157bit コイントス


 あれ、おかしいな……。


 私の誕生日、糸っちは知らないはずなのに……。


 二択だったし、たまたま当たっていたのかな。


 にしては、確信めいた答え方だったけど……。


 MANIACの部屋が映し出されているモニターの前で、雛乃はひどく困惑していた。


 「糸っちは……私の誕生日を知っていたの?」


 気づけば雛乃はそうきいていた。


 まぐれならまぐれでかまわない。


 しかし、他の理由があるのだとすれば。


 それは、知っておきたかった。


 「ごめん雛乃ちゃん。 私、雛乃ちゃんの誕生日は知らなかった」


 「じゃあ、二分の一の幸運で……」


 「えっとね、そうじゃなくて。 まだMANIACに四人が集まって間もないころ、雛乃ちゃんが私にパスワードのつけかたを教えてくれたよね。 そのとき、雛乃ちゃんは12月生まれの人は誕生日とクリスマスがセットになるんじゃないかって気にしていたでしょ。 もし雛乃ちゃんの誕生日がクリスマスだとしたら、そうはならないんじゃないかなって思って。 だから私はBを選択した」


 まさか、何気ない日常の一コマを覚えていて……そこから推理した……と。


 雛乃は何か言い返そうとするも、うまく言葉が出てこなかった。


 糸っちは、どうして……。


 いや、糸っちだけじゃない。


 真衣ちゃんも、英美里ちゃんも、どうしてそこまで……。


 「さすが糸っち。 どんな導き方であれ、正解は正解だよ」


 「ありがとう雛乃ちゃん。 だけど、やっぱり私は後悔している。 なんで誕生日を知らなかったんだろうって。 だから今、ちゃんと覚えたよ、雛乃ちゃんの誕生日 」


私がMANIACからいなくなれば、私のことなんて忘れていいのに。


糸っちは、私のことを忘れるどころかさらに知ろうとしている。


 「……次の問題は、そう簡単にいかないはず」


 雛乃は話を逸らすことで精いっぱいだった。


 二問目は、あまり出したくなかったんだけどな。


 「第二問。 私の好きな場所は、A.静かな場所 B.賑やかな場所 のどちらでしょう?」


 だって、答え合わせのときにその理由も言わなければいけないから。

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