第12章 想いを伝える為に編
第67話 初恋の人の命を救う為に
新章開始です。
この章の『初恋の人』はつねちゃんの時もあり石田の時もありますのでご理解ください。
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六月……梅雨の時期が来た。
今日も少し雨が降っている。
俺が勝手に思い悩んでいた寿や山本さんの問題は解決し、本当なら梅雨とは逆に俺の心は晴れやかであってもおかしくはないのだが、未だ俺の心は梅雨空のように曇っている。
その心は日を追う毎にひどくなっている気もする。
何故かと言えば、『前の世界』の通りにいけば、石田はあと二ヶ月で死んでしまうからだ。
それも飛行機事故で突然に……
数年前に俺は一度、偶然、国立病院の近くで会った石田に『夢で見た』という形で『事故』に気を付けてくれと促した事が有る。
でもそれからは石田に会っても普通に接し、『事故』の事は言えずにいた。
あいつは俺が言った事を覚えているのだろうか?
それとも全然気にせずにいるのだろうか?
俺は八月が近づいて来るにつれて落ち着きが無くなっていた。
早く石田に伝えなければ……
何が何でも八月には絶対に飛行機に乗るんじゃないと……
今日こそ俺は昼休みに思い切って石田のいるクラスに行き、ハッキリと『しばらくは飛行機に乗るのは控える様に』と言おうと思っている。
でもそのまま言っても信じてもらえるどころか『変な奴』としか思ってもらえない事も分かっているので、どういう風に石田に伝えればいいのかを思案していた。
頭を抱えてながら机の上に顔をのせている俺の視界には寿と山田がイチャイチャしている様子が入って来る。
本来なら微笑ましい気持ちで眺めるべきなのだろうが、あれだけ俺の事が好きだった寿が違う男子とイチャイチャしている様子を見ると、さすがに俺の心の中は寂しさが過半数を占めている。
あの二人……『前の世界』でもあんな感じだったか?
あれだけイチャイチャしていたら鈍感な俺でも気付くはずなんだが……
でも今はそんな事はどうでもいい事だ。
あの二人はこれからもずっと仲良く幸せでいて欲しい。
それよりも石田だ。
『前の世界』で俺が『初恋の人』と思っていた石田……
それも石田が死んでからそれに気が付いた鈍感な俺……
でも、『この世界』の石田は一度俺に告白をしている。
それも『キス』というオプション付きで……
あの時の光景を思い出す度に俺の身体は熱くなる。
そして少しの恥ずかしさと、『つねちゃん』に対して申し訳ないという大きな反省の気持ちが湧いてくるのだ。
いずれにしても、もう時間が無い。
俺は意を決して昼休みに石田のいる教室に足を運んだ。
しかし、教室を見渡しても石田の姿が見当たらない。
俺が教室中をキョロキョロしていたので不振に思ったのか、三人組の女子達が声をかけてきた。
「あれ? 五十鈴君どうしたの? 誰か探しているの?」
「えっ? ああ、稲田……いや、石田に用事があって来たんだけどさ……」
彼女の名前は『
一年生の時から俺と同じ塾に通っていて二年生の時に同じクラスだった子だ。
可愛らしい顔をしていて身長が低い割には胸が大きい。
性格は天然っぽいところがあるが、とても優しい性格の子で、部活は『女子バスケットボール部』に所属している。
「えっ、浩美? ああ、あの子なら体調が悪いからって早退したわよ」
「えっ!? そうなんだ……」
「あらぁ? 五十鈴君、凄く残念そうね? 泣きそうな顔をしてるわよ。フフフ……」
この含み笑いをしながら俺を茶化している子の名前は『
そして部活は石田と同じ『女子バレーボール部』に所属している。
この川田とは『前の世界』ではよく口喧嘩をしていたが、『この世界』では俺が一方的に言われている。黙っていたら結構美人なのに勿体ない奴だ。
でも、まぁ今の俺は『中身が大人』だから川田の嫌味口が可愛く見えてしまい、あまり腹が立たないのだ。
「まぁ、用事があったから残念と言えば残念だな……」
