貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

第90話嫉妬

バルトを抱き上げてギュッと抱きしめると…バルトが仕方なさそうにローズの頬を舐める。

「「なっ！」」

「お、おい！お前！オスだよな！」

「ちょっとローズ…その魔物と話がある！貸してくれ！」

ロイとカイルがバルトを離そうとすると

「えっ…？あ…ああ！わかりますロイ様達もバルトの毛並みに触りたくなったんですね！」

ローズは笑うと

「バルトいい？」

「嫌だ！こいつらに抱かれるなんて…鳥肌が立つ！」

バルトがヒョイとローズの腕から逃れると

「ま、まぁそいつがローズを傷つける気がなさそうなのはわかりましたが…」

気に入らないとカイルがジロっとバルトを睨む。

その視線に嫉妬を感じたバルトは…ニヤッと笑うと…再びローズの肩にヒョイっと乗った…

ローズの柔らかい髪をくぐって顔に近づくと…

「安心しろ…人間。ローズは傷つけない恩人だからな、なんならずっと守ってやりたいと思っている…」

そう言って勝ち誇ったようにローズに頬ずりをすると…

「バルト、くすぐったいよ…」

ローズが嬉しそうにクスクスと笑う。

「なっ…」

「あいつ、わかってやってるな！なんて性格の悪い魔物だ！」

「てことだ安心してお前らは帰れ」

シッシッとバルトが前脚を振ると…

「コノヤロウ！」

「まて！やっぱり討伐してくれる！」

ロイとカイルがバルトを捕まえようと手を伸ばすとお互いがぶつかってしまう、その間にバルトは高い場所に避難すると…

「はぁ…」

欠伸をして丸まって寝てしまった…

「なんて性格の悪い魔物だ！」

「ローズ！あんなのすぐに手放せ！」

ギャーギャーと騒いでいると…

「ゴホン！」

扉の前にスチュアートが立っていた…

「あっ！スチュアートさんおかえりなさい！」

ローズが先程の笑顔でスチュアートさんに駆け寄る！

「どういうことでしょうか？私はカイル様にローズ様に少し遅れると言伝を頼んだはずですが？」

「あっ…いや…それよりもスチュアートさん！あの魔物はどういうことですか！」

「ん？ああバルトさんの事を言うのを忘れていました…」

スチュアートさんがうっかりと笑うと

「こんな性格が悪い魔物をそばに置いて大丈夫なのか？」

「性格が悪い？まぁ少しひねくれていますが…ローズ様を傷つけるような事は無いと思っていますが…」

スチュアートがローズとバルトを見ると、ローズがコクコクと勢いよく頷く。

「まぁバルトさんは私が責任を持って見ています…何かあれば…本人もよくわかっているでしょうから…ね…」

スチュアートがバルトに微笑むと、バルトはゾクッと毛が逆だった…。

「ふん…そんな脅しをかけなくてもする気なんて…無い」

「そういう事ですからね、バルトさんの事はおまかせ下さい。何かあればその時は私も一緒に処分される覚悟ですから」

「スチュアートさん…その時は私もお供しますね！」

ローズは爽やかに微笑んだ。