


 飲んでみると、LUKが12ほど上がった。

 元のLUK値の3割相当だ。

 ラックポーションを飲み干すだけで大幅に上がるステータスって……。

 低すぎるだろ俺の元ステータス。

 俺のことをポンコツ野郎と呼ぶ冒険者たちの気持ちがわかる。

 でも、幸運度が上がってもなにも変わった気がしないな。


「幸運度はステータスの中で最強のステータスと私は思っています。これではっきりとその指輪の効果が体感できるようになりますよ」


 バルトさんの言う通り、宝箱の中身がさらに変わり始めた。

 今までは銀貨5枚のゴミポーションしか出なかったのが、ラックポーションを5本も飲み干すころにはステータスを上げるポーションが普通に出るようになってきた。

 

 ・『パワーポーション』

  使用者のステータスの攻撃力(STR)を上げる。

  効果は永続。


 ・『バイタルポーション』

  使用者のステータスの耐久力(VIT)を上げる。

  効果は永続。


 ・『インテリジェンスポーション』

  使用者のステータスの魔法力(INT)を上げる。

  効果は永続。


 先ほどの『ラックポーション』と合わせるとすべてのステータスが上がり始める。

 一本飲むと大体10~15のステータスアップ。

 既に元のステータスの倍ほどまで上がってる。

 パワーポーションやバイタルポーションはステータスが上がったことがはっきりと体感できるほどの効果だ。

 体が軽く、まるで子どもの頃に戻ったみたいな疲れ知らずの感覚。

 これが一番最初のラックポーションを飲んでから3時間以内に起こったことだ。

 俺は今急激に強くなりつつある。

 このまま成長すればAランク相当の強さになるのも夢ではない。

 まあ、HPもMPもレベルも低いので強いのは一部のステータスだけで純粋なAランク相当とは言えないが……。

 HP上限、MP上限、レベル上限を上げるポーションが出ないのが惜しい。


「レベル上限を上げるポーションは見たことがありませんが、HPとMPの上限を上げるポーションは存在しますね」


 マジなのか?

 もっと幸運度が上がればまれに宝箱から出るとのことだ。

 これならレベル上限が上がらずともかなり強くなれたんじゃないのか?

 あまりにも思い通りに話が進んで、夢でも見てるんじゃないかと心配になる。


 幸運度がさらに上がるとポーション以外の魔道具が出るようになってきた。

 指輪だ。

 ポーションは飲むとステータスが固定値で上がっていたが、指輪は倍率で上がる。

 指輪を装備すると凄まじい効果が発揮しだす。

 どれも10倍の効果だ。


 ・『体力の指輪』

 ・『敏捷の指輪』

 ・『魔力の指輪』


 湧き上がる力。

 レベル30相当のステータスは確実にある。

 もう、初心者育成係とは言わせない。

 立派な冒険者だ。

 今ならケーブクローラーどころかケイロスたちが3人で束になって襲ってきても勝てるだろう。

 キッチリとお礼を返してやりたいが、彼らはもうこの世に居ないのが惜しまれる。

 俺が自信を取り戻しつつあるのに気が付いたのか、バルトさんがほほ笑む。


「どうですか? 強くなれましたか?」

「ええ、指輪のお陰で見違えました。今までの俺とは全く違いますね」

「そうですか。でも指輪には大きな問題があるんです」


 バルトさんは俺の目を見ながら真顔で警告した。

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