「へぇ!! それじゃ、今日の帰りに浩美の家に寄ってお見舞いがてらお話でもすれば良いじゃない!!」
そして最後に常に少し強めの口調で話をする『
長身で細身の子で常に三つ編みをしている、少し気の強い子だ。
この子も同じ塾で一年生の時に同じクラスだった。
そして部活は『演劇部』に所属している。
ちなみに俺と高山、石田、そして岸本の四人は小学四年生の時に『演劇部』として一緒に頑張った仲間でもあった。
「そうだな。あまり時間も無いから帰りに石田の家に寄ろうかな……」
「 「 「え―――っ!!??」 」 」
「えっ、何??」
三人はどうも俺がこんな返しをするとは思っていなかったようで凄く驚いていた。
まぁ、俺も自分で言っておいて驚いたんだが……
それくらい俺の心は切羽詰まった状態だという事だ。
驚いた表情から一番先に元に戻った稲田が口を開く。
「それで今、五十鈴君言ってたけど、『あまり時間が無い』っていうのはどういう事なの?」
「えっ!?」
俺はマズい、余計な事をまたしても言ってしまったと少し焦ったが今日は直ぐに言訳が思い付いた。
「いや、アレだよ。今夜は塾がある日だろ? それに部活もあるしさ。だからその間の時間ってあまり時間が無いからさ……って事なんだけど……」
「あっ、そっか~、そう言えばそうだねぇ……?」
ふぅ、稲田が『天然ちゃん』で良かったぜ。と少しホッとした俺であった。
でもそんな矢先、川田がまさかの質問をして来たのだ。
「ところでさぁ、前から聞こうと思ってたんだけど、五十鈴君って浩美の事が好きなの?」
「そうそう、私もそれ聞きたかったんだ!! で、どうなの!?」
岸本までが川田の問いに乗っかかって来た。
何なんだ、この『女子トーク』は!?
まさかこの俺が中学生の『女子トーク』に巻き込まれるなんて……
「なっ、何だよ、いきなり!? こんな時にそんな事を聞くのかい!?」
「『こんな時』ってどんな時なの?」
またしても稲田が余計な質問をしてくる。
俺は咄嗟にこう言った。
「だからこんな時ってのは俺が急いでいるって事で、石田の事が好きか嫌いかで言われると好きって事になるんじゃないかなぁ……でも俺は石田と同じくらいにお前等三人も好きだけど、何か変かな?」
シーン……
えっ? 最後のセリフは俺としてはウケを狙ったセリフだったんだが、ミスってしまったのか? 全員、何故かうつむいているしさ……
そして一番先に顔を上げた川田が少し赤い顔をしながら俺にこう言ってきた。
「アンタ、何を言ってるのよ!? 私達が聞きたいのは、そ、そ、そういう事じゃ無いんだから!!」
「ゴ、ゴメン……女子に簡単に『好き』とか言うもんじゃ無いよな? 申し訳ない……」
「だっ、だから別にそれは良いから!! 五十鈴君、ほんとアンタは少し抜けてるわね!?」
次に顔を上げ、同じく顔を赤くしている岸本に何故か『ディス』られてしまった。
一番最初に笑ってくれると思っていた稲田は顔を赤くしながら最後までうつむいていた。
ほんと稲田の性格がよくつかめない俺であった。
そして全員が少し落ち着いたところで俺はある事を彼女達に質問をしてみる。
「ところでさぁ、今更聞くのもアレなんだけど、何で石田は二年の途中で塾を辞めたんだ? 三人は何か知ってるのかい?」
「 「 「・・・・・・・・・・・・」 」 」
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お読みいただきありがとうございました。
石田の命を救う為に動き出した隆......
でも、なかなか石田と話をする事が出来ずにいた。
そしてとりあえず石田と友人の三人組に『塾を辞めた理由』を聞こうとした隆だが、果たして彼女達は石田が塾を辞めた理由を知っているのか?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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