第8話 告白。そして物語のスタート。
放課後の教室。
グラウンドの運動部の声が聞こえる。
長閑な…放課後だ。
って、なんでこうなった…
僕が何をしたっていうんだぁぁ!!
目の前に広がるのは
そこでは少女三人+僕で机の四方を囲んでいた。
僕から見て真正面が翠、右側が桜そして左側が玲さん。
どう考えても尋常じゃない空気が流れているのは僕でも分かっている。
今にでもどこからか武器を取り出し、打ち合いでも始めそうだ。
今日の僕は口数少なそうだな。下手に口出したら腹切りだよ…
「それでは、島崎玲さん。あなたと氷冴の関係を聞きましょうか。」
「私と氷冴くんはクラスメイトで、クラス委員の仕事をよく手伝ってもらっていました」
「そんなのはわかってるんだけどさ~島崎さんはさ、なんで桜のひーくんに手を出したの?」
僕はいつから桜の物になったんだろうか。
「僕、桜のものではないんですが…」
「そうよ。私のよ。」
「翠のものでもないね。うん」
「ふんっ。氷冴なんてもう知らない。」
えっ、翠に拗ねられたんですけど!?
「お二方ともやめてください。氷冴くんが困ってます。」
「ぐるる…」
桜が敵を見る目をしながらうなっている…
「そうね。私としたことが取り乱したわ」
「それに高坂会長も氷冴くんには女の顔するんですね」
「な、それだと私が氷冴のことをす…好きみたいじゃない!」
「ぷぷぷ…翠が…」
「あれ?違うんですか?じゃあ何故二人で部活を作ったり、部活の存在を隠そうとしたんですかね?」
桜が口を抑えて翠を煽るように笑っている。
それにつられて、翠の顔が真っ赤になっていく。
「別にそんなの私の勝手じゃない!」
「いいえ。不当に会長の権利を使用して、認可を強行に突破した部活なんて他の生徒に受け入れられると思いますか?私は認められないですね。ましてや私情を持ち込んで部活を作るなんて。そのせいで来年の部費予算が圧迫されたら、ほかの生徒からは信頼がなくなってしまいますよね?」
玲さんが流暢かつ、的確に翠を攻めていく。
翠は何も言い返せないようだ。
「翠は恋になると盲目になっちゃうもんね~」
そこにつかさず煽りを入れていく桜。
もう僕も見てらんないなぁ
「もうそこまでにしよう?桜。玲さん。翠は僕のために文芸部を作ってくれたんだ」
「…氷冴」
あぁ翠が泣きそうに僕の事を見つめている。
こんな翠は小学生以来か?
正直なところ、すごい可愛い。
「ひーくんのせいで、なんか桜と島崎さんが悪者みたいじゃん」
「ご、ごめん…」
「謝らなくてもいいよ?氷冴くん。」
「どういう事かな…?」
「この二人がいようとも正妻戦争には私が勝つから」
「正妻戦争…?僕のってこと?」
「当たり前です。氷冴くんの正妻以外にどこがあるんですか」
そんなラブコメみたいなことを真面目な顔して言われましても…
ほかの二人はと言うとそっぽを向いて僕に顔を見せてくれない。
耳まで赤いのは見えてるけどね。
「お二方とも、反論がないのなら私は氷冴くんにもっとアピールしていきます。まぁ宣戦布告されてもどんどんアピールはしますけど」
「「だ、ダメよ!(だよ!)」」
二人は揃って声を上げた。
「私は氷冴の幼馴染なんだから!そ、それに私は氷冴のこと…」
「ひーくんは桜と結婚するんだよ?どこの馬の骨かわからない子に取られて良いわけない!」
僕が桜と結婚?翠は最後なんて言ったんだ?
「氷冴くん?」
「は、はひ!?」
玲さんに呼ばれてつい驚いてしまった。
「改めて言わせてね…氷冴くんのことが好きだよ?こうなっている以上、私はもう逃げない。だから氷冴くんも私の事しっかり見ててね。それにいくら一緒にいた年数が長いからと言って私が今ここで手を引く理由にもならないと思うんだ。だから氷冴くんを絶対に振り返らせるから。」
「わ、わかった」
玲さんの目は本気だった。だから僕も真剣に向き合う。
これは僕なりの誠意でもある。
「ひーくん…」
「桜?」
「桜もひーくんの事大好きだから!」
「あ、ありがとう…」
「だから私の事見ててね?」
その瞬間に僕の頬に柔らかいものが触れた。
耳まで朱色に染めて目線を逸らす桜、突然の事で思考がフリーズする僕。
そして圧倒的な威圧感を発する玲さんと翠。
いつから僕はハーレムラブコメの主人公になったんだ。
「最後のは気に入りませんが、これでいいかな?翠さんも言いたいことありますか?」
玲さんの言葉で僕は翠に目線を向けた。
「ひ、ひーくん…」
「な、なに?」
突然、桜と同じように僕を呼ぶ翠。
まぁ、小さい頃は翠からも呼ばれていたから違和感はない。
「わ、私もずっとひーくんのことが好きだから。いつもはあんまり可愛くないって思うかもだけど…ひーくんへの想いは桜にも島崎さんにも負けないからっ!」
「……」
僕は言葉を失った。あれ?翠ってこんなに可愛かったっけ?
ダメだ。その場の言葉に流されちゃ!
「な、なんか言ってくれないと恥ずかしい…」
そう言って翠は顔を覆い隠してしまった。
「と、いう事で私達三人の気持ちは理解してもらえましたかな?」
「うん。なんか僕がラブコメの鈍感主人公みたいだね…」
「その点については間違ってないと思うよ?」
桜が言うと、ほかの二人が大きく頷いた。
「え!?噓でしょ?」
「だって私がお手伝いをお願いするの氷冴くんだけだったんだよ?男子のクラス委員もいたのに」
「桜だってイメチェンしたのは、ひーくんの家にいっぱいあったギャル系のラノベだもん」
「私だって、二人きりになりたくて…」
「そういわれてみれば…」
あんなに馬鹿にしてたのに、僕が超鈍感だったなんて…
「じゃあ、私も文芸部に入りますね。いいですか?高坂会長」
「えぇ…これは断れないわ…」
「これからよろしくね?玲ちゃん!」
「あんまり接点はなかったけどこれからはライバルだね?桜ちゃん?」
「そうね。まぁひーくんの事なら桜にも玲にも手加減しないわ」
ゴゴゴゴゴ…
みたいな効果音が似合いそうなくらい、三人の目がやっぱり笑ってない…
でも、僕はいずれ答えを出さないといけないんだろう。
「みんなに一つ言っておきたいんだ」
三人は僕に注目している。
「もし、他の男を好きになったら見限ってもらっていいよ。女の子からの告白をしっかりとした答えで返せない僕だし、本当に最低だと思ってるんだ。みんなごめん。」
「「「ありえないかな?(わね)(よっ!)」」」
三人とも口を揃えて同じ事を言っている。
「だって元々ひーくんにしか興味ないし~?」
「氷冴くん以外にいい人この学園にいないしね?」
「この二人が言ってることに同意ね。私達は、氷冴だから好きなのよ」
「うんうん」と二人もうなずいている。
「でも…」
「いいの。元々桜とは氷冴の隣を争ってたわけだし」
「一人くらい増えたって桜は負ける気ないしねっ」
「私も負ける気ないかなぁ…」
三人は何処か楽しそうでもあった。
僕が答えを見つける日は来るんだろうか…
いや、そう遠くない未来に僕は答えを出すだろう。
――僕たちの物語がここから始まる。
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