第17話 JKアイドルさんは動物園に興味があるらしい。03

 

 淡黄のハイネックブラウスに、白のフレアスカート。

 髪型はいつものサイドテールじゃなくて、ストレートにカールを入れたストカールで、いつもとは違う印象を与えられるように仕上げた。


「よしっ」


 厚底ブーツを履き、最後にいつもの伊達眼鏡をかけてわたしは家を出た。


 ✳︎✳︎


 日曜の早朝。

 家から歩いて20分のところに動物園はある。

 男は待ち合わせより1時間早く行くものだと叔母の道子さんに言われ、俺は10時集合なのに9時前に動物園の前に来ていた。


「晴れたなぁ」


 今日の天気は珍しく快晴。

 梅雨が明けたんじゃないかってくらいのこの天気は、まるで神様が背中を押しているようにも思えた。

 桜咲は神にも愛されてるのか。


 1時間くらい早く来たので、てっきり桜咲が来るのを待つものだと思っていたのだが、


「あ、閑原くんおはよー」


 桜咲の方が先に来ていた。


「お前、まだ1時間前だよな」

「……た、楽しみすぎて2時間前からきちゃった」


 と、悪戯っ子みたいな微笑みを見せる。

 桜咲はベンチに座ってスマホを片手に開園と、俺がくるのを待っていたと言う。


「2時間って……」

「あと30分くらいで開くからほら、ここのベンチで座って待ってよ?」

「そうだな」


 俺は桜咲の隣に座り、桜咲と一緒に動物園の開園を待つ。


「ねぇ、今日のわたしだいぶ違うと思うんだけど?」

「あ、あぁ。その……」


 上から下まで落ち着いた装いでありながら、自分のカラーである黄色をしっかりと織り混ぜているのはこいつらしいというか。

 髪型も本当に新鮮で、一目見て桜咲菜子だとわかる人はいないと思うくらいだった。


「桜咲……めっちゃ可愛い」


 やっぱこいつに向かってこれ言うの恥ずかしくて顔に出ちまう。


「……う、嬉しいんだけど、また泣きそう」

「おい、頼むから泣くのだけはやめろ」

「あ、頭撫でてもらったら泣かないかも!」

「は?」

「い、いいから早く!」


 まぁ今日くらいは桜咲の要求に出来るだけ応えてやるか。

 俺は桜咲のその柔らかく艶のある髪に手を伸ばす。


「むぅ……えへへ」

「まだ動物見てねぇのに満足そうだな」

「あと30分はこうしててね」


 それは流石にどうなんだ。

 俺は開園まで桜咲の髪を撫でさせられた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る