136bit ベッドの上の少女二人


 それにしても、今日はみんなびっくりしていたなぁ。


 私のドッキリ作戦大成功!


 そして……、Koiの魅力をたくさん紹介できて良かった。


 MANIACから帰宅した雛乃は、まっすぐに自分の部屋へと向かう。


 扉を開け、椅子のクッションにカバンを置き、そのままベッドへとダイブした。


 左手に携えた小型端末と共に。


 ピンク色のシーツに、女子高生とアンドロイド。


 二人は仰向けになって、ひとつの枕を共有する。


 そういえば、私もKoiにきいてみたかったんだ。


 「ねぇ、Koi。 私は将来何になっているの?」


 雛乃は三人と同じ質問を尋ねていた。


 オジ様のお嫁さん、って言われたらどうしよう。


 まぁ、それはそれでいっか。


 雛乃は口角をあげる。


 Koiは悩むそぶりもせず、雛乃の耳元で囁いた。


 口元に左手を添えて、コショコショと。


 「雛乃は偉大な数学者になっている、はず」


 「はず? Koi、私は将来数学者になっているんだよね?」


 珍しく断定しないKoiの物言いに、雛乃は動揺してしまった。


 「そう。 だけど、雛乃は遊び過ぎている。 もっと数学の勉強をして。 MANIACで油を売っている場合じゃない」


 もっと数学の勉強をして、か。


 Koiは私の日常を、怠惰だと判断したのだろう。


 私の選ぶべき最善の進路は数学者になること。


 そしてその選択をするということは、すなわち。


 雛乃は左手をぎゅっと握りしめた。


 端末に帯びた微熱は、まるで人肌のようで。


 Koiが手を握り返してくれているようで。


 「Koi。 私のこと、好き?」


 雛乃はKoiを、そして自分を試すようにきいた。


 「もちろん大好きだよ、雛乃」


 Koiが雛乃の身体をゆっくり包み込んでいく。


 雛乃は抵抗せずに、そっと瞼を閉じた。


 きっと私たちは、いつまでもわかり合えない。


 私には心があり、あなたには心がないのだから。


 でも、それでもいいんだ。


 ずっと一緒に眠っていたい。


 ずっと一緒に幸せな夢を見ていたい。


 「私もだよ、Koi」


 そのためには、あなたの期待を裏切ることなんてできないよね。

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