182bit 偶然か、はたまた


 「真衣ちゃん、わざわざそれを教えるために一緒についてきて……」


 糸はすっかり調子があがってにんまり顔になっている。


 「ち、違う! 夜食にコンビニスイーツを買おうと思っただけ!」


 「もぉー、真衣ちゃんってば素直じゃないんだからー」


 ご機嫌のあまり、糸はいつになく真衣をいじっていた。


 「でもま、さっき言った才能は、『IT』という意味では関係ないんだけどね」


 真衣はおどける糸を小突くように諫める。


 「ひぁぅ……それもそうだよね……」


 反論もままならず、糸の浮かれ気分はあっけなく終了した。


 「でも、やっぱり私たちがMANIACに集まったのは単なる偶然じゃないのかな。 集まった四人のうち、たまたま三人が『ITの才能』を持っていたと思う方が自然だよ」


 「それはそうなんだけど……どうも裏がある気がしてならない。 あたかも偶然MANIACに集まったように見せかけて、実はある目的のためにハジメさんとシズクさんが意図的に集めた……とか」


 「いくらなんでも考えすぎだよ。 仮にそうだとしたら、私がMANIACのメンバーになった理由を教えてほしいくらい」


 なぜ輝かしい才能を持つ三人に紛れて私なんかがいるのか。


 糸は自嘲を交えて真衣の言葉を否定した。


 すると、今まで糸と同じペースで歩いていた真衣が急に足を止めた。


 「……じゃあ、今ここで聞いてみたら?」


 そして、右手で前方を指さす。


 「え? どうしたの真衣ちゃん?」


 不可解に思った糸が真衣の指す方向へ視線を移すと、そこにはゆらゆらと左右に振られながら歩く二人組のシルエットがあった。


 その二人組が糸と真衣の方へ近づくにつれて、その姿がはっきりとしていって。


 「あれってもしかして……ハジメさんとシズクさん??」

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