霜を踏み躙るもの20
さて、こちらの攻撃がまともに通るようになったとなれば話は別です。長柄の武器を持った相手には
「あっはははは! さっきまでの余裕はどこにやったんですか?」
やっぱり耐久型・ギミック型のボスはこちらの攻撃が通るようになってからが楽しいですね。今までじっとりした戦いを強要されて来た分、上がり幅が大きくて大変結構!
数えてみたところどうやら全部で18門あったらしい砲塔を一つ一つ丁寧に殴りつけて大破させていきます。これはあれですね、緩衝材を潰すような謎の楽しさがあって良いです。
「はい、16門目ェ! あとは両手の2門だけですが、ここからどうするんです?」
先端付近は超速で動いているレーザーの薙ぎも、懐に潜ってしまえば止まって見えます。まぁ、他より取り回しの良い部分についている両手の砲塔は懐でもそこそこの速さですが。それでも回避に支障がある程ではありません。
首元を狙った右砲塔の薙ぎと回避後の体制を崩した私を狙う左砲塔。なるほど、私が人間だったら回避は至難でしょうが生憎私はショゴスです。首関節を一度消し、首の付け根を起点に頭を1回転させて回避し……オロロロロロ、酔うのでもう二度としません。回避狩りにならなかった回避狩りに関しては左手首を蹴りつけて反らし、その勢いを利用したバックステップで回避します。が、距離を離し過ぎると先ほどみたく不利になるので即肉薄。迎え撃つ不孝さんの両手はSTRに任せて弾き上げ、がら空きの胴体に十分な踏み込みを経た膝蹴りを叩き込みます。バカげたSTRから生まれる衝撃は、不孝さんの小さな体をピンボールの如く弾き飛ばしました。
「げ、思ったより飛びましたね。距離が開いちゃいました」
不孝さんの飛んで行った先は着弾地点と言っていいほどに抉れており、砂煙のせいで視認性が非常に悪いです。うっすらと影が揺らめいているのであれが不孝さんなのでしょうが……うーん、なんだか影に違和感が。具体的に言うと両手の武装が変わっているような気がします。
「……随分無骨なコスチュームチェンジですねぇ」
砂埃が晴れ、現れたのは両手を覆う巨大な鉄塊とそこから飛び出す極太の杭。光を反射し鈍く光るそれは、殺意をそのまま容かたちにしたような無機質ながらも禍々しい形状をしています。その武器の名はパイルバンカー。往年の某ロボットアニメが元ネタのロマン砲たるそれは、最短の射程と最強の火力が特徴の暴力装置です。
「なるほど、そちらも近接戦モードと言うわけですか」
……っ、はっや! 先ほどまでかなり遠くにいたはずの不孝さんですが、瞬きの間に目の前まで肉薄し右腕を振りかぶっています、先ほど私の予想よりもはるかに吹っ飛んだ時から疑問はありましたが今の加速で確信しました。不孝さん、どういう理屈かドンドン軽くなっているようです。いやというかこの右ストレートは躱せないというか火花の散ったパイルバンカーとか明らかに当たっちゃまずいんですけど……
「とぉあああ!」
ショゴスの軟体性に任せて無理やり上体を捻り回避をし、出来てない! 左腕に軽い衝撃、どうやらパイルの杭に掠ったようです。兎に角、このままでは不味いので全力で地を蹴って距離を取ります。ついでにそのまま左腕の状態確認をば。
うへぇ、掠っただけなのに見事に抉れています。しかも見る限り杭が刺さって抉れたのではなく、掠った部分が分解されたかのように喪くなっているようです。いや、まあそれについては一旦置いておくとしてそれ以上に怖い点があります。
この傷、一切の痛みがありません。当たった瞬間は勿論、抉れた後の今も全く痛くないんです。忘れがちですがゲームの中であるこの世界でも、怪我をすれば鈍痛と言う形で痛みがあります。それはショゴスであるこの体も同じことであり、純粋な物理攻撃以外の攻撃によるものであれば鈍い痛みがあるはずです。ステータスバーを確認してもちゃんとHPが減少していますし、物理攻撃無効が適用された訳では無い模様。痛いはずなのに痛くない、なんとなく気持ち悪くて嫌ですね。
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はい、なろう先行投稿分を使い果たしました。一旦休んでから執筆再開するか即再開するかは神の味噌汁。
Ⅱ型携行民用兵器「ブロシェット」
人類の開発した最後の対人兵器。概念液状化した痛苦と破壊部位を燃料に稼働するこの兵器は、対象の痛苦を伴わない極めて人道的な兵器である。
人を弑するため、文字通りの国民皆兵計画のもと市民に与えられた豆鉄砲。しかしそれはあくまで人を弑するためのものであった。
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