"I'm dying to devour more……"1



朝からキッチンで「───」を目撃した翌日。


昨日は本当にひどい目にあいました。朝からすき焼きを作ろうとしたのも信じ難いですが、何よりそこに「───」や「───」、「───」を投入し、「───」が「───」で「───」が「───」な「───」を創り出すとは……。


えぇ、「作る」ではなく「創る」ですよアレは。少なくとも私の知る生物ではありませんでした。臭いものには蓋ということですぐに下水に流したので、しっかりと確認したわけではありませんが。


……うん、この話題はやめておきましょう。主に私の精神衛生的に非常によろしく無いです。過去は過去、未来に目を向けるべきですよね。


さーて、今日の予定は……



「……」



体育祭、かぁ……。



「……なんだ、案外嫌でもないじゃないですか」



まぁ、昨日のアレに比べれば大抵のことは、ね?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


加賀美舞香は困惑していた。いや、もはや戦慄と言っても過言ではないだろう。


姉川百音が、そう、あの姉川百音が体育祭に素直に参加してきるのだ。


普段の体育の授業さえ嫌そうな顔をするあの姉川百音が。


謎の豪運で直前演習すら潰すあの姉川百音が。


嫌な顔1つせず体育祭に臨んでいるのである。


ちなみに、百音は普段通りの無表情であり、そこに違いを見出せるのは一重に百音と舞香の付き合いの長さ故だ。



「……百音」



「あ、おはよう舞香。どうしたの?」



「……頭、大丈夫? 風邪引いてない? 落ちてるものでも、食べ、た?」



「……あれ、ひょっとして私、喧嘩売られてます?」



舞香の問いかけに対し、普段通りに応じる百音。体育祭に対する愚痴の1つも飛び出さないその様子を見た舞香は天変地異の前触れを感じ、今すぐ防災ショップに向かいたい気持ちになるがグッと我慢する。



「……百音、なんでもっと、不幸そうな顔、しない」



「よーし、喧嘩だな? 言い値で買ってやろう」



「……リアルで、百音に負ける人なんて、いる?」



「……」



一晩で突然体力がついたわけでも無し。そのことが分かり、舞香の中で疑念と戦慄がますます増大する。これはもう、槍どころか水爆が降ってもおかしくはない(断言)。



「……おとーさん、おかーさん、先立つ不孝をお許しください」



「?」



なお、30分ののち、百音が理由を説明することで舞香の誤解は解消されることとなった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


全く、舞香は失礼です。ちょっと体育祭に対して前向き……とまでは言わずとも後ろ向きじゃ無くなっただけであそこまで言うなんて。


これは後で何か要求せねば………どうせならふんだくってやりましょう。



「……百音、お詫びに、シナリオに誘う」



「え? あぁ、うん、わかった」



くっ、先手を打たれたか!



ピロン



わたしのタブレットに舞香からメッセージが届きます。これは……シナリオ概要ですか。



────────────────


件名:シナリオ

差出人:舞香

宛先:百音

本文:シナリオ概要

シナリオ名『もっと食べたい』


────────────────



短っ。





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