集合

 

『レブキー。どうしましたか?』


 左手のウォッチからレブキーが映った立体スクリーンが現れる。


「おい大丈夫か!フェルゴール!」


 レブキーを押しのけ、ドゥベルザが顔を出した。


「大丈夫に決まっとるじゃろ。」

「誰が鍛えたと思ってる。」


 ドゥベルザの傍からひょこひょことヴァルハーレとゲンブが出てきた。


「アンタらウルサイんデスよ!」


 レブキーがドゥベルザを押しのけようとするも、押しのけられないせいで結局映っていない。


『おや、ドゥベルザ。帰ったのですか?』

「おうよ!ま、ひと仕事終えたんでな!」

「そんなことはどうでもいいデス!

 フェルゴール、とりあえず改造は出来ました。名付けてブウィスタ・リモデル!ま、まあもう少し時間かけた方がいいか……とは思いましたガ、デベルクを改造する初めての試みに緊張と背徳感がありましたヨ。カカカ……完成品に手を加えるのはワタシの趣味ではなかったのでs……」


『おい、レブキーなんてこった。何をどうしてああなったんですか。』


 レブキーが嬉々ききとして語るのを遮って、フェルゴールがウォッチから自分の視線の先に映る映像をレブキー達に見せた。

 そこには、グラッヂを常に放出し続けるブウィスタ・リモデルの姿があった。


「ナ!」


 カクーンとレブキーの口があんぐり開いた。


「こいつは……」

「暴走しとるの……」


 ヴァルハーレとゲンブが呆れる中、後ろでは大笑いするドゥベルザと、意気消沈していたレブキーがいた。


「これに関しては……レブキー、お前さんのやらかしじゃろう。」

「ああ、どう見ても。な。」


『とりあえず、このまま監察を続けます。そして、例の件も。』

「ああ、任せるぞ。フェルゴール。」

『では、』

「うむ、待っておるぞ。」


 フェルゴールはウォッチでの録画を開始した。

 録画するものは、No.32……ブウィスタ・リモデルの戦闘データである。


『さて……』


 フェルゴールがウォッチとは別のあるものを起動させた。



 ♢♢♢



『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』


 ブウィスタが咆哮する。


「オイオイ……ずいぶん狂気じみてんな……」

「全く……クールじゃないな。沢渡、動けるか?」

「ああ、なんとかな。しかし、あいつと戦った後にこのやべえ奴か。骨が折れるな。」

「まあ、そう言うな。さっさと片して、飲むワインがクールなのではないか。」

「へっ……そんでもって残業代をちゃんと請求すんのがクールだな。」

「ふっ……そういう事だ!」

「いくぞ京極!」


「うおおおおおおおおお!!」

「せりゃあああああ!!」


 沢渡と京極……二人の隊長が先陣を切っていく。


 ブウィスタが彼らに気づいた。


『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』


 両手の剣が、沢渡と京極に襲いかかる。


 ガキィン!ガキィン!


 二人がそれを弾こうと試みるが、


「くそっ……!」

「なんて……重さだ……!」


 二人が一撃の重さに驚きながらも、一撃を流しながら、各々一撃を入れた。


「手応えは確かにあった。だが……」

「効いている様子がないな。本当に効いていないのか。あるいは痛みを感じないだけで、ダメージは蓄積されているのか……」


『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』


 ブウィスタは顔色ひとつ変えずに、咆哮する。


「どちらにせよ、ただの攻撃が効かないんじゃあ、地道に攻撃しても意味がねえ。スキをつくって、どデカい一撃をお見舞いするのが一番いいだろ。今みたいに、ちまちま攻撃するのは、意味なさそうだからな。」

