14. just like a prince / Ayagi
(な、なにあれ?!?!嘘でしょ!!!!)
おれはついさっきみた光景が頭から離れず、ひとりパニック状態になっていた。
一体何が起こったんだ?
ちょっともう一度状況を整理した方がいい気がしてきた。うん。
今朝は学校がない休みの日だったけど、いつも通りに起きたんだ。
そう、いつも通り。
部屋を出て、ご飯食べようと食堂に足を向けたところで、屋敷のエントランスホールでばったり
ずいぶん早く出かけるんだな〜って思ったけど、そういえば昨日の晩餐の時に今日は朝から予定が詰まってるから、朝ごはんは先に食べて出かけるねって聞いた気がする。
そうそう。家令のエリヤさんと、側近のエノクさんがそんなこと言ってた。
あ。エリヤさんとエノクさんは双子の兄弟で、どっちもすごく背が高くておんなじ空色の瞳してるんだよね。
エリヤさんの方がきっちりしててちょっと怖いかも。エノクさんは気さくな感じでよく構ってくれる。
うん、だから、朝起きてエントランスホールで悠祈さんに出会ったのは別にいい。
驚くことではないし。予定通りなんだろうし。
でもね、でもね!
そこに佇んでいた
(アレは…ずるい!反則だ!!!)
なにが反則かって?
そりゃ、もちろん、
悠祈さんがちゃんとした格好をすればとんでもなくイケメンなのは分かってた。
わかってたんだけど…!
いつもの仕事のときの白い制服でもなく。
屋敷で過ごす時のおれが選んだ服でもなく。
初めて見た、あの服…
あれは本当にヤバい。
上品そうな青色…たしか、プルシアンブルー、かな。
その青色の騎士っぼいデザインの服に金色の飾緒がついてて、肩とか襟とかいろいろと勲章が付いてた。
銀色の長い髪の毛は、
朝の柔らかい光が降り注ぐエントランスホールに立ってるから、ほんとにキラキラしてて。
なんかこう…絵本中の王子様はこんなだろうなって思った。
おれは目を見開いたまま、ただ呆然と見蕩れるしかなかった。
「じゃあ行ってくるね。帰りはお茶の頃になってしまうかな」
「いってらっしゃいませ、
「行ってらっしゃい悠祈サン!エノクサンも!」
寝起きのおれとは違って、エリヤさんはぴしっと黒い燕尾服を着こなして。
ウィンさんはいつものトレードマークの青いエプロンをしてて。
王子様みたいな
出発のあいさつをしてくれた
思考停止しちゃうくらい、初めて見るあの服の破壊力が凄まじかった。
なんであんな格好してたんだろうって今更思ったところで、もう
帰ってきたら聞いてみようかな。
教えてくれるかな。
■■■
朝よりすこしぐったりした様子の
おれは待ちきれなくてエントランスで突撃かましたんだけど、エノクさんに抱えられて高い高いされた。
いや、おれもう少しで15歳だからね。いつまでも子どもじゃないよ!
「おかえりなさいませ、
「うん、ただいま」
「サロンにお茶の用意をしてございます」
「ありがとう。このまま向かうよ」
エリヤさんとそんなやりとりをしてからサロンに向かうと、そこには美味しそうなお菓子の数々。
エノクさんに抱えられたままだったおれは、そのままソファーに座らされた。完全に子ども扱い…悔しい。
朝見かけた服装のままだったから、王子様の優雅な休日って感じでかっこよさしかない。
エノクさんとウィンさんもそれぞれどこかしらかに座ってて、全員にお茶を入れ終えたエリヤさんも最後に座ってた。
貴族のお屋敷だと使用人と主人が椅子を並べることはダメだけど、
あ。いや。そんなことより!
この目の前の王子様スタイルの理由が聞きたいんだった!!
「
「あれ?…見たの初めてだっけ?」
質問に質問で返すなよ!
きょとんと首を傾げられても困る。
ていうか、そのキラキラ王子様スタイルでそれをやられても…よけいキラキラするだけだから!
「ぼっちゃまがいらしてからは呼び出しもありませんでしたので、初めてかと思いますよ。
うん、そう。
エリヤさんの言う通り、おれはこんなキラキラ王子様スタイル、初めて見る。
でもぼっちゃまはやめてくれないかな…ぼっちゃまは。
エリヤさんの答えにちょっと考えるそぶりをした
「これが本来の正装なんスよ、ぼっちゃん」
これまたいつもより煌びやかな服を着たエノクさんが新情報を投げてきた。
え、これが本来の正装?
確認するようにウィンさんとエリヤさんに目を向けると、ふたりとも頷いている。
当たり前だと言わんばかりの様子に、おれはますます混乱する。
だって、つい最近、学校で習ったんだ。この組み合わせ。
金色の飾緒でプルシアンブルーの騎士服って…それって…
「
エノクさんが実にいい笑顔でスパッと言い切った横で、
え…っと…神聖騎士団のそうだんちょう…そうだんちょう…総団長?!
「そそそそれって…いちばんえらいひと!」
思わず食べてたクッキーに力が入って、バラバラと砕け落ちたけど…そんなの構うもんか。
隣に座ってたウィンさんがテキパキと片付けてくれてるけど、そっちまで意識が向かない。
神聖騎士団の総団長って…!
墓守っていう仕事だから、騎士団に入ってるっていうのはわかってたけど…!
総団長って墓守の中の最強ってことじゃないか!
つまり、カラリオルの中で一番強い人…
うそだろ、目の前のこの人が…最強?!?!?!
「まあそうなるかなあ」
優雅に紅茶を飲みながらのんびり答える
いやいやなにそんなにのんびりしてるんですかあなた。
たしかに訓練してもらってて、すごく強いひとなんだっていうのは知ってたけど…これは予想外というかなんというか。
なにおれ、そんなすごい人のところに居候してるの?
やばくない?
「まあ、総団長なんてお役目もらってるけど、結局は墓守だからね。この領地の墓地を管理して、死神から街を守るっていうお仕事だよ」
そんなさらりとなんでもないことのようにいうけどさ…学校で聞いた時、すげえなって思ったんだよ。
神聖騎士団に入るのは大変なんだって。
このカラリオルに住んでる人間は、多かれ少なかれ霊力を持ってるから、聖職者になることはできるんだよね。
牧師とか神父とかは比較的なりやすいって。
葬儀屋は牧師や神父よりもちょっと多めの霊力が必要だけど、この仕事だってそこまでなれないわけでもないし。
でも、墓守だけは別格なんだ。
そもそも、浄化の霊力・死者を甦らせる魔力・剣を扱う力がないと墓守になれなくて。
特に死者を蘇らせる魔力は、墓守になるために絶対必要な力。
そういうの全部持ってる人の中で、一番強い人が総団長になるって。
つまり目の前のこの王子様みたいにキラキラした美人のお兄さんは、こんな感じだけどこの世界最強ってことなのか。
あまりのことにボケっとしてたら、エノクさんに頭をガシガシされた。
あー…うん、やっと現実に帰ってこれたよ。
そのあとはエリヤさんとエノクさんとウィンさんが、
エリヤさんもエノクさんも、おれが
「保護者になるならば、ご自身についてもう少しお話しておくべきです」って。
ちょっとしょげてる
怒られてる
これより早かったらおれは
そんなことを思いながら、ウィンさんの美味しいお菓子とお茶を満喫したのだった。
あ。
神聖騎士団総団長にもびっくりしたけど、
しかも、おれがお世話になってるこのお屋敷って「領主館」だったんだって!
それもまたびっくりだよ!そっちの方が早く知りたかった。
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