180bit 忘れ物



 MANIACの四人は一週間後の誕生日会に向けて、色んな話に花を咲かせる。


 ほしいプレゼント、出かけたい場所、やりたいゲーム。


 他愛ないガールズトークは、途切れることなく続いた。


 「1月26日、雪が降るみたい」


 スマホを操作していた英美里が言った。


 「へぇ、この地域で雪が降るなんて珍しいね。 っとどれどれ……本当だ、一週間後雪予報になってる……ってもうこんな時間なの?!」


 雛乃はスマホ画面の端に表示されている時刻をみて驚き声をあげた。


 「もうすっかり深夜だね。 ついついしゃべり過ぎちゃった。 ふわぁぁ。 私はそろそろ寝ようかなぁ」


 大きなあくびをひとつしてから、糸は自分のリュックの中をガサゴソとあさった。


 しかし、取り出したい物がなかなか見つからない。


 「……あれ、歯ブラシがない。 持ってきていたはずなんだけど……」


 「忘れてきたんじゃないの?」


 「そうなのかな……、どうしよう」


 「近くのコンビニまだやっているはずだから、そこで買ってきたら?」


 「そうだね……。 うぅ、また外に出なきゃいけないのか……」


 冷えた黒い絵の具で塗られた窓をみて、糸はブルルと身震いしてしまった。


 「……私も糸についていく」


 そうさりげなく呟いたのは真衣だった。


 「え、真衣ちゃんも? 何か忘れてたの?」


 「まぁ、そんなところ」


 「……じゃあ、一緒に行こうか」


 意を決した糸は立ち上がって、ぐーっと腰を伸ばした。


 それにしても……。


 真衣ちゃんが忘れ物をするなんて、珍しい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る