155bit さぁどっち?


 「私が出題するクイズについて、AとBの選択肢を与えるから、正しいものを選んで答えてね。 もしもKoiと糸っちのどちらかが間違えたらそこでゲームは終了。 正解を選んでいた方が勝者となる。 いわゆるサドンデス方式」


 雛乃はつらつらとルール説明していった。


 しかし、プレイヤーである糸はうまく応答できないでいる。


 「どうしたの糸ちゃん?」


 糸の様子がおかしいことに気づいた英美里が声を掛けた。


 「英美里ちゃん、真衣ちゃん。 私……とりわけ勉強ができるわけでもないし、このジャンルであれば向かうところ敵なし、っていうのもない……。 いくら選択肢があるといっても……。 ヘマをしちゃったら、これまで勉強してこなかった私を呪って……」


 顔面蒼白となっている糸は、二人に向けて弱弱しく呟いた。


 どんなクイズなのかわからないけれど、潤沢な情報量をすでに持ち合わせているKoiちゃんに、一端いっぱしの高校生である私が対等に張り合えるわけがない。


 運よく正解を選ぶことができたとしても、続きはしないだろう。


 糸は勝負をする前から八方塞がりになっていた。


 「糸っち、そのことなら大丈夫」


 「えっ?」


 糸を励ましたのは、対戦相手であるはずの雛乃だった。


 「肝心の出題範囲だけど、別に一般教養も超難題な数式とかも出てこないよ」


 「そ、そうなの? じゃあ、どんなクイズが」


 「それはね、私に関するクイズ」


 「雛乃ちゃんに関するクイズ?」


 「うん。 糸っちが私のことをどれくらい知っているのか。 試されるのはそこだけだよ」


 「雛乃ちゃんについて……。 わかった」


 糸は少し遅れて返事をした。


 クイズの全容を明かされてもなお、勝負に対する不安は残ったまま。


 けれど、いつまでもウジウジしていられない。


 それに、ほんの少しだけ勝利への活路を見出すことができた。


 「あ、今のうちに釘を刺しておくけど、真衣ちゃんと英美里ちゃんはヒント厳禁だからね。 これはあくまでKoiと糸っちの戦いだから」


 「私が糸にヒントを出すはずないでしょ」


 「真衣ちゃん、そこは出そうとする姿勢だけでも……。 大丈夫だよ雛乃ちゃん。 私たちは後ろで見届けることに徹するね」


 真衣と英美里は苦情も言わずにすんなりと受け入れた。


 どうしてか、糸はその二人の態度にこそばゆさを覚えてしまう。


 「そろそろ始めてもいいかな、糸っち?」


 「……うん、やろう」


 「じゃあ第一問。 私の誕生日はA.12月25日 B.3月3日 さぁどっちでしょう?」

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