企み

 

『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』


 士気の高揚をかき消すかのように、ブウィスタが叫ぶ。


「バズーカ用意!」


 早乙女の指示で、レーザーバズーカを携帯する者がいっせいに構える。


「私の指示で一斉放射だ。それまでにしっかり目標を補足しておけ!」


「「「「「「「了解!」」」」」」」」



 沢渡と、京極そして永友が先陣を切る。


「んじゃ、俺達も行きますか。」

「京極チャン、あんまり気にしちゃダメよ。」

「わかってる。こんな時こそ、クールにならなくては……」

(布山……!俺が不甲斐ないばかりに……!)


 京極は自身の部下を失ったこと悔いていた。

 永友は気持ちを察して慰め、沢渡はこの状況だからこそ何も言わず、この状況を見据えていた。


「日比野さん……」

「わかってるわ。この子達、守りながら戦わなきゃ。」

「そうですね……よし!」


 周防が深呼吸し、気合いを入れる。


 芹澤がレーザーランスを構える。


「芹澤くん、無理はしないでよ。君も連戦で疲れているだろうからね。」


 笑顔を崩さず、諸星が芹澤に声をかけた。


「はい、いってきます。」


 ダッと駆け出し、芹澤は戦いに備える。


『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』


「いくぞ!!!!」


 わああああああっといっせいにガーディアンズがブウィスタにかかる。


 ブウィスタが回転し、ガーディアンズを蹴散らす。

 そして火炎を吐き、まるでなりふり構わず大暴れしていた。


 沢渡と京極が切り込む。

 何とか作り出したスキを永友が力技で押す。


『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』


「まだまだぁ!」

「せあああああああ!」

「しゃおらっはあああああああ!!」


 沢渡が永友とスイッチし、永友が一人でブウィスタの剣を一人で止めた。

 そして、もう片方の剣を沢渡と京極が抑える。

 ただ抑えるのでは無く、武器折るようにサーベルを攻撃する。


 ピシッ


 ブウィスタのサーベルにヒビが入った。


 ぐおっと回転し、三人の隊長を振りほどこうとするが、隊長たちが食らいつく。


 日比野がスキを見て、レーザーウィップで攻撃する。


 ブウィスタの背後を第五小隊が攻撃を仕掛けるが、ブウィスタが背のマントから針を発射した。


「ぐあああああ!」

「うああああああ!」


 針はスーツを貫通し、彼らにダメージを与える。


「くそっ!耐えてくれ……!」


 堀田がレーザーバズーカを構えながら、ギリッと歯を噛み締めて自分が出ていきたいのを堪えた。


「スミス!榛名はるなちゃん!」

「はい!姉さん!」

「了解!姉さん!」


 永友の掛け声で、永友の部隊の二人がフォローに入るが……


「うはあん……」

「うくっ!」

「うわっ!」


 永友達が力に押され、吹き飛ばされた。


「永友!」


 その沢渡と京極の後ろを、永友を打ち破ったブウィスタの刃が襲う。


 ガキィン!


「ぐっ!」


 周防がカバーに入る。


「ううううううっ!」


 なんとか耐えているが、徐々に押され始めた。


「負けてられるかよ……!」

「ああ、クールにやらせてもらう……!」


「「うおおおおおおおおお!!」」


 意地と気合いと馬鹿力で、相手のサーベルを砕いた。


『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!?!?!?』


 ブウィスタは一瞬怯んだ。

 その一瞬を、は見逃さなかった。


「諸星さん、行きましょう!」

「わかった。いこうか。」


 芹澤と諸星が二人で攻めにかかる。

 沢渡と京極を薙ぎ払ったブウィスタが、芹澤と諸星を狙う。


 諸星がレーザーサーベルで受け、そのスキに芹澤がブウィスタのサーベルを踏み台にして空を跳んだ。

 芹澤は顔にスキがあると思ったが、前のブウィスタと違って火炎放射を吹き出したのを思い出した。


(しまった……)


 このままでは、ゼロ距離で火炎放射を食らってしまう。

 ただでさえこのスーツにダメージを与える火炎放射が、ゼロ距離で放たれ、直撃してしまえば一溜りもないだろう。

 そこで芹澤は咄嗟の賭けに出た。


「く……」


 芹澤が狙いを定めたのはブウィスタの"口"。


「一か八かだ……!」

(口が開いて、火炎放射を放とうとする瞬間!)


