貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

第83話復讐

「な、なんだあいつは！」

ハンター達が速度を上げるが…差はどんどんと詰まってくる。

「不味い…追いつかれる！」

「た、助けて！」

仲間に手をのばすが…

「知るか！自分の事は自分で面倒みろ！」

先頭を走っていた男は仲間を見捨てて走り出した！

「屑ですね」

すぐ後ろで声がしたと思うと伸ばした手をそのままに男は意識を失った…

仲間を見捨ててどうにか逃げ出した男は…

ガサッ！

物音に警戒してサッと身を隠す…

しかし先程の男が追ってきている様子は無かった…

ガササッ！

物音が頭の上からするとバッ！と男が上を見る！

すると何かが顔目掛けて落ちてきた！

「ぎゃぁ！」

顔に痛みが走った！

思わず手で覆うと生暖かい液体が流れる…

「目、目が！」

(ふん…いい気味だ…仲間を置いて逃げるなど最低の奴だな…)

バルトはスタッと着地すると爪を舐める。

「クソ！カーバンクルか！」

ハンターは目をやられてめちゃくちゃに剣を振り回す！

バルトは男の間合いに気をつけて後ろに回り込むと

ダンッ！

勢いよく踏み込み男の背中に噛み付く！

「ギャー！クソ！クソ！」

(仲間が殺られた仇だ！)

バルトは少しずつ男の体を牙と爪で傷つけていく…周りには男の血で地面が汚れていた…

「はぁ、はぁ…もうひとおもいにやれ！」

男は剣を投げ捨てた…

バルトはニヤッと笑うと男の首元目掛けて飛びかかった！

「駄目ー！」

横から馬の蹄の音と共に叫びながらローズが飛び出してきた！

「ロ、ローズ!?」

バルトはローズに気がつくが飛び出した身体は止められずローズにぶつかる！

「きゃぁ！」

ローズがバルトに体当たりされて地面に転がる！

バルトが慌てて駆け寄ると…

「ローズ！なんでこんな所に！」

「バルト！よかった…無事で！」

ローズはバルトの言葉を無視してバルトに抱きつく！

「もう！急にいなくなるんだもん！心配したんだから！しかも駆けつけたら男の人に襲いかかってるし！」

ローズが叫ぶと

「だ、だれだ！」

傷だらけの男が剣を片手に立ち上がる！

目に付いた血を拭き取り…どうにか周りが少し見えているようだった…

「お、お前は誰だ…お、男？な、なぁ頼みがある…金ならいくらでもやる！だからそこの獣を殺してくれ！俺はそいつに襲われたんだ！」

「えっ…」

ローズが周りを確認するがいるのは傷だらけの男とバルトとローズだけだった…

ローズは自分の格好を思い出すと…

(この人…私を何処かの男の人と勘違いしてるんだ…)

何も答えないローズに男が続ける！

「その獣を殺してくれればいくらでも金が手に入るんだ！もう何匹か捕まえてそいつが最後の一匹なんだ！」

ピクッ…

バルトは男の言葉に牙を剥いた！