第116話キャシーの休息
「疲れているところごめんね」
私は嬉しさのあまり疲れなど忘れて立ち上がると
「全然大丈夫よ!どうしたの?」
ローズに駆け寄る。
「これよかったらキャシーにと思って…」
ローズの手には手作りのお菓子が袋に詰められて握られていた。
「私に?」
「うん、キャシー今日がお茶でしょ?ホスト役はあんまり食べられないと思って。疲れたら甘い物が欲しくならない?」
いたずらっ子の様に笑いかけられる。
「もう…」
私は苦笑する。
「ローズだって自分のお茶会の準備で大変でしょ?」
「でも休息は必要よ!」
可愛らしくウインクされる。
「ローズありがとう…ねぇよかったら少し一緒に食べない?」
「えっ?今から?」
「うん!今から!」
私が笑いかけると
「いいわね!」
ローズが嬉しそうに部屋に入ってきた。
ローズにお茶を入れてもらい二人っきりのお茶会をする…隣には気の許せる大好きなローズ、お菓子は今度お茶会で出すと言うクッキーを持ってきてくれていた。
「ローズ、嬉しいけど対戦相手に手の内を見せちゃ駄目よ」
私が苦笑すると
「大丈夫よ、だってキャシーだもの」
ローズはなんの心配もないと笑ってお菓子を口に放り込む。
ローズの信頼しきった何気ない態度が冷めきった令嬢としての心を溶かしていく…
「ありがとう…ローズ」
「えっ?あっお菓子のお礼?そんなの私の方がキャシーにたくさん色々なものをもらってるもの…こんなお返ししか出来なくてごめんね」
「ううん、私もたくさんローズから色んなものをもらっているわ…それこそ返せないほど…」
「そう?何かあげたっけ?」
ローズが思い出そうとうーんと考えている姿にクスクスとお腹から笑いが込み上げる。
「これからもずっとローズと一緒にいたいわ…」
ボソッと本音が飛び出ると
「何言ってるの?当たり前でしょ」
ローズが笑って私を見つめるとそっと手を掴んだ。
「ここに今入れるのはキャシーのおかげだよ。これからもずっと友達でいてね」
ローズに嬉しい言葉と笑顔をもらって私は今日のお茶会のことなど綺麗さっぱり忘れる事ができた。
あまり引き止めてもと思いローズを返す、ローズはローズでまだようがあるようで何やら荷物を持って出ていった。
ローズが帰って行って一人部屋でボーっとしていると…また扉をノックする音がする。
「キャシー様?」
外からはロンの声が聞こえた。
「何?開いてるわよ」
開けるのも面倒で声をかけると
「大丈夫ですか?まだ明かりがついていたようなので…」
心配そうにロンが声をかけてきた。
「いえ、ちょっとお茶を飲んでたの。もう寝るわ」
私が下がっていいわよと手をあげようと思い留まる。
そんなの私の様子にロンが戸惑っていると
「今日はありがとう、あなたのおかげでお茶会も上手くいったわ。いつも一応感謝してるわ」
「キャ、キャシー様?」
ロンが驚いて固まっていると
「さぁもう出ていって。休むから」
いつもの様にサッとあしらうとロンが魔法でも解けたかかの様に表情を変える。
「ごゆっくりおやすみください」
ロンは笑って部屋の明かりを落とすと音を立てずに扉を閉めた。
キャシーは心地よい気持ちのなかベッドへと横になった。
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