第356話すれ違い

ハルジオンは東側の道を回りながら馬の繋がれた店へと向かう…逆にクリスは西側の道を通ってハルジオンの姿を探していた。


いないなぁ…


やっぱりいない…


二人の思いが交差する。


ハルジオンはクリスに会える事なく再び店に戻ってくると相変わらず馬はまだいた。


「ただいま…やっぱりクリス様は帰って来てないのか…」


馬を撫でるともう一度話を聞きに店に行こうとすると…


バタンっ!


ちょうど中から人が出てきた、その人はクリス様を見たと教えてくれた可愛らしい女性のあの人だった。


「「あっ…」」


二人はお互いの顔を見合って固まると…


「すみませんけど…どいてもらえます?」


その人は私に気がつくと邪魔だと言うように顔をしかめた…店内でニコニコと教えてくれた時とはだいぶ印象が違っていた。


「あっ…すみません」


ハルジオンは慌てて道を開けて端によるとその女性が不機嫌そうに横を通り過ぎた。


そして立ち止まった…


どうしたんだろ?


少し心配になって様子を見ていると…


「何見てんのよ!」


ブルブルと拳を震わして振り向きながらこちらを睨みつけた。


え?私?


ハルジオンは他に人がいないかと周りをキョロキョロと見回すがいるのはハルジオンと睨みつける女性と馬が1頭だけ、どう見ても自分に言っているようだった。


「すみません、先程話を聞いた方だったのでまた話せないかと見てしまいました」


ハルジオンが素直に謝るとますます気に入らないと顔を顰めた。


「あなたと話す事なんて何も無いわ!」


「そ、そうですか…」


ハルジオンは話を聞くのは諦めてお店の人に聞こうと店に入ろうとすると


「ねぇ何処に行く気?」


今度は向こうから話しかけてきた。


「え?えっと…また店の中を探そうかと…」


話しかけるなと言われたのに向こうから話しかけてきて戸惑っていると今度はズカズカと近づいてくる。


その迫力に後ずさりすると店の壁に阻まれた。


「私そこには居ないって言いましたよね?私が教えたのに信じないでまた探す気?あなた性格悪いわね~」


クスッとバカにしたように笑われた。


「だいたい相手も相手よね!あなたみたいな人何処がいいのかしら?どう見てもちんちくりんだし、色気なんて無いし、私が男なら絶対にごめんだわ」


ハルジオンを上から下まで見つめると鼻で笑う。


「私の事はなんとでも言っていいですけど…クリス様の事を悪くいうのは許せません!」


ハルジオンはキッと目の前の女性を睨みつけた!


「何よその生意気な顔…本当にいい加減にしてくれない!あなたさへいなけりゃ!…そうよ…あなたさへいなければ…クリス様は私を見てくれたのに…」


イブのつぶやきにハルジオンはようやく自分が騙された事に気がついた。

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