第272話研究者

「なんですか?そんな風に笑って…」


ダンテ先生が二人を見ると


「実は今からあの実を食べるんです、そしたら怪我がすぐに治るかも知れません」


ローズ達が笑って言うと


「えっ…あの実とはローズさんがこの度見つけた大樹の実ですか?」


「はい!あの後バルトがまた見つけて…そのうちの一つを検証がてら食べていいと…」


「そうなのですか…あっ、だからここに?」


「そうなんです」


「それは…私も興味がありますね…」


ダンテ先生がローズの怪我を見ると


「ではどの程度治るのか今の状態を見せて下さいね」


ダンテ先生がローズの怪我を診察する。


「ここはどうですか?痛いですか?」


ダンテ先生が触りながら確認してくるのをローズが答えると


「やはり…あの一撃でかなり無理をしましたね…折れたりヒビはありませんがかなり腫れています…靭帯の損傷が酷いですね。これでは立つのも辛いでしょう」


ダンテ先生が心配そうにローズを見ると


「でも父が抱き上げて運んでくれましたから無理はしてませんよ」


「チャート様が?王子達ではなく?」


「やだなダンテ先生、王子達が私を抱いて運ぶなんて……あれ?」


ローズが首を捻った。


「まぁ…それはじっくりとご自分で思い出して下さいね」


ダンテ先生が苦笑する。


後ろではチャートがハラハラしながら様子を伺っていた。


ローズの足の具合を見ているとバタバタと騒々しい足音が近づいてきた。


「ん…誰か来ましたね」


ダンテ先生が扉に近づくと…


「実を見つけてきたと聞いたけど!!まだ食べてないよね!」


扉を開くなりそう叫んで飛び込んでくる人がいた。


「だ、誰…」


ローズの前に立つ父親から顔を覗き込むと…そこには見知らぬ白衣をきた男の人がいた。


「スミス…少し落ち着いて下さい」


ダンテ先生がその人に話しかける。


ローズとチャートが伺うようにその人を見ていると…


「ああ!君があの実を見つけたと言う子だね!僕はスミス!あの実の研究を任されてます」


ずんずんと近づいて来ると…チャートが行く手を阻んだ。


「何か?」


スミスが驚いてチャートを見ると


「この子は私の娘だ、むやみに近づかないで頂きたい」


チャートがスミスを睨みつけると


「あっ!あなたも知ってます!確か…タウンゼント男爵!その体…どうなっているのか興味あったんです…」


ジロジロとチャートを上から下まで眺めると…


「ちょっと触っていいですか?」


手を近づける。


「断る!」


チャートはゾワッと鳥肌が立ち一歩下がった!


「残念…いつかその体…研究させて下さいね、あの力や剣筋がどうなっているのかずっと興味あったんです」


ニコニコと笑っていると…


「ダ、ダンテ先生…こいつはなんなんだ!」


チャートが恐ろしいそうにスミスを見つめる。


「その方は王宮専属の研究部門の責任者のスミスです…少し変わり者ですがその頭脳は一級品です」


「どこが少しだ…超変わり者だろ…」


チャートは嫌そうにスミスを見るがスミスはそんな視線に構うことなくローズを見ている。


「その怪我…って事はまだ実は食べてませんね。よかった…じゃあこれからその検証ですね!」


なんだかウキウキとしている。


「ちょっと怪我の様子見てもいいですか?」


そう言うと返事も待たずにローズの足を触ろうとする。


「やめろ」


チャートがガシッとその手を掴むと…


「おお!凄い力だ!どのように鍛えればそんな力が出るのか…うーんその肩の筋肉…気になるなぁ…」


チャートの手をスっと触ると、チャートが思わずその手を離した。


「スミスさん、患者さんに触るのは遠慮してください。私がちゃんと確認しました、こちらに診断書がありますからそこで確認を…」


ダンテ先生がローズの診断書をスミスに渡した。

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