生き残った虫

黒イ卵

第1話

ある虫は、大きく力強かった。

 黒光りする体を持ち、どの虫よりも凶暴だった。


 ある虫は、細く長かった。

 どんな大群が迫っても、ゆるりと巻き付き締め付けた。


 ある虫は、繁殖力が旺盛だった。

 一匹一匹は弱くとも、子孫たちは次々と殖えていった。


 どの虫も、壺の中に入れられて、生き残るのに必死だった。


 壺の中に最後に残った一匹を捕まえ、すり潰して粉にし、煎じて井戸に溶かした。


 井戸の水を飲んだ生き物は、凶暴で、繁殖力が強く、長いものに巻かれるようになった。


 ーーそして三千年後。


 その日、地球の大地に、宇宙から来た生き物が降り立った。


 「今度の壺は、大きいから時間がかかったな。」

 「どれ、生き残った【虫】は、どいつかな?」

 「手間暇かかったから、高値がつくな。」


 彼らは最後の一匹になった虫を、捕まえにやってきたのだった。


(了)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生き残った虫 黒イ卵 @kuroitamago

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る