第299話笑顔

ハルジオンはお肉屋さんでお肉を頼むと後で取りに来るからと取り置きしてもらいカイル様の様子を見に行った。


でも、カイル様の用事が何か知らないんだよね…何処に行ったんだろ


とりあえず武器やとかかな…と目星を付けて向かっていると変な人集りが出来ていた。


「まさか…」


ハルジオンはその人集りに近づくと…ほとんどが女性だった!数人男も混じっているが…それは無視しよう。


「あっ!肉屋のお姉さんもいる!」


って事はここにカイル様がいるって事?


お店を見るとそこは…


「宝石店…」


カイル様が宝石店に用事?


様子を覗き込もうとしても前にいるお姉様方で伺えない。


しかし時折ため息や叫び声が上がる…どうやらカイル様が笑ったり微笑んだりしているようだった。


用事を終えて出てくるとカイル様の元に女性達が詰め寄った!


「カイル様!今日はどのような用事でここに?」


「この後お暇ですか?よかったらお茶でも…」


「うちの店に寄りませんか?美味しいお菓子用意してますから!」


「カイル様!また打ち合いお願いします…出来れば二人で…」


一気にみんながまくし立てた。


「ありがとう、でもこの後は用事があるから遠慮するよ」


「ボブ、打ち合いはまた今度な!」


カイル様は軽く笑うと打ち合いを頼んでたボブさんの肩を叩いてこちらに向かってきた。


カイル様の顔にみんなは嬉しそうに頬を染めたが…私は首を傾げた。


え?アレで笑ってるの?


みんなが満足そうに見たカイル様の笑顔はローズ様に見せる笑顔の半分も笑っていない。


カイル様はそんなボケっとした私を見つけると


「あれ?ハルジオンこっちまで来たのか?今向かおうとしてたのに」


駆け寄ってきた。


「あっ!ちょっと時間が出来たので探しに…カイル様の用事は済みましたか?」


「ああ…」


カイル様が幸せそうに笑うと…


ザワザワ!


女性達が騒ぎ出した!


「な、なにあの顔!凄いんですけど!アレで三日は空腹凌げるわ!」


「あんな顔で見つめて欲しい~」


「あれは…ハルジオンさん!」


みんなが私に気がついた…いやな予感…


お姉さん達はドタドタと凄い勢いでこちらにかけてきた!


「カイル様!少しハルジオンさんお借りします!」


私は両腕を掴まれるとお姉さん達に攫われた…


「はい!ここに座って!」


私は広場のベンチに連れていかれる…お姉さん達に両腕を掴まれ足は宙ぶらりん…やっと降ろされた。


「誰か!ハルジオンさんにお茶を!」


「ついでにお菓子も!」


そう言うとみんなが散らばってすぐに戻ってきた…


「あれ?なんか歓迎されてる?」


てっきり怒られたりするのかと思っていた私は拍子抜けした。


「ハルジオンさん!カイル様のあの笑顔!とうやって引き出したの!?」


「笑顔?あーあれは…なんででしょう?私も分かりません」


そういやなんであそこで微笑んだんだ?

確かなんの用事か聞いて…急に…


その時スチュアートさんの言葉を思い出す。


ローズ様に向ける時だけ凄い笑顔…って事はあの時ローズ様の事を思っていたと…宝石店…


「あっ!まさか!」


私は口を押さえた!


「なに?なにかわかったの?」


「あっ…えっと…カイル様の笑顔ですが、あれはローズ様限定でおきるみたいです」


「ローズ様の?」


「はい…あの皆さんカイル様とローズ様が婚約者だって事は…」


恐る恐る聞くと


「もちろん知ってるわよー」


「ねー!すっごいお似合い!私達ローズ様大好きだもの!ローズ様ならカイル様の相手に相応しいと思ってるわ!」


「え?な、ならなんで皆さんカイル様を…」


「それとこれとは別よ!ただのファンだもの!別にカイル様とどうなりたいって思ってないのよ!」


「うそ!あわよくば食事くらいしたいと思ってるでしょ!」


「そりゃあそんなの出来たらいいけど…」


ニヤッと笑っている。


「えー?皆さんただのファンなんですか!?」


私は意外な答えに唖然としてしまった。

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