第24話 JKアイドルさんは食べ歩きに興味があるらしい。02
ズラリと並んだ多種多様な店。
食べ歩きを目的とした惣菜店だけでく、観光客向けのお土産売り場や、雑貨店などもこの通りで店を構えていた。
「閑原くんっ、メンチカツメンチカツっ」
「分かったから落ち着け。あの、メンチカツ2つ」
「はいよっ。400円ね」
陽気な店主は手際良く小さな耐油紙にジューシーで熱々のメンチカツを包み込んだ。
「ほいっ、メンチカツ」
それぞれ一つづつ受け取って、歩きながらそれを食す。
狐色の衣が気持ち良いほどサクッとしているけど薄く、くどくならない。
中はギッシリと詰まった牛肉が完全に支配しており、一口食べたらすぐにもう一口行きたくなる美味しさだ。
「美味しいな、桜咲」
一心不乱にメンチカツを頬張る桜咲。
なんかリスみたいだな。
俺はふと店の隣にあった芸能人たちの写真に目が留まった。
「芸能人も結構来てるそうだけど、この中で共演とかしたことある芸能人ってどれくらいいるんだ?」
「えーっとぉ、覚えてるのはこのシンガーソングライターの人と、この芸人さんっ。芸人さんの方はわたしのことちびっ子って言ってきたから嫌いっ」
「まぁまぁ、小さいのは桜咲のストロングポイントなんだから気にしなくていいだろ」
「……閑原くんは小さいほうが好きなの?」
「まぁ、どっちかというと……好きかもしれないが」
「へ、へぇ」
なんだこの空気。
「なぁ桜咲、甘いものでもどうだ?」
「甘いもの?」
「そこの焼きドーナツとか」
「うん! 焼きドーナツ大好き!」
俺は焼きドーナツを買って桜咲に渡す。
なんかあれだな、桜咲はとりあえず食べ物与えとけばいいな。
「焼きドーナツって脂っこくないから好きなんだー」
焼きドーナツって、文字通り油で揚げずに焼くから普通のより油分は少ないのかもな。
まぁ女子はそういうの気にするもんな。
客層もやはり女子高生が多かった。
「甘いもの食べたから塩気のあるもの食べたくなっちゃった」
「なんか無限ループしそうだな」
その後も魚介類の串揚げや、煎餅、饅頭など、桜咲は食べ歩きを堪能していた。
そこで、俺は一つ疑問を覚えた。
「お前って何も気にしないで食べるけど、太んないのか?」
「うん。太るどころかいつも痩せちゃって。ダンスの先生にも前にもっと食べろって言われちゃったし」
「マジかよ」
それ他の女子の前で言ったら嫉妬で呪われそうだな。
「そういえば前ネットでお前のプロフィール見たとき、お前の体重驚くほど軽かったな」
「へ⁈ 閑原くんわたしのプロフ見たの⁈」
「あ……いや」
「へぇ、閑原くんがわたしのプロフをねぇ」
「な、なんだよ。ネットに出てるんだし別に見てもいいだろ」
「わざわざわたしの名前とか検索してみたんだー?」
「……」
なんか珍しく主導権を握られているような。
「いつも隣にいるやつのことなんだから、少しは気になるだろ」
「ふーん」
桜咲ニヤニヤしながらこっちを見てくる。
なんかこの含み笑い、無性に腹立つな。
「もう、俺いじるのはやめてさ」
「あ、閑原くん! 木彫りの猫さんだよ!」
桜咲は突然走り出す。
先には猫の置物があった。
猫の置物……そういえば桜咲は大の猫好きだもんな。
「この商店街は木彫りの猫が7体あるらしい。それもその一つってわけだな」
「へぇ……! じゃあそれ探しながら歩こっ」
桜咲は目を輝かせてそう言った。
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