「だが、ここにいる全員分の火力で、あの怪人を倒せるか?」

「そうだな……ここに第三、第四、第五小隊が駆けつけるのまで、俺たちで時間を稼ぐしかねえな。」


 タタタッと走る音とともに、武器を携えた芹澤と周防が攻める。


 ガキィン、ガキィンと相手の剣戟を受けながら一発を与える機会を伺う。

 日比野がブウィスタから距離を保ったまま上へ跳び、空中からレーザーウィップによる攻撃をお見舞いした。


 だが、


「やばっ!」


 ブウィスタの口が開いた瞬間、火炎放射が発せられた。

 幸いにも、直撃を食らうことはなかったが、ダメージはある。


「あっぶない……」

「日比野さん!」


 日比野を気にしてしまったため、周防の気が一瞬逸れた。


 ブウィスタはそこを逃さず、重い一撃が周防を襲った。


「っし……ぐあっ!」


 何とか反応し、レーザーアックスで防いだが、重い一撃により吹き飛ばされてしまった。


「周防くん!」

「いってえー……」


 瓦礫の中に埋もれたが、やがて瓦礫を跳ね除け、戦線に復帰した。

 無事なようだ。


 だがそんな中、芹澤が一人で猛攻に耐える。しかし、一撃を与えるスキも見いだせず、そのまま押されてしまっていた。


「くあっ……!」


 そのまま力押しされ、芹澤も吹っ飛んだ。


「くっそ……おい、東雲……いい加減戦ってくんねえか?村主はダメそうだが……」


 相も変わらず、東雲の目は虚ろだった。


「お前もダメか……」


 ゆっくりと立ち上がり、ブウィスタを見据える。


「死にたくないんで、死なない程度に頑張りますか……」


 そんな中、芹澤がある考えが思いついた。


「沢渡さん……京極さん……」

「どうした?」


 芹澤が考えを伝えると、沢渡と京極は驚いた。


「王城の氷を溶かすために、あの怪人の吐く炎を使えないかだと!?」

「それは危険が伴う。最悪、彼女が……」

「あの時は、奇跡的に助かったけど……あの怪人がいなくなっても溶けていないのを見ると、やばい状況かと。怪人には、怪人かと思って……」


 はぁーとため息を吐く京極だったが、唸った末沢渡は、


「じゃ、やってみるか……」


 と言うのだった。


「沢渡!」

「もし火炎放射じゃあない場合は俺が守る。」


『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』


 ブウィスタが咆哮する。


「さあ、いくぞ……!」


 沢渡の合図で、芹澤が凍りついた王城の元に移動した。

 そして王城を守っていた第二小隊の隊員に話をする。


「そうか。北条さん、沢渡隊長と京極さんの戦闘中に、レーザーガンでこっちに気を引くことは出来る?」

「うん、やってみるわ。諸星。」

(いつになったら敬語使ってくれるんだろ……)


 沢渡と京極が武器を構える。


「さあて……」

「Be cool……(冷静に)」


 ダッ


 と勢いよく二人が飛び出す。

 一直線にではなく、二人で左右に別れて強襲する。

 しかし、わずかに沢渡の方が距離をとっていた。


 ガキィン!


 沢渡がレーザートンファーを構え、懐を狙って攻撃にかかる。

 それにブウィスタが反応した。

 そのため、体勢や重心の方向が京極のの方へ向いた。

 ブウィスタの視界には沢渡と奥の方には、凍りついた王城が見える。


 ガキキィン!


 京極が逆サイドから遅れて攻撃した。

 しかし、ブウィスタの体勢や重心が京極の方を向いているため、遅れて反応してしまった。

 ブウィスタは自身の剣で防いだため、ダメージにはなっていないが、体勢や重心のせいで思うように力が発揮できずにいる。


 ピュンピュンピュン


 作戦通り、王城の影に隠れて北条がレーザーガンで攻撃する。

 ブウィスタの視線が、凍った王城に目がいった。


 そして、狙い通りブウィスタは火炎放射をした。

 それは王城に直撃した……


 だが、


 氷は溶けなかった。

 溶ける気配すらなかった。


「な!氷が……溶けてない……」

「嘘だろ……王城はもう助けられないのか……?」



 ♢♢♢



 高層ビル屋上--


(溶けるわけない。誰を相手に能力鍛えたと思ってる。レブキーには悪いが、ただのアームズじゃあ俺の黒氷は溶けない。)



 ♢♢♢



 競り合う沢渡と京極をぶおっと勢いよくブウィスタが回転することにより、彼らをを吹き飛ばした。


『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』


 ブウィスタが飛鳥井を守る二人のガーディアンに狙いを定め、襲いかかった!


 油断していたせいか、各々武器を構えるのが遅れる。


 遅れたせいで一人はブウィスタにスーツを切り裂かれてしまった。


「うっうわあああああああ!!」


 彼のスーツは大きなダメージを受けたせいで、スーツの機能が落ちた……つまり防御力が落ちてしまった。

 ブウィスタが彼を蹴りあげ、飛び上がり膝蹴りした。

 膝の棘が、彼に貫通した。


「うっ……ぶふっ……」


 ヘルメットの中で血がビシャりと付いた。


布山ぬのやまァ!」


 京極の叫びが虚しくこだまする。


 布山はズルリと棘を抜かれ、地面に叩きつけられるように落ちた。


「は……はは……ああっ!」


 もう一人が武器を構えるが、武器を握る手は震えている。


「わあああああ!」


 ブウィスタに攻撃を仕掛けるが、すぐに武器が弾かれてしまう。

 武器を取りに行こうにも、距離がある……


「ぬ、布山……くそ……今度は……おれ……わ……ああ……あああああ!」


 芹澤と沢渡、京極が走り出す。


 だがこの距離では間に合わない。


「せえええええい!」

「ほわちゃああああああ!!」


 二人の影が、ブウィスタを押し切った。


「ちっ……間に合わなかったかい……!」

「悔やむのは後よ、織沙おりざチャン。」


 その後からきたもう一人のガーディアンが、彼に駆け寄った。


「君、大丈夫か?」

「おれ、おれ……」


早乙女さおとめ永友ながとも堀田ほった!」


 沢渡がそれぞれの名を呼ぶ。

 どうやら、後続部隊の第三、第四、第五小隊が到着したようだ。


「沢渡のダンナ!あんたァ腕なまったか!?」


「どぅあーれが永友よ!アンって呼んでって言ったでしょ!」


「沢渡さんでも、苦戦するってことか……」


「そうか……到着したのか……」


 早乙女、永友、堀田の後ろにはそれぞれ小隊の隊員全員が集まっていた。


「全小隊に告ぐ!」


 沢渡が声を張り上げる。


「討伐目標は、今目の前にいる怪人!こいつは強く、並大抵の攻撃じゃ痛みを感じない!そのため、ここにいるレーザーバズーカを所持した奴全員でそいつをぶっぱなしてもらう!

 レーザーバズーカを持ってる奴は早乙女の指示に従い、バズーカの用意!

 それ以外の奴は俺と京極、永友と共に来い!この怪人から、ドでけえ一撃をぶっ放すための"スキ"をつくる!怯えるな!怖がるな!みんな一緒だ!自分を奮い立たせろ!仲間を鼓舞しろ!いくぞお前らああああああ!!」



「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」」



 全員の気持ちが一つになった。

 皆が叫んだ。

 まるで自分と仲間の士気をを高めるように。

 怖くないと、背中を押すように。


 彼らは敵を見据えた。

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