第50話 初恋の人の後輩姉妹
ピンポーン ピンポーン
「はーい、どちらさま~?」
「あっ、あのぉぉ……隆です。あっ、五十鈴です!!」
「あら、隆君? ちょっと待っててね? 今、開けるから」
俺は『つねちゃん』の実家の住所を聞こうと次の日の午前中に志保姉ちゃんの家に行ったのだが、何か違和感がある。対応が優しいし、少し声のキーも高い様な……
ガチャッ……ギー……
「あら、隆君おはようっていうか久しぶりね?」
「み、美保さん……」
そう、この人は志保姉ちゃんの妹で名前は『
「もう、『美保さん』って他人行儀な呼び方しないでよぉぉ。小学生の頃と同じで『美保姉ちゃん』って呼んでほしいなぁ……」
「あっ、ゴメンなさい……ちょっと慌ててたものだから、つい……」
「フフフ……冗談冗談。別に謝る必要は無いわ。それよりも今日はどうしたの?」
美保さん……いや、美保姉ちゃんは志保姉ちゃんとは『真逆』の性格で、しゃべり方が優しくておっとりとした人だ。
俺は美保姉ちゃんと会うたびにどうして姉妹でこうも違うのか? と思ってしまう。
「いや、今日は志保姉ちゃんに用事があって……」
「あら、残念ねぇ……お姉ちゃん、昨日から友達と旅行に行ってるのよ。私で良かったらお話を聞くけど……私じゃお役に立てないかなぁ……?」
ほんと、美保姉ちゃんはとっても美人で優しい人だ……
いや、志保姉ちゃんも美人なんだけどな……
でも美保姉ちゃんとは話をするだけで『つねちゃん』と同じくらいに癒される……
って、これは絶対に『つねちゃん』には言えないし、志保姉ちゃん何かに言ってしまったら俺はもう終わりだ……
「うーん……どうだろう……今日は志保姉ちゃんにある人の住所を教えてもらおうと思って来たんだけど……美保姉ちゃんも知ってる人なのかなぁ……」
「あらっ、そうなの? ふーん、分かったわ。それならお役に立てるかもしれないわよ。チョットだけ待っててね?」
美保さんは俺にそう言うと家の中に戻っていた。勿論俺の頭の中はクエスチョンである。
そして二、三分後再び美保姉ちゃんが玄関のドアを開けて笑顔で俺にメモみたいなものを手渡そうとしてきた。
「えっ? こ、これは何?」
「これは『常谷香織さん』の実家の住所が書かれているメモ用紙よ。隆君、この人の実家の住所を教えてもらおうと思ってお姉ちゃんに会いに来たんじゃない?」
俺はメチャクチャ驚いた。
「なっ、何で俺がつねちゃ……いや、常谷先生の実家の住所を聞きに来たって分かったの!?」
「フフフ……それはね、うちのお姉ちゃんが『もし私が不在中に隆君が来たら香織先輩の実家の住所が書いてあるこのメモ用紙を渡してあげて』って言われていたからよ」
「えっ!!??」
俺は更にメチャクチャ驚いた。
志保姉ちゃんは俺が『つねちゃん』の実家の住所を聞きに訪ねて来る事を読んでいたのか!? 『あんな性格』だけど頭はキレるよな。さすがは『青葉大学卒業生』だ。でも俺が『つねちゃん』の事が『恋愛対象』として好きっだて事は分かっていないよな……
「私、一度だけ常谷先生にお会いした事があるんだけど、あの人とても綺麗で優しい人よね? 私、凄く憧れちゃったもの……」
「そ…、うなんだ……だから美保姉ちゃんも『幼稚園の先生』になったの?
「うーん、どちらかというと私は『幼稚園の先生』を目指しているお姉ちゃんの姿に憧れてなりたくなったって感じかな? 私、お姉ちゃんの事、大好きだから……」
そうなのかぁ!? と、俺は素直に感心してしまった。
俺にも弟や妹がいるが果たして俺は二人にどう思われているのだろう?
『前の世界』では俺は二人に見下されていたかもしれない。
俺は親父の後を継ぐのを拒み違う会社に就職した。でも弟が大学を卒業後に親父の町工場を継ぎ、そして数年後にはそこそこ大きな会社にしている。
妹は妹で短大を卒業後、『大手会社』に就職し、そこで知り合った先輩と後に結婚した。
そしてその結婚相手は二十数年後には『部長』になったんだからなぁ……
でも俺はどうだ? まぁそこそこ大きな工場に就職はしたが、『高卒』なので出世にも限界がある。
一応、高卒では上から二番目の役職には付いたものの、間に挟まれ毎日が地獄の日々……挙句の果てに部下が大けがをし、その責任を俺が取り部署替え、そして最終的にはリストラへ……
逆にこの状態で家族を養っていたらと思うとゾッとしてしまう。
「隆君? 隆君どうしたの? さっきから黙り込んでしまって……?」
「えっ? あっ、ゴメン美保姉ちゃん……別に何でも無いよ。今日は有難う。助かったよ。志保姉ちゃんにもお礼を言っておいてね?」
「うん、分かったわ。気を付けて行ってらっしゃいね?」
「えっ? あ、有難う……」
俺は美保姉ちゃんに頭を下げ、そして背を向けて帰ろうとしたが再び美保姉ちゃんが声をかけてくる。
「隆君? 隆君は常谷先生の事が『本気』で好きなんでしょ?」
「へっ!?」
俺は何となくだが美保姉ちゃんには本当の気持ちを言っても良い様な気がした。
「う…うん……『本気』で好きなんだ……」
「フフフ……やっぱり……隆君、頑張ってね? 『私達』応援してるから……」
俺は『年甲斐もなく』顔を真っ赤にしながらお礼を言う。
「あ、有難う……」
俺は自宅に帰らず最寄りの駅に向かう。
そして俺は電車に乗り、ドアにもたれながら『つねちゃん』の実家の住所が書かれたメモ用紙をじっと見つめている。
これでやっと『つねちゃん』に会えるぞ……と期待を膨らませる俺であったが
ん? チョット待てよ……
俺は先程の美保姉ちゃんの言葉を思い出した。
「私達……?」
―――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
お陰様で遂に区切りの50話です!!
まだお話は続きますが今後とも宜しくお願い致しますm(__)m
続きが気になってくださった方は是非、フォローしてください。
そして区切りと言う事で☆をいただけると今後の励みになります。
また感想も頂けるととても嬉しいです。
何卒宜しくお願い致しますm(__)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます