第13話 JKアイドルさんは見て欲しいらしい。02


 俺は、ベッドに寝転びながら、スマホでラズベリーホイップのライブ公演を観賞していた。


 アイドル姿で動く桜咲を見るのは初めてだ。


 アイドル衣装はギンガムチェックのスカートにライトで乱反射するスパンコール、胸元には黄色のリボンをあしらい、袖には琥珀色のビジューが装飾されていた。

 これが、あの桜咲……。


 今日はいつものサイドテールではなく、三つ編みを前に流しながら、頭にはピンクのカチューシャをつけていた。

 振る舞いや、喋り方、何もかもが違う彼女。

 このギャップに俺は内心驚いていた。


 普段の、子供っぽくて、世間知らずな桜咲はそこにはおらず、今の彼女は輝いていて、みんなから羨望の眼差しを向けられるような、そんな彼女がそこにいた……。


 いつの間にか、桜咲から目が離せなくなっていた。


『桜のように咲き誇る笑顔っ、イメージカラーは菜の花のきいろっ、みんなの"なこたん"こと、桜咲菜子ですっ!』


 その途端、会場が湧き上がる。

 あぁ、昨日のやつか。

 そういえば、桜咲ってファンには『なこたん』って呼ばれてるんだな。


 なこたん……か。

 いや、俺は呼ばんけど。


『みんなーっ! 今日は来てくれてありがとーっ!』


 そこからはもうノンストップで曲が流れ始める。

 ファンの声援を受けながらマイクを片手に何曲も歌い続けながら踊る。

 こんなに激しいステージを作り上げるために、桜咲は何日も努力していた。


 果たして俺は、隣にいた彼女の力になれていたのだろうか。

 あんなに頑張っている彼女にしてあげられたことなんて……。


 ゲーセン行ったり、牛丼食ったり、散歩したり、電話したり……。

 俺は……こんなにも輝く彼女の人生に干渉してはいけない人間なのではないだろうか。

 彼女の"強さ"を知った反面、俺は激しい自己嫌悪に襲われた。


 桜咲は汗を流しながら眩しいくらいのライトに照らされ、会場のファンたちのボルテージも最高潮まで達していた。


『じゃあ、最後にいつもの行くよーっ!』


 そういえば、前に桜咲が言ってた……いつもラスト歌うのは、一番の人気曲


『"ボクと君の明日に"』


 ✳︎✳︎


 ライブが終わって、謎の余韻があった。


 ステージで輝く桜咲を見て、俺は圧倒されていた。

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