第22話 JKアイドルさんは動物園に興味があるらしい。08
俺は七海沢と別れ、家に入るとすぐと自室に戻った。
「あら航くん。早かったのね」
「道子さん、七海沢に俺の動向伝えたでしょ?」
「いやね、シノちゃんが執拗に聞いてくるからぁ」
叔母の道子さんはズケズケと部屋に入ってくる。
「だからって……。俺と七海沢の関係だってわかってるだろ?」
「……もー。航くん? シノちゃんの気持ちだって考えてあげなさい。昔は、あんなに仲良かったのに」
「今だって! ……お互いに友人として、学校ではよく話すし」
「……あ、じゃあこの映像はなーんだ?」
「映像って?」
道子さんは、俺の部屋にビデオデッキを持って来て部屋のテレビに繋ぐと、何やら昔に撮ったビデオテープを流し始めた。
「今日ね、久しぶりの休みだから大掃除してたの。そしたらこれが」
テープから雑音と共に段々と人の声も聞こえて来る。
そして、映像も流れ始めた。
小学生の頃の俺と七海沢が、丁度この部屋で遊んでいた。
『航くんと、シノちゃんは仲良いのね』
若い道子さんの声が聞こえた。
『うんっ。ボク、シノちゃんのこと好きだもん!』
『わ、わたしも、コウくんのこと好き……』
『あらぁ、いいわねぇ』
俺はテレビのリモコンを手に取ると電源ボタンを押した。
「道子さん、なんのつもりかわからないけどやめてよ」
「なんで下の名前で呼ばなくなったのかなぁ。シノちゃんのこと」
「……道子さん、俺は」
「あーあ、あんたらが結婚する時のためにこのテープ取っておいたのに……」
「……ごめん、出てってくれないかな」
道子さんは一式抱えて部屋を出た。
「人に恋できない人は、冷たくなるだけよ」
そう、残して。
✳︎✳︎
『それでね! ……っあれ? 閑原くん?』
「……ん、あ、あぁ。聞いてる聞いてる」
桜咲との電話にも身が入らなかった。
『閑原くん、ちょっと疲れてる?』
「ごめん、ちょっとな」
『こっちこそごめんね、閑原くんのことも考えずに』
「いやいや、桜咲はそのままでいい。……そのままがいい」
『……じゃあ、もうちょっとだけ聞いてくれるかな?』
桜咲の声を聞いていると自然と心が豊かになるような気がする。
『今日は、一緒に動物園行ってくれてありがとね』
「俺の方こそ、楽しかった」
『次は、閑原くんが行きたいところに行こうよ?』
「俺の? 別にないから次も桜咲の行きたいところでいーよ」
『えぇ、でも閑原くんの行きたいところとか気になるし……ほら、どこでもいいからっ』
「行きたいところ……そうだな、温泉とか」
『……え、エッチ』
「なんでそうなる⁈」
『閑原くんって、そういう欲求が無さそうにしてるくせに……やっぱりあるんだね』
「……違っ! 俺は温泉街に興味があるんだよ!」
桜咲は俺のことなんだと思ってんだか。
それに、温泉だって普通だろ。
『温泉街?』
「色々美味しいものあるし、俺はそっちに興味があるんだよ」
『……でも。とりあえず温泉は保留で! ほら、温泉の中だと変装できないし、わたしのことバレると困るし!』
「いつもそんなに気にしないくせに。……まぁ、桜咲が行きたく無いなら別のところにするか……もっと気軽に行ける、食べ歩きとかどうだ?」
『行きたい!』
「食べ物の話になると食いつき具合が違うな」
『食べ歩きはロケとかで行ったことあるけど自由に行動できなかったから……』
番組の台本とか、進行とか決められたものがあるから仕方ないよな。
「学校帰りに行けるところあるから、今度そこに行こう」
『うん!』
✳︎✳︎
『次回予告』
「閑原くん、銀座ってどういう意味?」
「江戸時代、銀貨を鋳造、発行していた場所を指していて」
「長くなりそうならいいかな」
次回、『JKアイドルさんは食べ歩きに興味があるらしい。』
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