.13
グレッシオたちは、ウキヤの街に繰り出して、奴隷商の情報を仕入れるために動き始める。
正規の奴隷商であるのならばすぐに見つかるものであろうが、非公式である奴隷商はたどり着くのも難しいのである。
グレッシオはクシミールと共に街を歩いている。マドロラとジョエロワはそれぞれ別行動である。
グレッシオは一先ず、裏路地の中へと歩いていく。
クシミールはその後ろを進んでいく。グレッシオが進む先が何処であろうとも、ついていこうとその足取りに躊躇いはない。
裏路地は、表通りとは全く違う雰囲気が醸し出ている。
表通りは、人通りが多く、店も沢山並んでいる。活気のある表通りとは違い、裏通りは人気が少ない。そして何処か薄暗い。
そこにいる者たちは目が虚ろなものや、何かを企んでいるようなそんな目つきの者が多い。
グレッシオとクシミールという二人は、裏通りで視線を向けられていた。
それでも彼ら二人が直接絡まれることが少ないのは、グレッシオとクシミールがあまりにも堂々とそこにいるからだろうか。
この裏通りにおどおどとした様子で訪れれば、それだけで絡まれる理由になる。二人は、そういう隙を相手に見せなかった。そして手を出してはいけないといった雰囲気を醸し出していた。
「グレ、どこ行きます?」
「もっと奥だな」
目的のものがそこにあるのかどうかは分からない。
それでも情報を探そうとしなければどうしようもない。そう考えているから、グレッシオはただ歩いている。
グレッシオとクシミールは目ぼしい存在を探して、聞き込みをしながら歩いていく。
「買い付けをしたいんだが」
「買い付け……? 何が欲しいんだ?」
奴隷ということをほのめかしながら聞き取りを進めていったが、今の所、非公式の奴隷商というのにはたどり着けない。
そう簡単に一日で目的に辿り着けるとは思えなかったため、焦りはしないが、それでも何も手に入らないというのは微妙な気持ちになるグレッシオであった。
とはいえ、非正規な奴隷商というのはそれだけリスクが高い。下手に何処からか情報が洩れると静粛されてしまったりする。
そういうものがあるので、下手に非正規の奴隷を手に入れるというのは色々と難しいのである。
「戻るか」
「はい」
裏通りをしばらく移動していたグレッシオとクシミールであったが、しばらく動き回って宿に戻ることになった。
大きな収穫はなかったが、ウキヤの街の裏通りを歩き回ることによって、何処にいがあるのかといったそう言った情報を手に入れることは出来た。
まだまだ非正規の奴隷商の情報を手に入れるには足りない。だけど、こうして情報を集めることが第一歩なのである。
グレッシオとカシミールは、表通りに戻ると屋台でお肉を焼いて串刺しにしたものを購入して宿へと戻るのである。
そうして二人は宿へと戻り、部屋で一息を付く。まだマドロラとジョエロワは戻ってきていないようだった。
二人は今頃、何をしているだろうか――などとそんなことを考えながらグレッシオはベッドに腰かけ、クシミールに声をかける。
「カシミールはこの街で聖魔法の奴隷は手に入ると思うか?」
「難しいだろう。運が良ければいるぐらいだろうな」
「そうだろうな」
聖魔法の使い手を手に入れたいというのが、一番の目標であるが、それは現実的に考えて中々難しいものである。
そのことは二人とも理解している。
それでも出来れば聖魔法の使える治癒師を手に入れたいというのが本音である。
グレッシオとクシミールはそんな話をしながらも、マドロラとジョエロワの事を待っている。
グレッシオたちが情報収集のために街に繰り出してから既に二時間。——おおまかな情報収集と目安として、グレッシオたちは二時間というのを決めていた。
今日はこの街に辿り着いたばかりなのもあり、それだけの短い時間を指定していた。
あくまでグレッシオたちの目的は、ニガレーダ王国のためになる奴隷を手に入れることである。
その過程で誰か一人が欠けることはグレッシオたちの望む所ではない。
グレッシオの連れてきた三人はニガレーダ王国では、かけがえのない三人である。だからこそ、あくまで慎重に行動を起こすことを望んでいる。
「何か巻き込まれているんじゃないだろうな」
「どうだろう?」
時間よりも二人が戻ってくるのが遅く、グレッシオとクシミールはそのような会話を交わしている。
そうしていれば、ジョエロワがまず先に戻ってきた。マドロラはまだ戻ってきていない。ジョエロワもマドロラがまだ戻っていないことに驚いた様子を見せる。
マドロラという少女が時間通りに戻ってこないというのは珍しいことである。
とはいえ、三人ともマドロラの事を心配はしていない。マドロラならば何か問題があったとしてもきちんと戻ってくると確信しているからである。
それからまたしばらくして、マドロラが戻ってきた。
「グレ、ジョエロワ、クシミール、お待たせしてすみません」
戻ってきたマドロラは、申し訳なさそうな表情を浮かべていた。
「マドロラ、おかえり。その後ろのは?」
そしてその後ろには、小さな茶髪の少女がいた。
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