変わりゆく世界の傍らで
立川マナ
プロローグ
また夏が来た。
東北大の医学部に入る、と宣言して青森の実家を出、仙台駅近くの医大・医学部専門の予備校に通いだしたのが三年半前。一番前の席で目をギラギラとさせ、ホワイトボードを睨みつけていたのはもはや遠い昔のよう。いつからか気を遣わなくなった髪は綿菓子みたいに膨れ上がり、高校時代、親戚のおばちゃんたちに賢そうだともてはやされた切れ長の目は鋭さを失って、ずらりと並ぶ四十人ほどの浪人生の背中を他人事のように後ろから眺めるだけの節穴に成り下がった。
いつになったら、ここから出られる? そんな漠然とした不安を抱えて、窓から見える世界に思いを馳せていた。
四季が巡り、人々がせわしなく道を行き交い、世界は目まぐるしく変わっていく。その傍らで、自分だけ取り残されているような焦りと孤独に襲われていた。デジャヴかと思うほどに繰り返される日々。出口のない迷路に迷い込んでしまったようだった。そんな夏の夕暮れ、俺は一人の日本兵に出会った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます