第126話媚薬
ローズは近づくカイルに驚いて思わず目を瞑る!
キスされる!?
そう思い逃げ場もなくギュッと目を閉じているがカイルが何かする気配はない、すると…
「何してるんですか?」
スチュアートさんの声がしたと思うとふっと体が軽くなる。
ローズはそっと目を開くとカイルを片手で持ち上げる不機嫌そうなスチュアートさんが目に入った。
スチュアートさんはカイルを持ち上げると壁に叩きつけた。
「大丈夫ですか?ローズ様」
唖然とするローズに手を差し出して抱き起こしてくれる。
「だ、大丈夫ですけど…カイル様が…」
ドンッ!と激しく壁に叩きつけられたカイルは起きることなく床にぐったりと横になっている。
「嫌がる女性を襲う輩などあれで十分です。カイル様の事は見損ないました」
まだ怒りが収まらない様子のスチュアートさんがカイルを睨むと
「違うんです!カイル様熱があるみたいで倒れ込んじゃっただけなんですよ!」
ローズが慌ててカイルに駆け寄って抱き起こそうとすると…
「うっ…ローズ…や…めろ…離れ…て」
離れろと言いながらローズの肩を掴んで抱き寄せようとしている。
「ん?何か変ですね…」
スチュアートさんがローズをカイルから引き剥がすとカイルの顔を触る…するとビクッと熱っぽくスチュアートさんを見つめた。
ローズはカイル様の視線に思わず顔を赤くする。
「な、なんか…カイル様変ですよね?」
「これは…何か薬を盛られましたね」
スチュアートさんはしょうがないとカイルを抱き起こすと
「ちょっと医務室に運んで来ます。ローズ様はもう誰も部屋に入れないように」
「は、はい」
「クレアさんはどうしました?」
「あっ今ちょうど他のメイドさんに呼ばれて出ていってしまってて…でもすぐに戻ると言ってました」
「わかりました」
スチュアートさんはなら大丈夫だとカイルを運ぼうと部屋を出ようとすると
「カイル様…大丈夫ですか?」
心配そうにスチュアートさんに聞く。
「大丈夫ですよ。薬が抜ければすぐに元に戻りますよ」
「薬って…毒か何かですか?」
ローズの不安そうな顔にスチュアートは笑って答える。
「この反応は媚薬かと…ですから命の危険はありませんよ」
「媚薬!?」
「ローズ様が無事でよかったです。では…」
スチュアートはしっかりと扉を閉めると部屋を出ていった…
途中廊下でちょうどクレアさんと行き合うと、事情を説明する。
「私はカイル様を医務室に連れて行きますので…」
「わかりました!私はすぐにローズ様の元に!」
クレアさんはスチュアートさんの言葉を遮ると凄まじい速さで歩いて部屋へと向かっていった。
スチュアートは苦笑しながら医務室にカイルを運ぶと
「カイル様!?どうされたのですか?」
ダンテさんがぐったりとしているカイルに驚いて駆け寄ると寄り添い二人でカイルをベッドに寝かせる。
「どうやら媚薬を盛られたようです」
「媚薬?まさか…」
先程のジュリア嬢達とのやり取りを思い出す。
ダンテがスチュアートに説明すると…
「仮にも公爵家のご子息にとんでも無いことをしてくれましたね…しかもそのままローズ様が襲われでもしてたら…」
「えっ?」
「いえ…その事は他に知っている者は?」
「いえ…私だけかと」
「わかりました…ダンテさん申し訳ありませんがこの事はしばらく内緒にしておいて下さい」
「えっ!いいのですか?言えばアンダーソン令嬢は婚約者候補から外れるのでは?」
「そうですがそれだけでは証拠は不十分です…もっと情報を集めてからでも…」
スチュアートがニコッと笑うが…ダンテはその雰囲気に笑い返す事など出来なかった…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます