第9章 空白の一年編
第46話 初恋の人に会う為に俺は戻って来た
「こらっ、五十鈴君!! あなた何を寝ぼけた事を言ってるの!? ここは一年二組の教室じゃないの!! 寝てないでちゃんと授業を受けなさい!!」
えっ!?
ど、どういう事だ!?
ここが一年二組?
ちゅ、中学生って事か!?
あっほんとだ!! 俺、学ランを着ているぞ……
そういえばあの『先生風の人』っていうか本物の先生なんだが、よく見れば……
そうだ!!
俺が中一の時の担任だった
「五十鈴君? お願いだからそろそろ席に座ってくれないかな?」
「えっ? あっ、すみません……」
「 「 「ハッハッハッハ」 」 」
どうもクラスの奴等にはウケたみたいだな。
でもそれが良かったのかどうかは分からないが、いずれにしても俺の心境は『あの世界』に戻れたかもしれない喜びと、いきなり『中学一年生』の俺にタイムリープしてしまっている焦りが交差している。
「せっ、先生!!」
「今度は何なの五十鈴君!?」
「きょ、今日は何月何日なんですか?」
「はぁ……」
川端先生はため息をつきながらも丁寧に答えてくれる。
「今日は五月二日です。そして明日からはゴールデンウイーク……五十鈴君、もしかしてそれが嬉しくて浮かれているんじゃないの!?」
「 「 「ハッハッハッハ」 」 」
またしてもクラスの奴等にはウケたみたいだが……
クラスの中での俺の位置はどんな感じなんだろうか……?
『前の世界』での俺の中一の頃は他の小学校の奴等も同じ中学で初めて見る顔も多く、なかなか馴染めずにいたっけな……
でも今の俺は『このクラス』の奴等の顔はほとんど知っているし、どんな性格なのかもある程度は分かっている。
だからそんなに不安は無いのだが、一つだけ重大な問題がある。
それは『この世界』での俺の記憶は小六の夏休みの時に高山と石田が家にお見舞いに来てくれたところまででストップしているという事だ。
そう、俺の記憶は石田にキスをされたところまでしか無い……
それに小六の二学期からの授業も受けて無ければ、楽しいはずの運動会や卒業旅行の経験も出来ず、挙句の果てに卒業式も、まして中学の入学式も経験しないまままでの『中一の五月』……
担任の川端先生は『数学』担当の教師だが、さっきから少しは授業を聞いているが何を言っているのかサッパリ分からない。
こ、これはマズイぞ。
このままでは授業について行けず、『前の世界』で行っていた高校にも入学出来ないかもしれない……
あと俺はこの『空白の一年』をどう過ごしていたのか?
高山や他の友達との付き合いはそのままでいけているのか?
寿や石田との関係はどうなっているのか?
そしてこの『空白の一年』の間に俺は『つねちゃん』には会えているのか?
まずそれだけでも早く知りたいところだ……
なんてたって俺は『つねちゃん』の部屋での出来事がキッカケで『タイムリープ』が発生して『前の世界』に戻ってしまったと思っているからな……
しかしどうやって確認をすればいいんだ?
誰かに『俺はこの一年何をしてたんだ?』と聞いてもおそらく『変な奴』としか思ってもらえないだろう……
志保姉ちゃんに聞くべきか?
でもどう志保姉ちゃんに聞けば良いんだ?
あの性格だからまともに俺の相手をしてくれないような気もするしな……
ってことは、やはりアイツしかいないよな。
そう、高山だ。
困った時の高山だ。
アイツなら分かってくれるのではないか。
協力してくれるんじゃないか……
ただ『タイムリープ』の事は控えておいた方が良いよう気がするしなぁ……
うーん……どう説明する!?
俺の五十歳前の脳みそ、何か良い考えを浮かばせてくれっ!!
あっ!!
そうだ!!
この言い方で高山に説明してみようか……
「せっ、先生!!」
「今度は何よ、五十鈴君!?」
「高山健一は何組ですか!?」
「はーっ!? 高山君は隣のクラスの二組じゃないの!! 友達のクラスくらいしっかり覚えておきなさいよ!!」
「 「 「ハッハッハッハ」 」 」
「おい五十鈴? 今日のお前はいつもとは違うけどなかなか良い感じだな!?」
俺の隣の席の清水が小声でそう言ってきた。
っていうか中学から一緒になった清水じゃねぇか!?
ほんと懐かしいなぁ……
冷静にクラス全員の顔を見てみれば半分以上が『前の世界』で中学を卒業して以来の顔が多い事に俺は気が付いた。
そして俺の真後ろから『クスクス』と聞き覚えのある笑い声が聞こえて来る。
俺は恐る恐る後ろを振るむくとそこには
「こっ、寿!?」
「えっ? なっ、何!? 私が笑ってしまったのを怒ってるの!?」
寿は俺が突然、名前を呼んだのでせっかくの笑顔がこわばった顔になってしまった。
「ご、ゴメンゴメン……全然怒ってないから。いや急に名前を呼んでゴメン……しばらく見ないうちに凄く美人になったなぁと思ってビックリしただけだから……」
俺は言った後に『しまった』と後悔したがそれは後の祭り……
寿はとても赤い顔をしながら俺にこう言った。
「今日の五十鈴君とっても変よ。それに『しばらく見ないうちに』って……昨日も一昨日もその前もずっと会ってるじゃない……(ポッ)……」
「ほんとお前は寿さんの顔を赤くさせるのが『得意』だよなぁ?」
隣の清水が小声でまた話しかけて来たが、『得意』って何だよ?と突っ込みたくなったが、その追及は高山との話が終わってからにしようと思うのであった。
――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
いよいよ新章開始です。
中学一年生にタイムリープした隆
戻れたのは嬉しいが『空白の一年』がある事に戸惑いを感じる。
彼はその空白を埋める為にどんな方法をとるのか?
そして『つねちゃん』との再会は無事に出来る度であろうか?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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