第351話遭遇

「あれ?ハルジオンちゃん…一人?」


ハルジオンが町をキョロキョロとしながら歩いているともう顔なじみのお店のおばさんが話しかけてきた。


「はい、そうだ!クリス様を見ませんでした?」


「見た…けど、あれ?一緒に歩いてたのハルジオンちゃんじゃなかったんだ」


顔をしかめて考え込んでいる。


「どういうことですか?」


「あっ…いやさっきねクリス様が歩いていくの見て、女の子と歩いている風だったからハルジオンちゃんかと思ってたよ」


「女の子…」


「あっわかんないよ!こう遠くからチラッと見ただけだからね!」


「そうですか…どっちに行ったかわかりますか?」


「えっと…向こうだけど」


おばさんはクリス様が歩いていった方を指さした。


「ありがとうございます!私行ってみますね」


ハルジオンはおばさんにお礼を言って言われた方に向かった。


少し行くと一軒のお店の前にクリス様の馬が繋がれていた。


「あっ!」


ハルジオンが駆け寄ると馬はハルジオンがわかったのかハルジオンの髪をハムハムと噛み付く。


「うふふ、お腹すいてるのかな?厩舎に戻ったらご飯あげるからね」


ハルジオンは笑って馬を撫でると…


「お前のご主人様はこの中かな?」


店を見つめた。


そこは最近出来たばかりの飯所だった、話には聞いていたがまだ行ったことのない店だった。


カランッ!


扉を開くと鈴の音がなり店の店員がこちらを向く。


「いらっしゃいませ!おひとりですか?」


「あっすみませんお客ではなく人を探していて…」


「人、ですか?待ち合わせとか?」


「いえ、えっと…クリス様ってわかりますか?ここの領主の…」


「ああ、はい!領主様にはご挨拶に伺いましたがクリス様は話だけで直接伺った事はないんですよ…」


店員さんが申し訳なさそうに眉を下げた。


「店長なら知ってるかな?」


店員さんが店長に聞きに行こうとすると…


「すみません…話が聞こえて…クリス…様をお探しとか?」


店員さんと話していると一人の女性が話しかけてきた。


可愛い顔で歳は自分と同じくらい、格好を見るが町で見かけたことがない、旅商人かな?


ハルジオンは女性を見ると


「何かご存知ですか?」


「えっと……あなたはクリス様とどのようなご関係が?一応クリス様は領主のご子息ですから身元も分からない方にお話する訳には…」


怪しみながらジロっと全身を見られた。


「これはすみません!私、クリス様のお屋敷でメイドをしております、ハルジオンと申します」


「ハルジオン…さん…メイド…」


ふーんと私の格好を見て納得したようで頷く。


「それでクリス様の事をご存知で?えっと…お名前は?」


ハルジオンが聞くと


「イブ…と申します。旅商人の娘ですがそろそろ拠点の町を作ろうかとしております。その場所をタウンゼントにしようかと悩んでおります」


イブさんはニッコリと笑って顔をあげた。

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