第91話老体

「まぁ、そうならないようにバルトさん、よろしくお願いしますね」


「わかってる…」


「それと…ローズ様はなぜあそこに戻って来たのでしょうかね?私はバルトさんの事は任せて戻って欲しいとお願いしたはずですが?」


(あっ…やっぱり忘れてないよね…)


ローズはタラっと汗をかくと


「すみませんでした、軽率な行動だったと反省してます…でも体が勝手に動いていて…気がついたらバルトの前にいました」


「ローズ様がそういう方だとはわかりますが…あまりこの老体を心配させないで下さいね」


スチュアートが寂しそうに眉を下げると…


「ご老体?」


「おい…そんなのどこにいるんだ?」


ロイとカイルがコソッと囁き合う…


「すみませんでした…スチュアートさんに無理させてしまいました…本当にごめんなさい」


ローズが頭を下げる。


「ローズ様は本当に素直でいい子ですね…王子とカイル様、あとでじっくりと鍛錬して差し上げますから覚悟しておいて下さいね」


スチュアートはローズに微笑むとロイとカイルに目を向けた。


「げっ…この距離で聞こえたのかよ…どこが老人なんだよ」


「老人なんて言っておりませんが?」


「あっ…」


ロイがしまったと顔を逸らす…


「王子達の指導もしたいのですが…このあとは捕まえた男達の尋問がありますので…」


「えっ!スチュアートさんまた行ってしまうのですか?」


ローズが聞くと


「申し訳ございません…何か用がありましたか?」


「実はバルトが美味しい実がなってる所に案内してくれるそうでスチュアートさんを待っていたんです」


「そうでしたか…しかし、しばらくは一緒に行くのは難しそうですね」


スチュアートさんが顔を顰めると


「では私がお付き合い致しましょうか?」


カイルが声をかける。


「カイル様が?…どうでしょうかローズ様」


ローズは少し考えると


「もう時間も無いし…カイル様お願い出来ますか?」


ローズがカイルに向き合うと頭を下げる。


「ああ任せてくれ!しっかりとローズを守ろう」


カイルは嬉しそうに胸を叩くと…


「じゃあ俺も行こうかな」


ロイがカイルとローズの間に顔を出す。


「えっロイ様が?」


ローズが心配そうにスチュアートとクレアを見つめると


「まぁ…お二人で行くよりはいいですが…ロイ様近衛兵をおつけしますか?」


「はっ?いらないよカイルがいるしねそれに僕とローズにこの魔獣もいるし何とかなるだろ」


「…戦力としては十分でしょうか…」


「別に戦いに行くわけじゃないだろ?果物採取なんだから」


「しかし…先程まで侵入者がいましたから…」


少し心配そうにすると…


「なら、警備兵を見回りに出そう。俺達も見回りのついでに採取に行けばいいんじゃないか?」


「そうですね…ではそのように兵士達に声をかけておきます」


スチュアートは王子達に挨拶をすると部屋を出ていってしまった…


「忙しいそうですね…」


ローズが寂しそうに見送ると


「ほら、ローズはお茶会の準備もあるんだろ?さっさとその美味いっていう果物取りに行こう」


ロイが声をかけると…


「ではローズ様、またお着替えですね」


クレアさんが楽しそうに微笑んだ。

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