第123話気持ち

「カ、カイル様?」


あきらかに不機嫌なカイルの様子にリプスは血の気が引くと…


「俺はあの令嬢の所にいく…リプスはローズを部屋までお送りしろ」


「は、はい!」


リプスが慌ててローズを追いかけようと走り出すと


「いいか…絶対に手を出すなよ…」


「えっ…」


地を這うような声にリプスはビクッと振り返るがカイルはもう既に後ろを向いて走り出していた…


リプスは全身がゾクゾクとする悪寒に襲われながら必死にローズの後を追った!


「ローズ様!」


先を歩くローズを見つけると慌てて声をかける!


ローズが振り返ると


「部屋までお送りします」


リプスがローズから三歩離れた場所から頭を下げた。


「ふふ…ありがとうございます。でもなんでそんなに離れているんですか?」


ローズが不自然に距離を取るリプスに笑いかけると


「い、いえこれは…ローズ様や他のご令嬢に触れないように…」


先程向けられたジュリアの視線を思い出す…自分を汚い物でも見るかの様な視線がトラウマになっていた…


「でもそんなに離れていたらいざと言う時守れませんよ?」


ローズがクスクスと笑うとリプスに一歩近づく。


「い、いけません!近づいたら叱られます」


「誰に?」


ローズが聞くと


「カ、カイル様?」


「なんでカイル様がそんな事で叱るの?おかしくないですか?」


「それだけローズ様を心配しているのだと思います。カイル様が笑顔を見せるのはローズ様だけですから」


話しやすいローズに思わずリプスが余計な事を話してしまうと


「そうなんだ…」


ローズは先程の真剣な顔で見つめられたことを思い出す…


「ローズ様?大丈夫ですか?顔が赤いですが…」


リプスが心配そうに下がって見ていると


「えっ…」


火照った頬を触る。


「だ、大丈夫!さぁ行きましょ!」


ローズは誤魔化す様に進むとまた一歩リプスに近づいた。


「だ、だから駄目ですよ!」


リプスが離れようとすると


「私が近づいたんだから大丈夫です!怒られたらそう言って下さい!それにカイル様の方がよっぽど近くにくるわ…」


ボソッとつぶやくと…


「なんですか?」


リプスがチラッとローズの顔を覗く…


「なんでもないわ!行きましょ」


リプスにニコッと笑いかけると二人で部屋へと向かった。


リプスはローズ様に触れないように細心の注意を払いながら部屋へと送ると…ほっと息をついた。


その様子にローズは思わず吹き出す!


「リプスさん緊張しすぎですよ!私は位の高い令嬢じゃありませんからそんなに緊張しないで下さい」


「ですが…」


「あっ!そうだちょっとまってて下さい」


ローズは急いで部屋に戻ると、袋を持って戻ってきた。


「ここまで送って頂いたお礼です。いつも国の為に守っていただきありがとうございます」


クッキーの袋を二つ持ってくると


「これは…」


二個あることに戸惑うと


「一つはカイル様に、そうすればリプスさんのこと怒れないですよね」


「ありがとうございます!」


リプスは嬉しそうに袋を握りしめると


「ローズ様の護衛ならいつでも喜んで致しますので声をかけて下さい!」


リプスはローズの顔をしっかりと見て笑顔で戻って行った。

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