第46話 ご当地アイドルさんは暇人と遊びたい。03
電車で2駅、さらに少し歩くと横浜中華街が見えてくる。
「わぁ、ここが横浜中華街ですか」
横浜中華街。中華料理店、土産物屋などが立ち並ぶ日本3大中華街の一つだ。
「閑原さんっ、写真お願いしまーす」
煌びやかな門の前で恋川にスマホを渡され、写真撮って欲しいとねだられたので、仕方なく撮ってやった。
「私のプライベート写真撮れるとか、閑原さん幸せ者ですねー」
「……いや、どうでもいいけど」
「もー、すぐそうやってー。わたし、デート記録とか残したくないので普段は写真NGなんですよ?」
「へー。……やっぱどうでもいい」
俺は、恋川にスマホを返した。
すると突然恋川は俺の腕を引っ張って自分に寄せると、スマホの内カメラで自撮りした。
さらに恋川はわざと俺の腕をそのたわわな胸でサンドイッチしながら、もう一枚自撮りをする。
「これで、よしっと。菜子ちゃんにこのツーショットの自撮り写真を送られたくなかったら私にデレてもらえます?」
「お前、マジで容赦ないな」
「これもテクニックです」
やっぱこいつ面倒くせぇ上に、うぜえ。
でも、こいつとのツーショットを桜咲に送られるのは困るな。
「……で? デレるって?」
仕方なくその要求を呑むことにした。
「とりあえず私のこと褒めてください」
「……お前もか。なぁ、お前らってアイドルなのになんでそんな可愛い可愛い言って欲しいんだ? いつもファンからチヤホヤされてるだろ」
「そ、そりゃ……ファンに言われるのと、言われたい人に言ってもらうのとは違うからじゃないですか……?」
「へぇ、そういうもんなのかねぇ」
「とにかく! 早く褒めてくださいー!」
恋川は俺を揺らし、急かしてくる。
あー、早くメシに行きたいのに。
仕方ない、端的に済ませよう。
「胸がデカい、そしてエロい」
「うわっ、最低」
最高の褒め言葉を貰っちまったな。
「もういいです! やっぱり閑原さんはつまんない人で」
「お前は可愛いっていうか普通に美人だし、俺はツインテより流した方が落ち着いてていいと思うが」
恋川は鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をする。
「今、デレました?」
「…………」
「へぇ、閑原さんって私のこと……ふーん」
「はぁ……ほらもう満足か?」
「……あ、じゃあ。ヘアゴム取ってもらえます?」
「え?」
「いいから取ってください!」
俺は恋川に言われて彼女の髪を束ねていた二つのヘアゴムを外した。
ゴムを外すと、その長い髪が一つになる。
ストレートヘアの恋川は見た目も大人びて、妖麗な雰囲気を醸し出していた。
「どうですか? ストレートにするとなんだか見た目が落ち着いちゃって。だからいつもツインテにするんですけど」
「……まぁ、それなりに綺麗だと思う」
「ふーん」
恋川は含み笑いを浮かべる。
こいつに揶揄われるのはやっぱ無性に腹立つな。
「なぁもう、いいだろ。さっさと行くぞ」
「はーい」
その後も店に着くまで恋川にいじり倒された。
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