 ブウィスタの口が開いた。


「ぶち抜けぇええええっ!」


 ブウィスタの口をレーザーランスで貫いた。

 ブウィスタは芹澤に火炎放射で攻撃した。

 スピードはほぼ同時。


 だが、ダメージはブウィスタの方が大きい!

 芹澤も手に火傷を負ったが、スーツが無ければ、もっと酷いことになっていただろう。


「うぁあああああっ!」


 痛みに叫び、その場から離脱を計る。



 ボカァン



 と音を立てて、ブウィスタの口が爆発した。


 芹澤はギリギリで地面に落ちた。

 しかし、武器はもうない。


「くっ、うっ……!」


 沢渡と京極が芹澤に駆け寄る。


「無茶しやがって……」

「今の一撃はクールだったが、自分の身を危険に晒すのは……クールじゃないな。」


 早乙女がスっと手を上げ、ビッと前へ下ろした。ブウィスタ……脅威へと向けて。


「だがこれでスキができた。全員バズーカ用意!」 


 早乙女が指示すると、早乙女を含めレーザーバズーカを携帯するガーディアン達がブウィスタに狙いを定めた。


「周防!」

「え、うおっとと……」


 沢渡が芹澤をぶん投げ、それを周防がキャッチした。

 沢渡と京極も退避し、前線に出ていた者達が後退する。


 そして--


「撃て!」


 早乙女の一声で、総勢12名のガーディアンによるレーザーバズーカによる一斉放射が行われた。


 その威力はとても大きなものだった。


 爆風により周囲の建物が揺れ、窓ガラスが割れた。


「これで……」

「ああ、結構応えたんじゃないか……?」


 しかし、爆風から見えた姿は先程まで見ていたあの怪人だった。


『ブウィイ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!』


「な!なんだと!?」


 ブウィスタが叫ぶ。

 ブウィスタが咆哮する。


 ブウィスタがガーディアンズに剣を向けた。


『イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛イ゛!!!!」


 ブウィスタは膝をつき、もがき始めた。

 そしてそのまま、黒い闇と共に消えていった。


「や、やったのか。」

「どうやらそのようだ。」


 うおおおおおおおおおおおおお!!!!


