霜を踏み躙るもの19
なんっっっっですかこのデタラメ性能のボスは! クールタイム無しのレーザーは普通に犯罪でしょう。それも乱射じゃなくて照射の! 射程無限・防御不能・当たれば即死の剣を十数本振り回しているようなもんです。っ、あぶな!
「手がつけられないどころの話じゃないんですが!?」
……一旦冷静になりましょう。あれだけのレーザー、最初は文字通りのクールタイムがあるのかと思い回避に徹してみましたがそれがないとなると別の攻略法を考える必要があります。
よくある対処法としては鏡がありますが、勿論そんなものの持ち合わせはありません。現実なら兎も角ゲーム内で持っている人の方が稀でしょう。
次に遮蔽。在り来たりですが遮蔽物に隠れて少しずつ近づいて……ぐわっ! 一瞬だけは防げてもすぐに遮蔽自体が破壊されますね。とは言え一瞬は防げるとなると少しはやりようがあるかもしれません。
遮蔽にしていた瓦礫が破壊される直前に飛び出し、不孝さんに向けて駆け出します。
左からの横凪ぎレーザーはジャンプで回避、空中狩りのもう1発は先程の瓦礫の破片を投げつけて時間稼ぎをしつつその隙に次の瓦礫へ。
そんな私を追うように他のレーザーが殺到するので、名残惜しいですがおニューの遮蔽もすぐに手放します。
「息つく! 暇くらい! くれません、かねぇ!」
先程の瓦礫を破壊した勢いのままレーザーがこちらに向かって来ました。私は先程と同じように別の瓦礫へ……ん? 色々計算してみましたけどこの方法だと不孝さんの元に辿り着くのに1手足りませんね?
「んぎぎぎぎぎそぉぉおい!」
ちょっと、いやかなり乙女の口から出てはいけない声が出てしまいましたが踏み出しかけた1歩を気合いで踏みとどめることに成功しました。
「乙女の矜持を犠牲にしたんです、無理矢理でもあと1手もらいますよ!」
その勢いのまま思い切り地面を踏みしめ、出来たひび割れに指をかけて思い切りひっくり返します。よーしこれで遮蔽が1個増えました。
更に左から一直線に向かって来るとはレーザーは上体を捻って回避して……あれ何か違和感が。
正面に捉えている筈の不孝さんのレーザーが真横から一直線に飛んでくるのはおかしくないですか。
まさかここにきて跳弾なんてことは……。数瞬の思考と共に左を見るとそこには先程まで正面にいた不孝さんが。
「ちょっと待ってください、なんでそっちにいるんですか」
移動……だとして何故今? 明らかに先程より近くに来てしまっていますし、わざわざそんなことする必要はない筈です。
引き撃ち戦法をしていた敵が近づいてきた以上、そうせざるを得ない理由があったと言うことですが。
「引き撃ち……移動……回避……あっ!」
なるほど、攻略の糸口が掴めたかも知れません。
手近な石拾い上げ、STRに任せて不孝さんに投げつけます。それを見た不孝さんは再びこちらへ向けようとしていたレーザーを停め、回避しました。
「やっぱり! 十分な距離を保っている引き撃ちがわざわざ近づいてまで移動する理由なんて、何かを回避するときのみ。 あなた、人型になると同時に物理耐性を失いましたね?」
無表情の筈の不孝さんの顔が、この時ばかりは痛いところを突かれたかのように歪んで見えました。
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