第31話 JKアイドルさんは海鮮に興味があるらしい。01

 

「あ、閑原くん! 今日はお寝坊さんだったね?」

「いや、まだ待ち合わせの1時間前なんだが」


 先週、桜咲のライブが終わりやっと桜咲が休みを取れたので、俺と桜咲は約束通り海鮮を食べに行くことになった。


 桜咲は前と同じように髪型を変え(今回はポニーテール)、さらにいつもの伊達眼鏡をかけて変装していた。


「今日は、ジャンスカだから、ちょっと幼く見えるかな? あ、でも! ラズホイの先輩が閑原くんはきっと、ロリ? が好物だからむしろ喜ぶって」

「は⁈ 俺、ラズベリーホイップのメンバーからロ●コンだと思われてんのか⁈」

「どう? 可愛い?」

「可愛いどうこう言う前にその誤解どうにかしろ!」

「えー? それって良いことなんじゃないの?」

「無知とは怖い……」


 まぁ、桜咲の隣にいたらそう思われてもおかしくないのかもな。

 はぁ……。


「ちょ、ちょっと閑原くん! ポニーテールで遊ばないでよ!」


 俺が八つ当たりでポニーテールをいじくり回していると桜咲が口を尖らせて怒る。


「今日の閑原くんは積極的だなぁ、もう」

「気持ち的には既に意気消沈なのだが」


 俺がロ●コン……とりあえず今だけは忘れるとしよう。


「それで? 今日はどこに連れてってくれるのかな?」

「あぁ、今日行くのは……豊洲市場だ」


 ✳︎✳︎


『豊洲市場』の看板の前で、桜咲の自撮りに付き合わされる。


「ほら、閑原くんもこっち向いてー」

「はいはい」


 それが終わったら早速、豊洲市場に入る。

 天気も良好で、外国人観光客も多く来ていた。


「ここって、築地? から移転してきたんだっけ」

「そう、昨年からここ豊洲に移転された。この豊洲市場は今歩いてるこの連絡通路を介して4つの棟が繋がってるんだ」

「へぇ、じゃあここでお魚の取り引きが見れるの?」

「あぁ。競り自体は早朝に来ないと見れないけど、この先にある水産卸売場棟に入ると……」


 見学者が競りを窓越しに見えるように作られたデッキから、競りの会場が一望出来た。


「会場は見ることができる」

「凄い広い! それになんか生臭いというか。あ、閑原くんこれは?」


 桜咲は手やりの解説が記されたボードを指差した。


「これは手やりと言って。競りを行う際に、買う量とか品の値段とかを売り手に伝えるためにあるんだ」

「へー! ハンドシグナルみたいなものなのかな。あ、じゃあ閑原くんちょっと見てて」

「?」


 桜咲は看板の見様見真似で手やりで何かを伝えようとしてくる。


 えっと……8、1、5?


「……ん?」


 815……なんのことだ?


「閑原くん、楽しみにしてるからっ」

「???」


 マジで意味がわからんのだが。


「えへへ……」


 ✳︎✳︎

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