第44話 ご当地アイドルさんは暇人と遊びたい。01

 

『それでねそれでねー! 美優ちゃんがねー』


 あれから夜の電話には恋川の話も増え、娘に友達ができてそれを聞いてあげる父親の気持ちになりながら、その話を聞いていた。


 それにしても俺の青春はどうかしてる。


 現役JKアイドル桜咲菜子だけじゃなくてご当地アイドルの恋川美優……。

 俺はアイドルに振り回される運命なのか。


『じゃあ、閑原くんおやすみー』

「あぁ、おやすみ」


 電話が終わると俺はベッドに身を投げて、天井を見上げていた。


 多分、このままだと俺の身が持たない。

 あの衝撃の昼休みから何日か経った。

 俺は周りの目を気にしながらも日常生活過ごしていた……のだが。


「閑原さんっ」


 俺の前に突然現れた恋川は、笑顔だった。

 嫌な予感。


「あのー、日曜って暇ですか?」


 昼休み、学食の前で俺を待ち構えていた恋川は上目遣いでそう聞いてきた。


「……寝る」

「暇ですよねー?」


 自称暇人がここに来てマイナスに働いてやがる。


「俺はこれ以上炎上の種を撒きたくないし、そこら辺の男子と違って俺はお前に興味がない」

「菜子ちゃん一筋ですもんねー?」

「……だから、そういうことじゃ」

「じゃあ、わたしと遊んでください」


 恋川は巧みな話術で、強引に自分の土俵へ持っていこうとする。

 こういう女子、苦手だ。


「日曜、駅前で待ってますから」

「あ、ちょ」


 有無を言わせず、恋川はどっかへ行ってしまった。

 こうやって男たちを取っ替え引っ替えしてんだろうなぁ。


 ……今日は金曜日。

 俺の方から声をかけるわけにはいかないし、今日は桜咲がいないから桜咲を介して恋川と会うこともできない。


 つまり、俺は断る術を失ったと言える。


 あの清楚系ビッチ……。


「はぁ……」


 仕方ない……とりあえず日曜の予定立てとくか。


 ✳︎✳︎


 そして迎えた日曜。


「閑原さん、一つ聞いてもいいですか?」


 恋川はネイビーシャツワンピの一番上のボタンを一つ外しながら、手で顔を扇いだ。


「なんだ?」

「閑原さんって本当に女の子とデートしたことあります?」

「デートは無いな。幼馴染とバイキングや早食いの店行ったり、JKアイドルを色んなとこに案内したことくらいならあるけど」

「そこら辺の男子高校生の口から出る経験じゃないですよねそれ」


 燦々と照りつける太陽の下、よせては返す波を見ながら、俺は溜息をつく。


「……なにか文句でもあるか? お前がどっか連れてって欲しいって言うからここに来たんだが」

「確かに言いましたけど……!」


 潮風に吹かれながら、夏の陽気で汗を滲ませた。


 そう、俺たちは今……


「なんでよりによって"釣り"なんですか⁈」


 海釣りをしている。

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