映画「新解釈 三国志」

 映画のネタが出たので調子に乗って2本目も行きます。

 現在公開中、コメディの鬼才、福田雄一監督の最新作です。


「三国志」と言えば、今でこそゲーム『無双シリーズ』の先駆者として日本では大変メジャーなコンテンツですが、それ以前では「なんか漢字ばかりのムサ苦しいオッサン達が暴れ回る中国の時代劇」というイメージで語られる事が多かった物語です。


 これ意外と知らない人も多いのですが、三国志って創作物語じゃなくて基本的に『史実』なんですよね。つまり劇中で語られる劉備や曹操、孫権なんかは実在した人物なのです。

 まぁ、後の世代で描かれた「三国志演義」等で色々脚色された『読み物』になってしまってはいますが、官渡の戦いや赤壁の戦いなどは紛れもなく史実です。


 そんな由緒あるコンテンツに『あの』福田雄一が挑んだ怪作が、この「新解釈 三国志」という訳です。


 物語の主人公は後に蜀の国の皇帝となる劉備玄徳。これを大泉洋が演じます。そして劉備の軍師として戦場で奇跡を起こす天才、諸葛亮孔明をムロツヨシが演じます。


 私は当初「このキャスティング、逆じゃない?」と思ってました。今までのイメージだと人徳に溢れるとされる劉備は『気の良いおじさん』的なものだったし、孔明は『スマートな策略家』というものでした。

 役者さんのイメージから言えば、劉備をムロツヨシ、孔明を大泉洋とした方がしっくりくるんですよね。


 でも違いました。この映画、キャラ設定の根底から違うのです。

 劉備は「酒が入れば大言壮語を語り、圧倒的なカリスマ性を醸し出すが、素面しらふだとモノグサの臆病者」、孔明は「軍師としての仕事は超優秀な妻に丸投げ、お調子者の営業担当」というとんでもない『新解釈』で描かれます。


 赤壁の戦いの風向きのトリックを始め、劇中の孔明の策は全て奥さんの黄夫人(橋本環奈)からの受け売りです。有名な『三顧の礼』なんてのもありません(!)。初見から孔明は劉備に必死に自分を売り込んでいました。でないと『無職の穀潰し』として気性が荒い夫人に折檻されるからですw


 私は、恐らく福田監督は『孔明の妻の黄月英夫人がとても賢妻だった』という史実の記録から、今回の映画のプロットを思いついたのでは無いかな? と予想しております。


 他にも『英雄色を好みすぎて下半身で考える人になっちゃった曹操(小栗旬)』や『ちょっと頭が不自由で他人の言葉にすぐ迎合しちゃう孫権(岡田健史)』とか、まぁとにかく残念な人しか出てきませんw


 私の好きな三国志武将は呉の国の周瑜しゅうゆでして、史実では宴会の中でも我を忘れたりせずに常に冷静沈着な人でした。ゲームとかでも大体そんなイメージで描かれます。

 しかしこの映画の周瑜(賀来賢人)はやたらと大声で暑苦しく、騙されやすいくせにプライドが高くて、すぐに孔明を斬首したがる情緒不安定な人でしたw そのハイテンションっぷりを賀来賢人は演じきっていましたね。彼の存在感は特筆に値しましたw


 お話は劉備達の『桃園の誓い』から始まります。…が、どうやらロケハンで桃の木畑を確保できなかった様で、なぜか桜の花舞いちる『桃園の誓い』となっております。劉備も「桃の木ってなかなか無いもんねぇ」とメタい事を洩らしていましたw


 最初の敵は国家転覆を目論む宗教団体「黄巾党」。少数ながらも手勢を集めた劉備たちが攻め込んだ砦で迎え撃つのは、山田孝之演じる『黄巾の人』…って雑すぎるだろ!w 山田孝之やぞ?! もっといい役当ててやれよw


 とまぁそんな感じで三国志最強、いや現代に至るまで人類最強かも知れない猛将、呂布(城田優)と、暴虐を絵に描いた様な逆臣、董卓(佐藤二郎)の仲を引き裂くべく暗躍する(時代考証的に正しいらしい)絶世の美姫、貂蝉ちょうせん(渡辺直美)の三角関係や、長坂の戦いでの趙雲(岩田剛典)のいらんことしいとか、色々新解釈された史実イベントをなぞりながら舞台は長江、赤壁の戦いへとなだれ込みます。


 曹操軍80万に対し、迎え撃つのは劉備、孫権連合軍3万。この劣勢を覆す策が孔明にはあると言う。果たしてその結末やいかに?!


 てな感じの映画です。最初から最後まで笑いっぱなしでした。はじめ「三国志興味ないからあまり見たくない」と言っていた娘も、横で大笑いしてました。

 最近「真・三國無双」にハマって、色々三国志に詳しくなって来ていた息子は、ゲームと映画とのギャップにやや苦しんでいたようでしたw


 私は私でこの手のバカゲー、バカ映画は大好きですから大変楽しめましたよ。


 万人にオススメ出来るかどうかは微妙かも知れませんが、少なくとも「大笑い」出来る映画なのは私、ちありやが保証いたしますぞ!w

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