第3話
モングラル・スタッカー。
世界で初めてフルダイブゲームを実現し、以来VR業界を牽引してきたマジックラフト社の最新作。
その最大の魅力はやはり、人外アバターが使用可能な点です。
これまでのVRでは人には存在しない器官、尻尾や翼などをアバターにつけると、現実で幻肢痛のような症状が出てしまいました。
しかし、モンスタでは如何なる方法でかこの問題を克服し、プレイヤーが現実とは全く別のアバターを使用できるのです。
とはいえ、何故かアバターは全て人型で容姿も現実のものから弄ることができません。
つまり、蛇人間なら現実の自分に尻尾や鱗が生えたアバターを、深きものの混血種ならエラや鰭の生えたアバターを使うということです。
ただ、基本の姿が人型なだけであり、変身が出来るような種族ならば真の姿になることも可能なようです。
モンスタは世界観としてはポストアポカリプスもので、過去に1度、「世界獣の黄昏(ラグナロク)」と呼ばれる災厄によって文明が破壊された後の星が舞台です。
夜のない「常昼の世界」であることを除けば王道の中世ファンタジー世界と言えるでしょう。
「うわぁ、種族が明らかに百種以上ありますね。……ん?」
ゲームを始めてすらいないのに、何故かメッセージが一件届いています。はて?
『あなた様が並列思考を使えることを前提としてお勧めの種族をいくつか見繕わせていただきました。
キャラメイクの参考となれば、幸いです。
運営』
マジックラフト社の気が利きすぎて、怖いっ……!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
さて、運営が提示してくれたお勧め種族はこちらの三つです。
ホモ・イゴロナケンシス
・普段は普通の人間だが真の姿は白熱していて、頭がなく、巨大であり、両手のひらに濡れた口が開いている
・同時に三つのことが考えられるなら、近接戦をしつつ、魔法の詠唱が二つまで可能である
ガグの混血児
・腕が肘から先で二股になっており、口が縦に付いていること以外は人間である
・並列思考が出来るのであれば、四本の腕と強靭な顎で近接戦で無類の強さを誇るだろう
ショゴス
・普段は人間に擬態しているが、その真の姿は原形質の小泡でできた不定形の塊であり、全身から玉蟲色の微光を放っている
・もしもコンピューター並みの並列思考が可能ならば、真の姿も使いこなせるかもしれない
どれも魅力的です、ですが……。
「……ショゴスにしましょう」
ここでショゴスを選ばないのは逃げですよね。
「っと、プレイヤー名より先に種族を決めてしまいました。モネ……は流石に安直ですね」
どうしましょうか。
姉川百音、アネカワモネ、「アネ」カワ「モネ」……よし。
「コ、ロ、ナっと。」
おや?キャラメイクが終了したようです。まだ職業すら決めてないのですが……。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
PL名:コロナ
Lv:1
種族:ショゴス
所持トゥル:0トゥル
職業:メイド
副業:無し
HP:630
MP:550
STR:63
CON:42
SIZ:84(10)
DEX:4(12)
APP:ー(21)
POW:55
AGI:1(14)
TEC:1(8)
VIT:1
LUK:ー(275)
※()内は人間時
スキル
・〈ショゴス〉
・〈経験値取得不可〉
・〈魔法取得不可〉
装備(人間時)
頭:無し
右手:無し
左手:無し
胴:無し
脚:無し
足:無し
アクセサリ:無し
装備(真の姿)
・無し
〈ショゴス〉
・物理攻撃からは1のダメージしか受けない
・魔法及び[閲覧規制]の被ダメージ5倍
・同族を食らうことでステータスが上昇する
・一定時間毎にHPが回復する
・全身の好きな位置から好きな器官を作成できる
・作成した器官はそれに応じた装備を装備できる
・魔法、スキル、装備によってHP、MP以外のステータスが変動しない
〈経験値取得不可〉
・如何なる方法においても、経験値を取得できない
〈魔法取得不可〉
・如何なる方法においても、魔法を取得できない
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ほほう、やってくれますね?
いや、待って、待ってください。まだ焦る時じゃありません。
「……」
まずは無言で種族説明欄を確認します。
……どうやらショゴスの初期職業は男性なら執事、女性ならメイドで固定のようです。
種族単位でメイドが運命付けられているとは業が深い。
いや、それはまぁ、いいです。
問題は経験値&魔法取得不可です。
モンスタでは、スキル習得はレベルアップ時にのみ起こります。そして私は経験値が得られません。
つまり、実質的には経験値&スキル&魔法取得不可ということになります。
……ピーキーにも程があるのでは?
取り敢えず、遺憾ながら予想以上に早くキャラメイクが終わったので、真の姿での操作の練習でもして時間をつぶすとしましょう。
……というか〈ショゴス〉も大概アレですね、5倍て。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
暫くショゴス形態で蠢いていると(あれは断じて動くではないです)、視界にウィンドウが現れます。
『お待たせいたしました。これより、モングラル・スタッカーのサービスを開始します』
視界が光に満たされます。
思わず目を瞑り、次に目を開けたときには私は異常に広大なゴミ捨て場にいました。
……ショゴス、初っ端からハードプレイだなぁ。
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