第115話キャシーのお茶会

「はぁ…」


キャシーは扇で顔を隠しながらため息をついた。


(ああ…つまらない)


キャシーは只今絶賛お茶会の真っ最中だった…


ロンが国中から集めた豪華なお菓子に高級な茶葉を何十種と用意して、この日の為に特注で作った食器を並べよりすぐりの見た事もないメイドと執事達…


会は滞りなく進行している、たわいない会話にあからさまなお世辞の嵐。


いつもより少し豪華なお茶会だった。


(これじゃあロンのお茶会ね…まぁ私はなんでもいいけど)


チラッと客達を見るとロイ王子が目に入った執事が取り分けた果物を見つめている。


ロイがこだわって集めた新鮮な果物だった。


王子はじっと見つめて一口で果実を食べると何やら思案顔している、それに気がついたカイルが隣でそっと話しかけると二人で顔を見合わせ軽く笑う。


何か果実を食べて思い出した事でもあったのだろう。


ロンをみると平然な顔をしていた…しかし目線を下にして手を見ると悔しそうにギュッと手を握りしめている。


ふふふ…ザマアミロ…


「キャシー様この紅茶は香りが本当にいいですね。何処の紅茶かしら」


唐突に話しかけられた。


あれは今回の婚約者決めに知り合いの子が出てる大臣の奥様だったかな?


チラッと飲んでいる茶葉を確認する。


メイドが後ろでどのお茶か缶を客から見えない様に持っていた。


「それは、リチレール産のルコルの茶葉ですね。奥様の言う通り香りが特長でこのお茶会にピッタリだと思い選びました」


サラサラと口から嘘が出る。


一度も飲んだ事のない茶葉の知識だけをペラペラと話すと、周りが感心する。


なんて事はない、いつも通りのお茶会だった。


「アイリック嬢は今まで飲んだ中でどのお茶が一番好きなのでしょう」


ロイ王子が声をかけてきた。


一番のお茶…そんなの決まってる。ローズと飲んだあのお茶だ…お茶の味や違いはわかるつもりだ、幼い頃からそういう教育を受けてきた。


でもあの時ローズと飲んだお茶何の変哲もないないお茶があの時はいつもより何倍も美味しく感じられた…


「そうですね…私は信頼出来る人と飲むお茶が一番好きです…ですからこのお茶が今は一番好きですね」


そう言ってまだ一度も口をつけていなかったお茶を一口飲んだ。


私の発言は好評だったらしくお茶会の客達は満足そうに帰って行った、ロンも機嫌がよく私を過剰に褒めながら片付けの指示をメイド達にしている。


「しかし最後のお言葉はキャシー様さすがでしたね!あれには皆さん感心してましたよ、キャシー様程の方ですとどこかの地方を特別視する訳には行きませんからね」


うんうんとロンが頷いている。


「別に本当の事を言っただけよ」


最後は嘘だけど…


ああ…美味しい紅茶が飲みたいわ…


優秀な人達のおかげで片付けもすぐに終わると…


「ロン、今日はもう疲れたからコレで休むわ」


私がソファーに休みながら声をかけると


「そうですね、ゆっくりお休み下さい。私達はこれで引き上げます。何かありましたらベルを鳴らして下さい」


わかったと手をあげるとロン達は頭を下げて部屋を出ていった。


はぁ…


今日何度目かのため息をつくと…トントントン扉をノックする音がする。


忘れ物かしら…


「どうぞ…」


声をかけると…


「キャシー…お疲れ様…」


ちょうど顔を見たいと思っていたローズが顔を出した。

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