ドライな彼女を無視しすぎたら、ヤンデレになっちゃいました。

ノロップ/銀のカメレオン

勘違いから始まる恋愛事情


 誠治:『花蓮、久しぶりに日曜日出かけない?』


 ピロン


 花蓮:『ごめん、友達と遊ぶ予定入ってる』



 誠治:『そっか。じゃあ来週の日曜日はどう?』


 ピロン


 花蓮『ごめんその日も』



「まじかよ……」


 彼女である“はず”の花蓮が、ここ最近とても冷たい。というか、俺に対して一切興味をもってもらえない。

 このようにLINEでのやり取りも素っ気無いし、ひどいときだと1日の終盤に一度返事が来るくらいの時もある。

 夫婦くらいの長い付き合いであればこんなこともあるだろうが、俺と花蓮は付き合ってまだ三ヶ月しか経っていないし、関係性が悪くなるまでの喧嘩などしてもいない。


 一体、何故なんだろうか……。

 とりあえず一度会って話がしたい。


『今月はいつ頃空いてる?』


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 一時間経過


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 深夜1時


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 ピロン



「んん……花蓮か。返信するのに時間かかりすぎじゃないか?」



 花蓮:『ちょっとまだわかんないなー』



 ……ここまで待っててこれか。


 わからないっていうのが意味がわからない。

 友達との予定は立てられるけれど、俺との予定は何故か立てられない。


 どういうことだ?


 何か隠しているんじゃ無いか?


 そんな不安を抱えながら、俺は布団に包まった。

 気温は暑くも寒くもなく、おそらく人間には快適な気温であるというのに、意識がシャットダウンするのに随分と時間がかかった気がする。


 ***


 日曜日、特に用事もなくすることもなかったので、俺は一人渋谷の街に繰り出していた。

 Youtuberの街とも最近呼ばれているが、正直いつどこで撮影が行われていて、自分が映り込んでしまうかわからないし怖いので、俺はマスクをガッチリと装着している。

 撮影するのはいいけれど、モザイク処理くらいしてくれよ……大変なのはわかるが。


 書店や服を見に行ったりして、まだ時間はあるし一人映画でもいこうと思い、映画館の前につくと、その時だった。


 その光景を見た時、俺の心臓はバクンと跳ね上がった。



 花蓮が男と二人きりで映画館から出てきたのだ。



 男と二人で歩く花蓮の表情はとても明るく、俺がしばらく見ていない太陽のような笑顔だった。



「はは……なんだよ、そういうことかよ……」



 映画を見る気など到底起こらず、とぼとぼと俺は帰路についた。

 そして俺はいつの間にか自宅に帰り、ジッと自室の天井を見上げていた。


「考えてみたら……付き合って一ヶ月くらいしてからあんまり笑わなくなってたもんな……」


 女は気まぐれな生き物だと、死んだ親父が言っていた。

 おそらく、花蓮は付き合うまでの過程が楽しいと思う人間なのだろう。付き合うという目的が果たされれば、恋の始まりであり終わりでもあるという。

 事実、何度かネットでも見たことがあるが、今の時代そういう人が多いらしい。

 学生時代の恋愛はあくまで将来のための社会勉強であり、本戦前の練習段階の恋愛でしかないと。

 考えてみれば、確かに学生時代に付き合ったカップルの九割以上が破局するだろう。


 しかしそれでも俺は、例え学生同士の拙い恋愛とはいえ、一度付き合ったのなら真剣に向き合いたい。古風な考えな俺にとって、この世界での恋愛はなかなか厳しいものだ。


「けど……俺みたいなやつはこの時代、流行らないんだろうなあ……」


 今日起きた物事が全てを物語っている。


 俺は恋愛敗者だ。


 正直、今から花蓮と関係を取り戻そうという気にはならない。

 浮気は絶対に許せないタチな故、見過ごせない。


 かと言って、完全に花蓮のことが嫌いという気にはなれない。

 なんとも矛盾した感情だ。


「明日学校、行きたくねえ……」


 母さんが下の階から俺を呼んでいる声が聞こえる。おそらく晩ご飯が出来たのだろう。

 せっかく作ってくれたのに食べないわけには行かないのだが、どうしても今の自分の表情を家族に見せたくはなかった。

 気持ちが落ち着くまで待とうと思ったが、そのうちに俺は眠ってしまった。













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