 ガーディアンズから歓喜の歓声が上がった。


 その一方で、王城を心配する者、そして布山の死を悲しむ者もいた。



 パチパチパチ……



 そんな中、歓声に混じって拍手をする音が聞こえてきた。


 芹澤と沢渡がいち早く気づいた。

 そしてそれが伝染するように皆が拍手のする音の場所を見た。


 ブウィスタが消滅した場所からだ。


『よく倒したな。ひとまず、おめでとうと言っておこうか?』


 そこに居たのは、先程までいた黒い鎧の怪人だった。


「お前……!」

「鎧の……怪人!」


「そ、そそっそんな……!まだ怪人がいたって言うのか……!?」


 誰かがこんなことを言ったことにより、動揺が伝染するように広がっていった。


「王城の氷をなんとかしろ!」


 芹澤が前に出て、鎧の怪人に告げた。


『口には気をつけろ。』


 鎧の怪人の冷たいプレッシャーが大瀑布のように、この場を飲み込んだ。


「うわあああああああ!」

「ひいいいいい!」

「な、なんだよ……このバケモノ!」


 その冷たいプレッシャーはここにいる者達を恐怖に染めあげるのに、数秒とかからなかった。


「おいおい……冗談きついぜ……!」

「今度はあの怪人とか……クールにいかないものだな……!」

「なんだィ……アイツが本命か!沢渡のダンナがいてもキツイわけだ……!」

「それでも……やるしかないわよ……!」

「そうですね……僕達が日本の……世界の砦だ!」


 五人の隊長が武器を構える。


『俺がお前らを一遍に相手をしても構わないが……お前に言ったな、今後さらに利用した上で、殺す。と。』


 鎧の怪人が、沢渡を指さして告げた。


『お前達には、利用価値がある。だから、お前達を生かそうという話だ。』


 この場にいる全員が息を飲んだ。


『今回の……まあ、褒美だ。ありがたく受け取れ。』


 鎧の怪人がそう言って指を鳴らすと、王城を凍らせていた黒い氷が塵になって消えた。


「王城!」


 芹澤と日比野が王城の元へ駆け寄った。


『その状態で生きているかどうかは、わからないがな。』


「冷たい……酷い状態だわ……」

「お前……!」


 キッと芹澤が鎧の怪人を睨みつける。

 だが、鎧の怪人は何処吹く風と気づいていないのか……無視していた。


『せいぜい俺達の実験に付き合ってくれ。』


 そう言いながら、鎧の怪人があるものを取り出した。


「それ……!」

「スマホ……?」


 鎧の怪人が手に持っていたもの……文明の利器、スマートフォンである。


『お前達の情報は一般的には知られていない。お前達がSNSやインターネットを管理し、情報を流さないように……そして関係する情報を全て無かったことにするためだ。そのため、世間には俺達による行動が全て隠蔽され事故・事件として扱われている。

 そこで、考えた。今まで極秘裏に行われていたお前達の活動が、公になったら一体どんなことになるのか。今まで事故として扱われていた、謎の事故・事件が、本当は異星人の襲来によるもので、それを倒す奴らがいると分かったら、世間はどう動くのか。』


「なに……!?」

「まさか……」


『お前達のことが、世間一般に知られてしまったら。一体どんな混乱が生まれるのかと。そんな混乱の中、お前達は一体どんな扱いを受けるのか……興味がある。』


 黒い鎧の怪人がスマートフォンを、沢渡に向けて投げた。


 そこでは先程の戦いが配信されていた上に、動画として投稿されていたり、その写真が投稿されていたりと……SNSやインターネットは氾濫状態になっていた。


『悪いが、お前達の組織が裏で管理するSNSやインターネットはハッキングさせてもらった。せいぜいこの混乱で、どう足掻くか楽しませてもらう。』


 鎧の怪人がそう言うと、「ゲート」を唱え、姿がパッと姿を消した。


「おい……待て!」

「沢渡!あれを見ろ!」


 道路の向こう側から、多くの人が押し寄せているのが見えた。

 鎧の怪人が流した映像によって、何も知らない一般人が危険を顧みず、ただの興味本位でこの現場に来ようとしているのだろう。


「くっ……とにかく、全員退却!今すぐにだ!急げ!」


 沢渡の指示でここにいたガーディアンズ全員が自分のバイクの元へ走る。

 ある者は一目散に、ある者はけが人や死亡者を抱え、この場から退散した。

 ガーディアンズが一斉にバイクを走らせる。

 混乱状態の中、彼らは散り散りになった。



 ♢♢♢



「こんなことが……まさか、こんなことのせいであつしも……」


 そこに居たのは、怪人でもガーディアンでもない一般人だった。


「これが……村主さんの言ってた、国がどうのこうのってやつなのか!?」


 その現場にいた彼はガーディアンズに見つからないよう、脱兎のごとく駆け出した。


「こっ、これを見せれば、村主さんも……!きっと考え直してくれる!こういう時こそ、あんな訳の分からん連中より、警察の出番だろ!」



「へえ……」


 その様子を、白茶髪の青年が藍色の瞳で見つめていた。

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